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世銀総裁が愛する女性、米司法長官が嫌った検察官〜桜井春彦コラム〜
桜井 春彦(2007-05-03 05:00)
人々の恐怖を利用して世界を戦争に引きずり込み、アメリカのファシズム化を推進してきたグループの中心的存在、ポール・ウォルフォウィッツとアルベルト・ゴンザレスがともに辞任を要求されている。ウォルフォウィッツは国防副長官から2005年3月に国際復興開発銀行(世界銀行)総裁へ転出、また同じ年の2月にゴンザレスは大統領法律顧問から司法長官になった人物だ。
ウォルフォウィッツ総裁に「恋人騒動」が持ち上がったのは4月上旬のこと。本人の総裁就任にともなって「恋人」がアメリカ国務省へ出向、その際に銀行の規定を上回る昇給があったと報道され、辞任を要求する声が高まったのである。アメリカ政府はウォルフォウィッツを支持しているものの、イギリスやドイツなどはアメリカに同調していない。
問題の女性は2001年頃から同銀行で中東・北アフリカ地域の広報担当だったシャハ・リツァ。ウォルフォウィッツは妻のクレアと30年以上の間、別居していることもあり、リツァとの「交際」は容認されてきたようだ。実際、総裁就任の際にウォルフォウィッツがふたりの関係を公表しても大きな問題にはなっていない。規則に従い、リツァが国務省へ出向させられただけのことである。今回はルールに反した昇給が指摘され、騒ぎに発展したのだ。つまり、2005年の昇給で彼女の年収は約4割増え、コンドリーザ・ライス国務長官の約18万ドルを上回る19万3590ドルになったというのである。
しかし、問題はこれだけでない。リツァと軍需産業との関係が浮上してきたのだ。有力軍需企業SAICによると、国防総省政策担当次官のオフィスは2003年、同社に対してリツァを雇うように指示してきたという。この会社で彼女は働いていたと政府監視団体GAP(政府説明責任プロジェクト)も主張しているのだが、ダグラス・フェイス政策担当次官はこの件に関して「記憶がない」のだという。ちなみに、当時の国防副長官はウォルフォウィッツ。ペンタゴン側は問題ないとしているが、疑惑を招く出来事だったことは間違いない。
その頃、リツァはイラクを視察、アメリカ軍による軍事侵攻後の「イラク再建」について世界銀行の幹部に報告している。このため、アメリカ政府は「イラク復興」に世界銀行の資金を利用しようと計画していたのではないかと推測する人もいる。この女性、神出鬼没で勤務先がどこなのか、わかりにくい。
今年4月中旬に入ると、リツァの出向先が注目されるようになる。エリザベス・チェイニーの下で働いているのだが、この女性、リチャード・チェイニー副大統領、つまりイラクへの軍事侵攻で最も利益を得たといわれる軍需企業ハリーバートンのCEO(最高経営責任者)だった人物の娘である。エリザベスの上司はC・デイビッド・ウェルチ中東問題担当次官補だった。
エリザベスは「未来基金」なる政府系の組織を本格的に始動させようとしている。中東地域に「民主主義」を広げるため、草の根組織を育てることを目的としているのだそうだが、アメリカ政府が言う「民主化」や「民主主義」を字面通りに受け取れないことは言うまでもない。この場合、多国籍企業や特定の集団にとって都合の良いシステムや考え方を意味しているにすぎない。
今年4月14日付の「ワシントン・ポスト紙」によると、基金のオフィスで実際に働いているのはリツァだけだという。今年からリツァは公式に基金の仕事を始めているが、まだ銀行から給与を得ているとも報道されている。
一方、ゴンザレス司法長官は検察官の大量解雇問題で窮地に陥っている。8名の検察官が合理的理由を告げられないまま一方的に解雇され、長官と同じ立場の人間に入れ替えた話は本コラムでもすでに触れている通りだ。ブッシュ政権にとって都合の悪い事件を担当していた検察官も含まれていることも明らかになっている。当初、長官は解雇について事前には知らなかったと主張していたが、その後の調査で、長官自身が解雇に関わっていたことが明らかになっている。ゴンザレス長官の弁明に説得力はないと判断する関係者は多く、共和党議員や政府高官からも長官の辞任を求める声が出ている。
軍需産業と関係の深いドナルド・ラムズフェルドが国防総省を去ったのに続き、親イスラエル派のウォルフォウィッツとファシズム的思考をするゴンザレスが追い詰められている。ホワイトハウスの好戦的人脈が揺らいでいることは間違いない。これは「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」的な出来事を警戒する時期に入っていることも意味している。
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桜井春彦(さくらい・はるひこ) 調査ジャーナリスト。早稲田大学理工学部卒。ロッキード事件の発覚を機に権力犯罪を調べ始める。1980年代半ばには大韓航空007便事件や大証券の不正をリサーチ。『軍事研究』誌で米情報機関のリポートを執筆。『世界』誌ではブッシュ政権の実態を発表。著書に『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』(三一書房)、『アメリカ帝国はイランで墓穴を掘る』(洋泉社)がある。桜井ジャーナルでも「非公式情報」を発信中。
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http://www.ohmynews.co.jp/news/20070423/10418