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( ̄∀ ̄)yo大根役者
http://www11.ocn.ne.jp/~nbbk/911/okina.html
奥菜秀次著『陰謀論の罠』
光文社ペーパーバックス104 (2007年4月刊、1000円)。陰謀説の論理的な欠陥、陰謀説に惹かれることの問題点、を具体的に例を示しながら指摘しています。専門の著述業の方が調査して書かれているので、私が見落としていた重要な事実についても多く書かれています。また、一巻の書物として筋立てて書かれているので一読の価値が大いにあります(コンピュータディスプレーより読みやすいですし)。著書全体を読めば、9.11事件に関する陰謀説の馬鹿馬鹿しさは容易に分かるはずです。これを読んで、分からなかったり、得心できないなら、責任者を呼びつけるのではなく、国語の勉強をやり直すか、香山リカさんにでもお手紙を書いて相談なさることです。
ところが、たとえば、"つらつらぶろぐ/ 9.11テロ、陰謀論、罠、捏造、・・・"。著者の奥菜氏があげている証拠の多くが、アメリカ政府の公式文書『911調査委員会最終報告書』、アメリカ土木工学会発行の『ペンタゴン・レポート』、FEMAの『WTC報告書』の公式文書などで発表されているものに負うところが大きいようです。/ 9.11同時多発事件の真相が、公式発表では納得が行かないと異議を唱えている人たちが少なからずいるというのが、現在の状況ではないでしょうか。 。奥菜氏は、陰謀説を唱える人々は、いわゆる公式見解を確かめていないと指摘しているし、著書のなかでは、2006年夏の東京の真相究明会議で、フルフォード氏、きくちゆみ氏、成澤宗男氏ともに、ほとんどそれらの公式の報告書に目を通していないと自白していたことが書かれています(p13)。しかし、疑惑の持たれているものを根拠にしての反論では、残念ながら説得力はないですね。 と書いてしまうブログ主です。ないのは、奥菜氏の文書の説得力じゃなくてブログ主の読解力です(「大黒天」は私の別名で「通行人」という意味。偶然ヒットしたブログ主さんには迷惑だったかも知れませんね。お気の毒。)。
つまり、少なくとも最近になって、日本で9.11事件への疑惑を声高に申し立てる代表格の3人は、ほとんど根拠なく主張しているということなのです。そして、彼らの受け売りの卸業者や製造者の理屈の欠陥についても批判しているのですから、"つらつらぶろぐ" のブログ主の認識はピントが外れています。こんな文書はもちろん批判ではないし全くの無駄な時間つぶしの個人的所感に過ぎません(META情報にクロールよけのまじないを書いておくべきです。ブログじゃできないか。)。しかし、これらの本来価値のない情報が参照先とされ広がる可能性はあります(先の都知事選挙では無責任な個人的所感が選挙違反すれすれの誹謗の根拠として参照された例もありました。参考:[AML 13362])。ネット情報は自分でいちいち判断しなくてはならない所以です(面倒なことですが)。罪のないおしゃべりを楽しむのは悪いことではありませんが、時間つぶしのために取り上げる話題としては、9.11事件は適当ではない。
奥菜氏は、9.11事件だけでなく、真珠湾攻撃、コベントリー爆撃、トンキン湾事件にも言及しています。真珠湾攻撃はルーズベルトの陰謀だったという馬鹿話を、アメリカ批判の延長としてついうっかり書く人もいます。おそらくこのような発想は、歴史から判断するという方法を一時忘れたことからきたのでしょう。当時の歴史の動きからすれば、連合艦隊をハワイに向けて出発させたことまで(もっと言えば山東出兵や張作霖爆殺あたりまで)ルーズベルトのさしがねとする根拠がなければ、連絡が不徹底だったことだけでルーズベルトの陰謀だというのは素人以下の考え方と言えるでしょう(参考:"イージス艦とドイツ(本多勝一)"、"再不要12月13日(同)"、"ウンデッドニー以来…… (同)")。
脱線しますが、本多氏がかかわる『金曜日』という雑誌が、戦前の『土曜日』や、フランスの『ヴァンドルディ』の延長上にあるとするなら、紙面デザインとして、ルーズベルトの陰謀説はいかにも野暮くさくて、気が利いていない。ちなみに、『金曜日』の創刊にかかわった久野収氏は『土曜日』に関係していました(参考:"滝川事件と『世界文化』『土曜日』")。これは私の勝手な思い込みだったのかも知れませんから、個人的に定期購読の更新を中止すればよいだけのことです(戦前の『土曜日』は規模は違いますが販売にもっと工夫をしていたようです。)。本田氏は時々『しんぶん赤旗』を賞賛しますが、その週一発行の日曜版の紙面(月額800円で一部当り160円から200円)は、価値のある情報を含んだ楽しい読み物という点で、『金曜日』(3年定期購読割引価格で1冊400円)よりはるかに優れています。
奥菜氏は、あとがきで、『イディオクラシー』という映画について触れています。私はまだ見ていませんが面白そうな映画です。つまり、ある面では、陰謀論は「暇つぶし」なのかも知れません。本当に大事なことから目をそらすための。そういう需要はあるのでしょう。そんなスタイルの文章が書けることが著述業者の能力と思い込んでいる方もいるようです(参考: "ヒロさん日記"、"田中宇の国際ニュース解説" など)。
奥菜氏は、落合信彦氏の著書について批判をされているようです。私は、落合信彦氏の本は読んだことはありません。「国際ジャーナリスト」と称しビールの広告に横着そうな顔面をさらす方(ビールがまずそうに見えた)の本は読む必要もなかろうという意味において読んでいません(9.11トンデモ論者の中丸薫も「国際ジャーナリスト」、きくちゆみ氏もなんだか、「ジャーナリスト」と称していますね)。したがって、この点については言及は避けますという程度にしておきましょう。
(2007年5月3日)