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アメリカを中東から追い出すイラン [田中宇の国際ニュース解説]
http://www.asyura2.com/07/war92/msg/540.html
投稿者 white 日時 2007 年 5 月 29 日 10:02:31: QYBiAyr6jr5Ac
 

□アメリカを中東から追い出すイラン [田中宇の国際ニュース解説]

田中宇の国際ニュース解説 2007年5月29日 http://tanakanews.com/

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★アメリカを中東から追い出すイラン
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 5月28日、イラクのバグダッドにおいて、アメリカとイランとの大使級の
協議が開かれた。イランがイスラム革命直後の1980年にアメリカ大使館占
拠事件を通じて反米的な姿勢を鮮明にして以来、米イラン間は外交を断絶して
おり、2国間の会議は27年ぶりである。この会議は、イラクの占領に失敗し
ているアメリカが、ゲリラ抑制などに関し、イランの協力を得るために開かれた。
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,,2089765,00.html

 4月には、エジプトで開かれたイラク再建のための外相会議で、米ライス国
務長官が、イランのモッタキ外相と雑談するかたちで接触をしている。今回の
大使協議はそれに続く動きである。3月以降、アメリカはイランに対して融和
的な態度を採るようになっている。

 アメリカは、イランの核開発疑惑をめぐってイランを敵視し続け、相互に人
質をとったりして、米イラン間には信頼関係がない。そのため今回の大使級会
議は象徴的な意味以上には、内容的にさしたる前進はなかった。(イラン政府
系新聞は、協議によってイラン側の優勢が確認されたとする社説を出した)
http://www.mehrnews.ir/en/NewsDetail.aspx?NewsID=494022

 米イラン間の動きだけでなく、最近、中東各地で起きているいくつもの出来
事を並べ、全体像として見ると、アメリカの融和策は、イラクやその他の中東
全域におけるイランの影響力の拡大を引き起こしている。イランはアメリカの
弱体化につけ込んで、アメリカをイラクから追い出し、アメリカの後ろ盾が頼
りのイスラエルを潰そうとしているが、アメリカはこうしたイランの台頭を容
認している。

▼サドルが狙うイラク・ナショナリズムの復活

 米イラン大使協議より3日前の5月25日には、イラク中部の町クーファの
モスクで、ムクタダ・サドル師が4カ月ぶりに金曜礼拝に姿を現し、説教を行
った。サドルは武装組織マフディ軍を率いているが、父親や親戚がシーア派の
著名な指導者で、以前は「親の七光り」だけが頼りの粗暴な青年という評判だ
った。
http://atimes.com/atimes/Middle_East/IE26Ak07.html

 しかし、2003年にイラク占領が始まった直後から、米軍はサドルのマフ
ディ軍を狙って執拗に戦いを仕掛け、しかも米軍の作戦の稚拙さゆえにマフデ
ィ軍が負けなかったため、サドルは急速にイラク人の間で人気が高まり、今で
はイラク政界で最も有力な黒幕的な政治家となっている。マリキ首相(シーア
派)も、サドル師の支持がないとやっていけない。

 サドルは今年1月から4カ月間、姿をくらましていた。この間、米軍は兵力
増派によってバグダッドなどでゲリラ掃討を強化しており、サドルは米軍に殺
されぬよう姿を隠し、傘下のマフディ軍に対しても、米軍と戦うことを避けて
姿を隠して待てと命じていた。米軍によると、サドルはこの間、イランに逃げ
ていたとされるが、サドル自身は、イランの傀儡という印象を支持者に与えな
いよう、イラク亡命説を否定している。4カ月ぶりに姿を現したサドルは、説
教の中で、米軍に対して撤退するよう要求するとともに、配下のマフディ軍に
対しては、イラク人どうしの殺し合いをやめるよう命じた。
http://www.ft.com/cms/s/48101186-0ab9-11dc-8412-000b5df10621,dwp_uuid=fc3334c0-2f7a-11da-8b51-00000e2511c8.html

 サドルはこの少し前、代理人をスンニ派のいくつかの武装組織のもとに派遣
して、サドルを中心とするシーア派と、スンニ派の諸組織が連合して、米軍を
イラクから追い出す戦略を開始しようと提案し、スンニ派から前向きな返事を
もらったと報じられている。
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/IE25Ak01.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/05/19/AR2007051901307_pf.html

 これらの動きに合わせるように、イラク議会では5月8日、全議席(275)
の半数を超える144人の議員が、アメリカに対し、イラクからの撤退計画を
発表するよう求める、事実上の撤退要請決議を行った。この手の決議は以前に
も行われていたが、決議支持の議員が議会の半数を超えたのは、これが初めて
だった。(昨年末の決議では、支持議員は約100人だった)
http://www.alternet.org/waroniraq/51624/
http://tanakanews.com/g1205iraq.htm

 サドルは、アメリカの世論や政界で厭戦気運が高まり、来年の米大統領選挙
にかけて、米軍が撤退・縮小を開始するかもしれないという状況の中で、イラ
ンの支援も受けて、米軍の撤退に合わせて反米運動を起こそうとしている。サ
ドルは、イラク国内のナショナリズムを復活させることで、スンニ派・シーア
派・クルド人の分裂状態を乗り越えてイラクを再統合し、米軍撤退後のイラク
で、サドル派が与党になって、スンニ派やクルド人との連立政権を作ろうとし
ている。
http://www.chron.com/disp/story.mpl/ap/world/4826085.html
http://tanakanews.com/070417iraq.htm

▼イランの台頭を容認するアメリカ

 このようなサドルを中心とした反米運動や撤退要求の高まりに対し、アメリ
カは意外なことに、容認する姿勢を見せている。サドルが再び姿を現したこと
について、ホワイトハウスの報道官は「イランから帰国したサドルは、イラク
政界において、有益で前向きな役割を果たしてくれると思う」と発表している。
サドルの目標は、スンニ派とシーア派を統合してアメリカをイラクから追い出
すことだと、ホワイトハウスは知っているはずだが、にもかかわらず、それを
「有益で前向き」だと言っているのである。
http://rawstory.com/news/afp/US_urges_Sadr_to_play_positive_Iraq_05252007.html

 反米主義を容認するアメリカの態度は、最近のイラクでの政策全般に共通し
ている。イラク駐留の米軍と国務省は5月23日、イラクのゲリラ諸派の中で、
米側が話し合いによって停戦や権力移譲をできる相手を探していると表明した。
シーア派では、すでにサドルとの話し合いが進んでいるので、米政府はスンニ
派の中で話し相手になりそうなゲリラを探しているという。スンニ派でアメリ
カと話し合いができるゲリラとは、つまるところ「アルカイダ系」以外の勢力
であり、その中心は、かつてサダム・フセインの元にあった「旧バース党勢力」
である。
http://www.cnn.com/POLITICS/blogs/politicalticker/2007/05/us-may-negotiate-with-iraqi-insurgents.html

 アメリカは、ゲリラと交渉して治安維持権や行政権を移譲し、それによって
米軍がイラクで戦闘をしなくてもすむ状況を作ろうとしている。米軍はイラク
で、戦闘ではなく、訓練などの支援活動を中心にすることを目論んでいる。
http://news.yahoo.com/s/ap/20070524/ap_on_go_ca_st_pe/us_iraq_military

 イラクでのアメリカの撤退・縮小計画を進める上で欠かせないのが、最近で
はシーア派ゲリラへの支援に加えてスンニ派ゲリラに対する支援も広げている
イランの協力である。イランは、レバノンのヒズボラやパレスチナのハマスに
対する支援にも見られるように、混乱した地域において非政府系の武装組織を
巧妙にこっそり支援する能力がある。
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/N19430870.htm
http://atimes.com/atimes/Middle_East/IE26Ak07.html

 イランの協力を得れば、アメリカはイラクのゲリラ諸派とうまく交渉ができ
る。5月28日の米イラン協議では、この件が一つの話題になったと思われる
が、5月25日にサドルがイランからイラクに戻ってきたことも、おそらくす
でに米イラン間で協議され、米軍がサドルを殺したり逮捕したりしないことを
約束したので、サドルは帰国したのだろうと、諜報分析サイト「ストラトフォ
ー」が分析している。
http://www.stratfor.com/products/premium/read_article.php?id=289258&selected=Analyses

 アメリカは、イラン系に支援されたサドルがシーア派をまとめ、フセイン政
権の残党である旧バース系勢力がスンニ派をまとめて、両者による反米連合戦
線によって押し出されるかたちで、イラクでの軍勢を縮小・撤退していく流れ
を容認している。米政府は表向き、イラクでの勢力を縮小しつつも完全撤退は
しない方針のようだが、米軍が縮小するほど、イラクの反米勢力の発言力が大
きくなり、米軍に対する撤退要求が強まる。米軍が今後、何年間イラクに駐留
し続けるか予測できないが、米軍がいったん縮小したら、事態は撤退に向けて
動きそうである。米マスコミでは「米軍の撤退後のイラクは、どの程度の内戦
になるか」という分析記事が出始めた。
http://www.nytimes.com/2007/05/27/world/middleeast/27withdraw.html

 米軍撤退後のイラクは、イランの影響力が強い国になる。それを見越してイ
ランはすでに、サウジアラビアとの友好関係を深め、エジプトやアラブ首長国
連邦とも国交関係を回復しようと動いている。アラブ諸国の側は、米軍撤退後
のイランの台頭を予測しているだろうから、イランとの関係改善には前向きで
ある。アメリカは、これらの動きを横目で見ながらも、イラク問題でイランの
協力を仰ぎ、結果的にイランの台頭を容認している。
http://news.yahoo.com/s/afp/20070515/wl_mideast_afp/iranegyptdiplomacy_070515142257

 アメリカの中東撤退は、世界の石油をめぐる支配権にも大きな変動をもたら
す。以前の記事「反米諸国に移る石油利権」 http://tanakanews.com/070320oil.htm
に書いた「セブン・シスターズ」の交代が、現実のものになる。私が以前から
指摘している世界的傾向である「多極化」が進展する。

▼イラク、イラン潰しはイスラエルの戦略

 アメリカがイラクから撤退して最も困る国は、これまでアメリカの軍事力を
動員してアラブ諸国やイランを抑圧し、周りが敵ばかりになっているイスラエ
ルである。

 もともと2003年のイラク侵攻は、1970年代以来のイスラエルの対米
戦略の成果として実現した。イスラエルは、中東における仇敵であるイラクと
イランを相次いでアメリカに侵攻させて政権転覆することで、中東においてイ
スラエルに対抗できる勢力がいない状態を作ろうとした。(サウジアラビアや
エジプトは、国は大きいものの、大した軍事力を持っておらず、イスラエルと
戦争する気がない。半面、イラクとイランは、放置すると大国になり、イスラ
エルに戦争を仕掛けかねない)

 イラクを潰してイランを残すと、現実として今起きているように、イランが
イラクで影響力を拡大してしまい、イスラエルにとって脅威の削減にならない。
だからイスラエルはアメリカに、イラクとイランの両方を政権転覆させようと
した。2002年にブッシュが政権転覆の対象国として名指しした「悪の枢軸」
(イラク、イラン、北朝鮮)がその象徴である(北朝鮮は、イスラエルの意図
を隠すための当て馬だったと考えられる)。

 イスラエルは政治圧力団体を通じた米政界での支配力が非常に強く、大統領
になるにはイスラエルの言うことを聞く必要がある。ブッシュは2000年の
当選前に、イスラエルに対し、イラクとイランの両方を侵攻で政権転覆するこ
とを約束していたと推測される。

(2008年の大統領選挙に立候補を予定している候補のほとんどが、イスラ
エルに対する強い支持を表明している。アメリカの大統領選挙は、まるでアメ
リカではなくイスラエルの選挙のようである)
http://washtimes.com/world/20070124-120657-5676r.htm

 イラクの政権転覆は2003年に実現したが、ブッシュ政権はその後のイラ
ク占領で「重過失」的に失策を繰り返し、イラク人は反米感情を強め、サドル
のような反米ゲリラ勢力を通じて、イランの影響力が強まった。フセイン政権
時代のイラクは、1980年代のイラン・イラク戦争の影響でイランを強く敵
視しており、イラクとイランは分裂していた。イスラエルにとっては、反米反
イスラエルの方向で一体化しつつある最近のイラン・イラクの方が、はるかに
危険な存在になっている。
http://tanakanews.com/g1205iraq.htm
http://tanakanews.com/f0105iraq.htm

▼イラン核疑惑は濡れ衣

 イラク侵攻後、ブッシュ政権は、次はイランを標的に、イランの核開発疑惑
を問題にし始めた。イランの核開発疑惑は、開戦前のイラクに着せられた大量
破壊兵器疑惑と同様に、濡れ衣である。イスラエルと親しい「ネオコン」の動
きなどから考えて、濡れ衣を着せてイラク、そしてイランに侵攻し、相次いで
政権転覆するというのは、イスラエルとブッシュ政権が合意した手法だったと
推察される。

 国連の国際原子力機関(IAEA)は5月23日、イランの核施設に対する
査察の結果を報告書として安保理事会に提出した。それによると、イランは原
子力発電の燃料と原爆の材料の両方に使えるウラン235を、4・8%の濃度
まで濃縮した。発電燃料としては5%前後の濃度が良いが、原爆の材料として
は80%以上の高濃度にする必要がある。イランのウラン濃縮は、発電燃料の
製造以上のものではなく、IAEAの取り決めに違反していないことが、査察
で証明された。
http://www.isis-online.org/publications/iran/IAEAreport23May2007.pdf

 しかし同時にイランは、西部の町アラークに建設予定の重水炉型の原子炉
(IR-40)について、IAEAを納得させるだけの十分な設計図を提出してお
らず、この点でIAEAは、イランが何の違反行為も行っていないとは言い切
れないと、報告書で結論づけている。
http://www.antiwar.com/prather/?articleid=11029

 この問題について、米英マスコミの多くは「IAEAは、イランの核兵器開
発を進めていることを発見した」といった書き方になっている。特にひどいの
は、この報告書を事前に入手して書かれ、5月14日に掲載されたニューヨー
クタイムスの記事で、その記事には「IAEAは、イランが核兵器開発に関す
る技術的な問題の多くをすでに解決したという結論に達した」と書かれている。
http://www.nytimes.com/2007/05/15/world/middleeast/15iran.html

(イスラエルには、この問題を正しく報じているマスコミもある)
http://www.ynetnews.com/Ext/Comp/ArticleLayout/CdaArticlePrintPreview/1,2506,L-3403627,00.html

 本当は大量破壊兵器(核や生物兵器)の開発など行われておらず、IAEA
もそれを確認しているにもかかわらず、マスコミはそれを大幅に歪曲し、兵器
の開発がどんどん進展しているかのように報道し、その間違った認識が国際的
に共有され、国連安保理で制裁や政権転覆が必要だという決議が下されてしま
う、という筋書きは、2003年のイラク侵攻前の半年間に展開されたことだ。
それとまるで同じ展開が、イランの核疑惑をめぐって繰り返されている。5月
15日のニューヨークタイムスの記事を書いたデビッド・サンジャーという記
者はかつて、イラクの大量破壊兵器問題でも誇張記事を書いており、同じ配役
で歪曲作業が繰り返されている。
http://www.huffingtonpost.com/seanpaul-kelley/iaea-report-contradicts-m_b_49136.html

 イランに対する核開発疑惑が濡れ衣であることは、昨年2月に書いた記事
「イラン核問題:繰り返される不正義」 http://tanakanews.com/g0207iran.htm
において、すでに指摘したが、それから1年半がすぎた今も、イランは
IAEAが許容する範囲内の、平和利用としての核開発しか行っていない。
イランは、核兵器の開発に踏み込むより、国連やマスコミの場でアメリカによ
って歪曲されても、平和利用限定の「正しい行為」をやり続ける方が、最終的
には有利になると考えているのだろう。

▼米イラン関係の二重の状況

 すでに書いたように、イラク占領の失敗をめぐっては、アメリカはイランと
27年ぶりの話し合いをしなければならない状況になっている。その点を見る
と、アメリカはもはやイランと戦争しそうもない。しかし、対イラクで行われ
た大量破壊兵器問題を使った「開戦事由作り」の歪曲が、対イランで繰り返さ
れている限り「ブッシュ政権は核問題を理由にイランを攻撃するつもりだ」と
いう懸念が残り続ける。5月28日の米イラン協議を前に、米英の専門家から
「アメリカとイスラエルは、まだイランに戦争を仕掛けるつもりがある」とい
う見方が表明されているが、その背景には、イランに対する核問題の濡れ衣が
解かれていない状況がある。
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1178708675886&pagename=JPost%2FJPArticle%2FPrinter
http://www.haaretz.com/hasen/spages/862996.html
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article2581257.ece

 アメリカは、イラク占領問題ではイランに譲歩するが、核開発問題ではイラ
ンを威嚇し続けるという、二重の状況にある。米イラン協議の直前に、米軍の
空母艦隊が2つもペルシャ湾内のイラン沖に来て、イランを威嚇する軍事演習
を展開し、その空母にチェイニー副大統領がやってきてイランを非難する演説
をぶったことも、二重状況を象徴している。
http://news.yahoo.com/s/afp/20070524/wl_mideast_afp/irannuclearusiraq
http://www.wsws.org/articles/2007/may2007/iran-m12.shtml

 二重の状況になっているのは、核開発を開戦事由にしてイランを政権転覆す
ることが、イスラエルとブッシュの間の密約になっているからであろう。イラ
クだけ潰してイランを潰さないことは、イスラエルにとって非常に危険な状態
を生み出す。

(二重状況の背景について「ブッシュ政権の中で、チェイニー副大統領はイラ
ンを攻撃したいが、ライス国務長官は攻撃ではなく外交で解決したいと考え、
ブッシュはしだいにライスを支持し、チェイニーを退けているからだ」という
分析がアメリカから出ている。だが私が見るところ、チェイニーとライスは対
立しておらず、タカ派とハト派の役割分担しているだけである。ライスは、米
政府が穏健化しているように見せかける芝居の担当者でしかないという指摘が
ある)
http://www.thewashingtonnote.com/archives/002145.php
http://www.forward.com/articles/top-bush-adviser-says-rice-s-push-for-mideast-p/

 アメリカがイラク占領問題でイランと和解しそうなのを見て、今年4月下旬
には、それまでアメリカと同一歩調をとっていたEUが「イランにウラン濃縮
の全廃を求めるのを止めて、代わりに明らかに平和利用である5%程度までの
濃縮を認めてはどうか」と提案した。この「濃縮禁止範囲の技術的な変更」が
実現していたら、イランの核問題は解決していた。しかし、アメリカは同意せ
ず、EU提案はすぐに立ち消えになった。アメリカの背後にいるイスラエルが
了承しなかったのだろう。
http://rapidrecon.threatswatch.org/2007/04/west-cedes-a-nuclear-victory-t/

 イスラエルは、何とかアメリカにイランを攻撃させようとして米政界に圧力
をかけて、米議会は以前に可決した「ブッシュがイランを攻撃する際には議会
の承認が必要だ」という決議を、ブッシュが拒否権を発動した後、撤回してし
まった。ヒラリー・クリントンやバラク・オバマなどの次期大統領候補は皆
「必要なら、イランに対する武力攻撃をやるべきだ」と競って叫んでいる。ア
メリカがイランを攻撃することは自滅行為であることは誰の目にも明らかだ。
にもかかわらず、アメリカの政治家の多くが「イラン侵攻も辞さず」と言わざ
るを得ない背後には、強大なイスラエルの政治圧力が存在している。
http://www.newsmax.com/archives/articles/2007/5/16/214635.shtml
http://washtimes.com/national/20070314-121527-2114r.htm

 しかしイスラエルは、米政界を動かせても、イラク占領の泥沼化した状況を
変えることはできない。イラク占領がアメリカの軍事力を浪費しているのは明
らかだ。アメリカの軍事力が国家存続の後ろ盾になっているイスラエルは、ブ
ッシュ政権から「イラクの占領問題でイランに協力してもらわなければならな
いので、イランを攻撃するわけにはいかない」と言われ、受け入れざるを得な
い状態だ。

 イスラエルはチェイニーから「必要ならイスラエルの方でイランを空爆した
らどうですか」と誘われているが、イスラエルが単独でイランを空爆したら、
イランとイスラエルの戦争になり、イスラエルは滅亡しかねない。
http://www.correntewire.com/cheney_to_bypass_bush_collude_with_israel_to_attack_iran

 イスラエルがアメリカを動かして、イラクの次にイランを侵攻して政権転覆
するはずだったのが、イラク占領の泥沼化によって頓挫している間に、狙われ
たイランの方は、イスラエルの南のガザにいる過激派組織ハマスと、イスラエ
ルの北のレバノンにいる過激派組織ヒズボラに武器と資金、戦争技術をどんど
ん供給し、イスラエルとの代理戦争をさせる戦略を進めた。ガザとレバノンの
状況は最近、イランに有利でイスラエルに不利な状況へと動いている。今回の
記事はすでに非常に長くなってしまったので、この件については改めて書く。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/070529mideast.htm


★関連記事

US Officials: Iran Plans Summer Offensive to Force US From Iraq
http://www.guardian.co.uk/frontpage/story/0,,2085195,00.html

Hoagland: Bushs Plan B May Be Attacking Iran, Overthrowing Maliki
http://thinkprogress.org/2007/05/20/iran-plan-b/

Iran, U.S. court Gulf Arab allies
http://www.kansascity.com/449/story/101175.html

Tehran ignores the bluff and bluster
http://atimes.com/atimes/Middle_East/IE26Ak03.html

Time is short to halt spread of Jihadism
http://www.ft.com/cms/s/ccbde0f0-0a39-11dc-93ae-000b5df10621.html

British Conservative Leader: Iran an 'Urgent Threat,' Less Than a Year From a Nuke
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/05/23/wiran23.xml

'Bush may strike Iran near end of term'
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull&cid=1178708610168

Bush doesn't want detente. He wants to attack Iran
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/story/0,,2079828,00.html

IDF: Iran Will Have Bomb Only in 2010
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1178708639046&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull

Commander's veto sank Gulf buildup
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/IE17Ak03.html

Iran Offers Help Planning US Iraq Withdrawal
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L08514354.htm

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