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(回答先: 佐藤優を使い続ける「週刊金曜日」の退廃(3) (片山貴夫のブログ) 投稿者 ミネルヴァの梟 日時 2007 年 5 月 31 日 01:25:54)
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20070511
2007-05-11 佐藤優と「週刊金曜日」に問う
「週刊金曜日」のホームページに、先日の『AERA』の佐藤優に関する記事について、佐藤が、記者の大鹿氏に対する公開質問状を載せている。中には、私のコメントに関するものもある。しかし質問の相手は大鹿氏である。
http://www.kinyobi.co.jp/MiscPages/open_letter070511/open_letter070511-2
私のコメントに関するものは21から27まである。しかし、「キム・イルソン状態」とか「みのもんた」とかいうのはレトリックであるから、最後の三点について、私から佐藤に答え、かつ質問したい。
「質問25.『神皇正統記』について
『神皇正統記』における正統性の論理構成は、皇統の伝統とともに真正の三種の神器の保持していることが天皇の条件です。従って、北朝系でも真正の三種の神器を保持している室町以降、今日に至る皇統は真正の天皇です。『神皇正統記』は南朝、北朝の双方を通底する正統論であるというのが通説です。このような通説に反する《佐藤さんは、「神皇正統記」を重んじていますが、あれは南朝の正統論のはずで、だとするといまの皇室は北朝の系統で、それについてはどう思っているのか? 》などという、稚拙なコメントを掲載した大鹿さんの真意を明らかにしてください。」
質問26.南北正閏問題について
1911(明治44)年、南朝と北朝のどちらを正統とするかという南北朝正閏問題について、明治天皇は南朝正閏という結論を出しています。従って、《佐藤さんは、「神皇正統記」を重んじていますが、あれは南朝の正統論のはずで、だとするといまの皇室は北朝の系統で、それについてはどう思っているのか? 》などという明治期に解決済みの問題を小谷野氏によるコメントという形態で、大鹿さんがなぜあえてこの段階で提起したのかについて釈明を求めます。」
ここに「南朝正閏」とあるが、「閏」は、準ずる、正統ではないという意味である。「南北朝正閏論」というのは、北朝と南朝とどちらが正でどちらが閏であるかという問題であるのに、佐藤は「正閏」を「正統」の意味だと思っているらしい。
さて、佐藤は、南北朝正閏問題は明治期に解決済みである、三種の神器をもって即位すれば正統な天皇だと言っている。私が文庫版解説を書いた宮崎哲弥『正義の見方』(新潮Oh!文庫)で宮崎は、戦後、南北朝正閏論がきちんと議論されてこなかったと一章を使って論じている。では宮崎もまた、稚拙な議論をしていることになるのか。それなら佐藤は、よろしく宮崎著を読んで、すべからく宮崎の稚拙を指摘すべきである。
また、明治期に解決済みと佐藤は言うが、それは「南朝正統」として解決したのであり、それゆえ北朝は正統な天皇ではないとして、以後、「南北朝時代」ではなく「吉野朝時代」と敗戦まで呼ばれていたはずだ。それならなぜ現在「南北朝時代」という、否定されたはずの表現が行われているのか、佐藤に問う。
「憲法27.護憲について
(1)私は護憲の根拠として、憲法第9条を改正し、交戦権を認めると天皇が国事行為として宣戦を布告することになり、そのため敗戦になった場合、責任が追及され、皇統の維持に危機が生じるという主張をしています。この主張の論理が飛躍していると大鹿さんは認識されていますか。認識しているとすいるならば、どこに飛躍があり、どこで私の言説が破綻しているかについて、御教示願います。]
では佐藤に問うが、北朝鮮有事などの周辺事態が起きた場合、現在の自衛隊は同盟国である米国の軍隊を支援することさえできない。その場合に起きる不都合については、どう考えているのか。また、自衛隊そのものが違憲であると私は考えている。では自衛隊をなくすべきなのか。佐藤は、欺瞞でいいと魚住昭に対して発言しているが(『一冊の本』連載)、憲法というものの持つ重要性を認識しない、それこそ稚拙な発言であると言わざるをえない。また現に日本は先の敗戦時、大元帥である天皇の責任が追及されなかったという明々白々たる事実があるではないか。もっとも、論理が主として破綻しているのは、ここではなく、次の点においてである。
(しかしながら、現時点で憲法9条を改正すれば、日本は米国と同盟して仮想敵国と戦うことになるはずだが、まさか北朝鮮に敗北するまい。では佐藤は、どの国との戦いで日米同盟が敗北すると想定しているのか。米国はヴィエトナムで敗北したとされているが、それはヴィエトナム軍によるワシントンの占領やレジームの変更をもたらしてはいない。そのようなシミュレーションもない「敗北」の想定は、とうてい外交情報員とは思えない。)
「(2)《佐藤さんは、憲法9条を改正すると、天皇制がなくなって共和制になり、それによってファシズムが到来すると書いているが、論理が飛躍している。論証なしに議論を進めても困ります。》との小谷野氏のコメントを掲載したことが適切であるかについて、大鹿さんの御意見をお聞かせ下さい。」
記者のコメントを求めるまでもない。そもそもファシズムの原点であるイタリア・ファシズムは王制の下で生じているし、では米国、第三共和制以後のフランス、第二次大戦後のドイツ、イタリア等、共和制の国でどの程度ファシズムが生じたのか、実例をもって論じてもらいたい。むろんこの場合、一党独裁の社会主義国家は「ファシズム」とは言わない。共和制になるとファシズムになるなどという議論が明らかに飛躍しているのに、いったいなぜ一記者の意見を聞く必要があるのか、佐藤に問う。
さらに前に記した通り、佐藤は大鹿記者に対して「右翼に言うぞ」と告げたという。これは脅迫罪である。『週刊新潮』の記事では、佐藤は、大鹿氏が「すぐに謝った」ことに怒っており、大鹿氏が「逃げた」とされているが、脅迫すれば逃げたくもなろう。もっとも、ではなぜ佐藤は、私のコメントについて私自身に問うてこないのか。逃げているのは佐藤ではないのか。(本格的に逃げたのは、『AERA』の記事の際、私との対談を断った柄谷だが)
また、国体護持を唱える天皇主義者である佐藤優に、このような場を提供する「週刊金曜日」に、あなた方は右翼なのか、と問う。そして「共和主義者」であるはずの柄谷行人が、天皇主義者である佐藤を絶賛し、「左翼」であるはずの「週刊金曜日」が、右翼佐藤のこのような脅迫めいたものを掲載させるからこそ、「言論キム・イルソン状態」なのだ、と答えよう。
http://up.arelink.net/up50/src/are4346.avi
「人権」が最初は否定され、あとでは肯定されている。
(小谷野敦)