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□空自次期戦闘機めぐり侃々諤々 本命F22は無いモノねだり? [読売ウイークリー]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070424-02-0202.html
2007年4月24日
空自次期戦闘機めぐり侃々諤々 本命F22は無いモノねだり?
航空自衛隊が新たに導入する次期戦闘機(FX)の機種選びが、佳境を迎えつつある。来夏までに決定する運びで、事実上、F22かF15FXかに絞られた格好だ。
「最新鋭のF22でなくては、中国の脅威に対抗できない」「コストパフォーマンスを考えればF15FXだろう」
FXをめぐり、インターネットサイトや専門誌では、こうした熱い議論が交わされている。
FXは、空自が保有する迎撃戦闘機F4EJ(改を含む)の後継機で、2009年度に7機分を予算化し、以降、2個飛行隊分にあたる40〜50機程度を調達する見通しとなっている。
候補は、米ロッキード・マーチン社の「F22ラプター」「F35」、米ボーイング社の「F15FX」「FA18EF」、英独伊スペインの共同開発による「ユーロファイター・タイフーン」、仏製「ラファール」の6機種だ。
このうち、航空評論家の浜田一穂氏の見立ては、F22かF15FXのいずれか。
「F22は米本土で配備が始まったばかりの空軍の最新鋭機です。現時点で世界最高の戦闘機といっていいでしょう。最大のポイントはステルス性です。レーダーに映りにくく、敵にとっては闇夜の中でいきなり攻撃されるようなものです」
と、その性能の高さについて語る。F22に実戦経験はないが、12機が2月から5月まで訓練のため沖縄の米軍基地に飛来している。
F15FXは、F15のなかで一番新しいF15Eストライクイーグルを日本仕様に改造するもので、浜田氏はこう言う。
「F15Eは湾岸戦争やイラク戦争で活躍しました。対地攻撃の能力が高く、機体構造や各種電子装備などが最新のものになっており、日本のF15Jとは全く別物といっていいでしょう。韓国のF15K、シンガポールのF15SGと同じパターンだと思われます」
その他の機種については、
「F35は、まだ開発中でFXに間に合いません。FA18は米海軍機で攻撃機の性格が強い。空自は一貫して米空軍の戦闘機を導入していますから対象から外してもいいでしょう。ユーロファイターも悪くありませんが、F22が21世紀の戦闘機だとすれば、20世紀の戦闘機。欧州製でもあり、選ばれることはないでしょう」。
一方、空自は2月25日から3月15日にかけて、米英両国に調査団を派遣し、「ユーロファイター・タイフーン」「F15FX」「FA18EF」の3機種について調査を行った。空幕広報室の荒木正嗣室長は、
「今回の調査はこちらの問い合わせに回答のあった機種を対象にしたもので、機種を三つに絞ったわけではありません。今後も調査は続ける予定です」
と説明する。
ユーロファイターを有力候補と挙げた一部報道もあるが、防衛省幹部も
「本命は最新鋭のF22でしょう。次点はF15FX」
と打ち明ける。
しかし、F22の導入は容易ではない。現時点で米国議会がF22の輸出を禁止しているのだ。最先端技術の海外流出を懸念したためで、防衛省幹部は、
「秋に法律の見直しが行われるので、輸出解禁を米側に働きかけています。ボーイング社の地元の議員らは、F22が輸出できなければ、F15かFA18が売れると計算しています。米政府内には、F22の輸出に前向きな姿勢も見られますが、最終的には米国製の戦闘機が売れるならどれでもいいという感じです」
と語り、見通しは不透明だ。ちなみに、ユーロファイターなど欧州機を候補とするのは、米国への牽制とも言われるが、
「米国側には、日本が欧州の戦闘機を買うかもしれないという危機感は全くないです」。
日米同盟のもと、大半の航空機を米国に依存してきただけに足元を見られているようだ。
F22が輸出解禁になっても、なお導入への道は険しい。最大の障壁は、1機250億円超と見られる価格だ。空自の主力戦闘機F15Jの価格約120億円に比べると、倍以上。一方のF15FXは、F15Jの額をそう上回らないと見られ、候補2機種の価格は、大きく開いている。
また、生産上の制約も想定される。空自の戦闘機は、国内の産業育成や技術導入などの観点から、技術指導などを受けてライセンス国産を行ってきたが、F22は先端技術の固まりである。そのため輸出が解禁されても、ライセンス国産が認められるかどうかは別問題なのだという。防衛省関係者は、
「国内の産業政策を考えれば、ライセンス国産が望ましい。でも、日本が手を着けられないブラックボックスだらけのライセンス国産では意味がない。また、F15Jは約200機生産したが、FXは40機程度。生産機数が少なければ、さらに価格が跳ね上がる」
と話す。1機250億円としても2個飛行隊分を整備するには、1兆円かかるのだ。
こうした事情を踏まえ、政界きっての“軍事オタク”といわれる石破茂・元防衛長官は、
「F22とF15FXが同じ価格なら、間違いなくF22です。でも倍以上違うとなれば、話は違ってきます。F15FXは基本的には、空自のF15Jと同じ機体ですから、ライセンス国産をした技術の蓄積もあり、整備や運用のノウハウもあります。戦闘機の性能だけではなく、そういうことも考慮すべきです」
と、話す。そのうえで、航空機をはじめとする自衛隊の装備について、「防衛力整備とは別の観点が強く働いて導入が決まる」と問題点を指摘する。
「ロッキード事件の本丸といわれたP3C哨戒機の導入では、防衛庁内でも『100機も買ってどう使えばいいんだ』と、頭を抱えたそうです。イージス艦は日本のドル減らしで導入が決まりました」
その後、P3Cは対潜哨戒に効果を上げ、イージス艦はミサイル防衛の中核となって、「結果オーライ」(石破氏)となった。
だが、国産か輸入かで日米が対立した1980年代のFSX(次期支援戦闘機)は、そうはいかなかった。激しい綱引きの末、日米共同開発で支援戦闘機F2が誕生したが、開発費がかさんで価格は主力戦闘機F15J並みの1機約120億円にまで高騰した。その余波を受けて、調達機数は当初予定の130機から、04年になって25%も少ない98機に減らす羽目となった。
こうしたことから、FXの機種選定について、石破氏は、
「日本にはどういう脅威があり、どういう戦闘機が必要なのか。NATO諸国は、いろんな国の戦闘機を所有しているのに、なぜ日本は米国機でないとだめなのか。それらをオープンに議論し、政治家が責任をもって決断することが必要です。ロッキード事件などの影響で、政治家は航空機導入の問題に触れたがらないが、それでは責任の所在があいまいなまま高価な買い物をすることになってしまいます」
と強調する。