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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu142.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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中世の十字軍遠征の失敗が物語るように、キリスト教国家
としてのアメリカ帝国の衰退をもたらすものとなるだろう。
2007年4月22日 日曜日
◆疲弊する米軍 4月20日 田中 宇
http://tanakanews.com/070420USarmy.htm
1960−70年代のベトナム戦争の末期、米軍は、装備の不足や作戦上の失敗や混乱、兵士の士気の低下などがひどくなり、全崩壊的な敗北へと発展した。その際、米軍の崩壊を予兆する早期のできごととして、ベトナムで戦う米軍の中堅将校や下士官の、脱走や任務遂行拒否が相次いだ。ベトナムから休暇で米国の故郷に戻ったまま、休暇期間が過ぎても部隊に復帰しない士官や兵卒が急増した。
これについて最近、ベトナム戦争に参加したロバート・スケールズ元少将は「中堅将校や下士官の逃亡は、米軍の崩壊を予兆するものだった。ちょうど、炭坑内のガス漏れを知らせるカナリアの異変のようなものだ。中堅将校や下士官に戦う気がなくなれば、軍隊は戦争を続けられなくなる」と述べている。(関連記事)
40年も前のベトナム戦争の話が、今また問題になっているのは、イラクやアフガニスタンに従軍する中堅将校や下士官の間に、逃亡や任務拒否が相次いでいるからだ。スケールズ元少将は「今また米軍では、驚くほど大勢のカナリアたちが、かごから逃げ出そうとしている」と指摘している。
軍法会議にかけられる脱走者の数は、倍増したものの絶対数は大したことがない。年間の平均が、90年代末期には180人だったものが、最近では390人になった程度である。しかしその一方で、米軍の陸軍士官学校(ウェストポイント)では、米軍の士官になるべき卒業生の多くが、軍以外の組織に就職したり、軍内でも戦場に行かない職種を希望する比率が、30年ぶりの高さになっている。たとえば2001年度の卒業生903人のうち54%は、すでに米軍を去っている。逃亡ではなく、合法的なかたちで軍を去る士官が多い。(関連記事)
米軍は新兵募集にも苦労している。米軍はベトナム戦争までは徴兵制だったが、その後は募集制の軍隊なので、一定以上の水準の人々が十分な人数に応募してくることが、軍隊の能力維持に必要である。米軍ではもともと、兵士の9割以上が高卒以上の学歴を持つことを募集の目標とし、過去に犯罪を犯したことがある前科者は入れないようにしていた。だが今や、高卒以上の学歴者の割合は8割で、しかも新たに兵士になる人々のうち半分が前科者という状況になっている。(関連記事)
▼ボーナスで兵士をつなぎとめる
日本やドイツが「極悪」だというイメージをうまいこと米国民に植え付けることに成功した第二次世界大戦は、アメリカにとってうまくいった戦争で、戦死者が増えても米軍兵士の士気は高かった。イラク戦争でも米政府は、開戦まではサダム・フセインをヒットラー並みに極悪な独裁者だというイメージに仕立てることに成功し、03年3月のイラク侵攻にこぎつけた。
しかしその後、開戦事由となったイラクの大量破壊兵器開発がウソであることが暴露され、ブッシュが約束したイラクの民主化は実現せず、逆にイスラム世界の全体で反米感情が高まり、監獄での米軍によるイラク人に対する虐待行為や、ゲリラ掃討の名目で無実の市民が無数に殺される例が続出し、米国民にとって何のために戦っているのか分からない状態になっている。米軍の士気が下がり、士官が軍を去り、新兵に応募する人が減るのは当然である。
募集制の軍隊が行う戦争は、戦争に対する国民の支持、つまり「勝算」と「正しさ」を必要とする。国民の戦争への支持を集めるため、敵国を実態以上に極悪視し、負けているのに勝っていると言って、ウソや誇張をやる国が多いが、それがばれると敗北につながる。ウソがばれている点で、アメリカはすでにイラク戦争に負けている。
戦争の大義を失った米政府は、兵士や将校を軍につなぎ止めておくために、ボーナスを上積みせざるを得ず、その総額は年間10億ドルにのぼり、イラク開戦時の6倍になっている(年間の戦費総額2300億ドルに比べると微々たるものだが)。(関連記事)
米軍は、新兵募集が難しいので、本来米軍がやるべき仕事の一部を、米英の元将校らが経営する傭兵企業(軍事サービス企業)に発注している。国連の調査によると、イラクに駐留する外国兵力のうち30%を占める5万人前後が傭兵で、その数は米軍(15万人)に次ぎ2番目で、3位のイギリス軍(1万人)より多い。傭兵企業は、軍が使う装備の扱いを知っている米軍の元兵士や元士官を、軍より高い給料で雇用することで成り立っている。
米軍が傭兵企業に頼るほど、傭兵企業が軍人を高給で引き抜くことが増え、米軍はさらに高いボーナスを出して軍人を引き留めたり、傭兵企業に頼る比率を高めねばならないという悪循環に陥っている。傭兵企業は、イラクでの戦争ビジネス拡大のため、故意にイラクの内戦を煽っていると疑われている。(関連記事)(中略)
帝国もしくは覇権国が、海外派兵や外国に対する軍事支配に失敗し、撤退できなくなって軍事力を浪費することを国際政治の用語で「オーバーストレッチ」(過剰派兵)というが、アメリカはまさにこの状態に陥っている。アメリカのような覇権国は、他の諸国よりはるかに軍事力があるので、為政者は、侵略や占領に失敗しても「まだまだ軍事的余力があるので、もう少し頑張れば勝てるはず」と思い続け、撤退すべき時期を逃し、無限に見えた軍事力をいつの間にか使い果たしてしまう。
第一次大戦前後のイギリスがこのオーバーストレッチ状態になって覇権を失い、今またアメリカがこの状態になっている。イギリスの例に照らすと、アメリカは単にイラクで負けるだけでなく、世界に対する覇権そのものを失いかねない。
(米軍のうち、空軍と海軍は余力があり、オーバーストレッチにはなっていないが、軍事費の財政面から見ると、米軍全体が危機的状態になりつつある)(後略)
◆米軍のイラク撤退 2005年12月13日 田中 宇
http://tanakanews.com/f1213Iraq.htm
その後、2004年の大統領選挙で再選を果たしたブッシュは「神様は、自分がやっている世界民主化の軍事行動は正しいと認め、再選を実現してくれた」と考え「イラク占領は必ず成功する。神の意志なのだから失敗するはずがない」という確信を強めた。
ブッシュは「イラク占領は失敗するはずがない」と考えているので、側近やイラク現地の米軍司令官たちがいくら「占領はうまくいってません」と報告しても聞く耳を持たず、占領計画の立案は現場司令官たちを全く交えず、政権の最上層部の人々だけで決められてきた。元高官によると、政権上部は、現場司令官に対して「政府の方針に反することを公的な場で発言したらクビにする」と脅し、イラク占領が失敗しつつある状況を隠している。
ブッシュは「キリスト教会は、多くの信者の犠牲の上に発展する」という格言を信じ、イラクで米軍に戦死者が増えても、格言通りのことが起きているのだからかまわないと考えている。神がかりになり、宗教の世界に没頭するブッシュは「世界民主化」以外のことに無関心になり、以前よりもさらに多くの意志決定を、副大統領のチェイニーや、顧問のカール・ローブに任せ、自らは超然としている傾向が強まったという。
(私のコメント)
アメリカのブッシュ大統領はキリスト教右派に支持によって大統領に選ばれ、ブッシュ自身もボーンアゲインしたと述べるほどの熱心な信者だ。世界を民主化するという現実離れした妄想にとらわれて、最近のブッシュ大統領は自分の妄想の世界に引き篭もってしまったようだ。自分は神の意思によって大統領に選ばれたというのは、信仰心も行過ぎれば狂気の世界だ。
「ヒトラー」というドイツ映画がありましたが、あの映画の中でもヒトラーは軍の進言に耳を貸さず妄想の世界で軍の指揮を取っていた。フリードリッヒ大王の肖像画を眺めながら世界制服を最後まで夢見ていた。ブッシュ大統領も民主帝国主義で世界統一を夢見ている。
ブッシュはイラクの軍司令官の報告にいっさい耳を貸さず、側近達だけで指示を下している。これではイラクの米軍の士気は果てしなく落ちて行き、ベトナム戦争末期に見られたような軍の崩壊現象が見られるようになった。映画の「プラトーン」で見られたような上官殺害まで起きるようになり、米軍は戦闘には勝っていても軍内部から崩壊していた。
イラク戦争とベトナム戦争は敵も違うし戦場も違うし国際情勢も異なりますが、米軍内部ではベトナム戦争当時と同じような士気の低下と脱走兵の増加などが見られるようになった。特に戦争が長期化してきて若い士官などの退職などの空洞化が見られる。志願兵の募集も質の低下が目立ってきて、前科者などを採用せざるを得なくなっている。
イラク戦争では正規の米軍では足りなくて傭兵部隊が5万人にも増加している。傭兵は一人当たりの給料が格段にいいから5万人もの傭兵を雇うにはかなりの費用がかかる。すでに三人に一人が傭兵なのだから傭兵の戦死者も1000人は下らないだろう。将来的には米軍が引き上げても傭兵が残ってイラクで戦い続けるつもりだろうか?
これではブッシュ大統領がいくら神の意思で戦争をしようが、戦場では金で雇われた傭兵が戦っている。イラク戦争では正義も神の意思もないのだ。あるのは金と打算と石油だけだ。傭兵の相場では一日に1000ドルが相場だから月給に直せば10日働いただけで300万円以上が稼げる。だから世界中から傭兵志願者が民間戦争請負会社に集まる。
キリストの名の下の軍隊が金で集められた軍隊であるというのはなんとも皮肉な戦争ですが、ブッシュが神の意思でイラク戦争を始めたのだからお笑いだ。中世の十字軍は金で集まられた傭兵部隊が始まりであり、キリストの名の下に聖地奪回を目指した。現在のイラクにおける傭兵部隊もまさに現代の十字軍なのだ。もし歴史が繰り返すのならば十字軍遠征のように、アメリカ軍のイラク遠征はサラディンのようなイスラムの英雄が現れて失敗するのだろう。
◆エルサレム Cutty Sark
http://www.brainsellers.com/cuttysark/2005/09/post_130.html
もともと、十字軍の遠征(1095年)はトルコ人のイスラム王朝であるセルジューク朝にアナトリア半島を占領された東ローマ帝国の皇帝「アレクシオス1世コムネノス(在位1081年-1118年)」が、ローマ教皇「ウルバヌス2世」に救援を依頼したことが発端と言われています。このとき、大義名分として異教徒イスラム教国からの「聖地エルサレム」の奪還を訴えるのです。皇帝アレクシオスが要請したのは東ローマ帝国への傭兵の提供です。当時傭兵の組閣はそんなに難しいものでなく、戦費さえあれば比較的容易に軍隊を生成できたようです。ですから、最初は今回の映画のような正規軍としての「十字軍」ではありませんでした。この映画の時期はその後の十字軍遠征の物語です。ウルバヌス2世は集まったフランスの騎士たちに向かってエルサレム奪回活動に参加するよう呼びかけます。彼がフランス人に、神のために武器をとるようにと呼びかけると人々は"Dieu le veult!"(神の御心のままに!)と答えたといいます。映画の中で幾度となく唱えられたセリフですね。
この時「イスラムの英雄」サラディンにより、およそ90年ぶりにイスラム側に占領されるところで物語は終わりに近づきます。映画では「バリアン」と「サラディン」の巨頭会談でエルサレムの明け渡しとエルサレム軍の命を交換すると言う「離れ業」で決着しましたが、実際にはエルサレム軍捕虜を、身代金を支払うことで命を助けるという寛大な処置を「サラディン」が行ったので歴史に輝きを持たせたと言われています。
その後、教皇グレゴリウス8世は聖地奪還のための十字軍を呼びかけ、イングランドの獅子心王「リチャード1世」、フランス王「フィリップ2世」、神聖ローマ帝国皇帝「フリードリヒ1世」が参加した連合軍を組閣しますが、結局苦戦を重ね、サラディンと休戦協定を結んだことで聖地エルサレムの奪還は失敗に終わることになります。映画では鍛冶屋に戻った「バリアン」に「リチャード1世」が合いにくるシーンがありますが、その辺を意識した演出なのではと思ってます。
(私のコメント)
歴史上の十字軍も悪党達の寄せ集めの軍隊であり、略奪や暴行など悪名が高いが、現在のアメリカのイラク遠征軍も多くが前科者だということは歴史的必然なのだろう。ブッシュにとってはイラクに民主主義をもたらす解放軍のつもりなのだろうが、イラクから見れば侵略であり、十字軍もローマ帝国を復活させるつもりが分裂と衰退を招いただけだった。
現代のローマ帝国を気取るアメリカが十字軍の遠征の失敗により、アメリカによる一極支配は終わりを告げる。もしアメリカ人がヨーロッパ人のような歴史感覚があれば現代の十字軍遠征のようなイラク戦争は行なわなかっただろう。長い遠征軍を派遣することは中世でも現代でも金のかかることであり、イングランドの獅子心王「リチャード1世」、フランス王「フィリップ2世」、神聖ローマ帝国皇帝「フリードリヒ1世」の十字軍は聖地エルサレムの奪還に失敗して、キリストローマ教会の権威は失墜した。
このような時代錯誤なブッシュのイラク十字軍遠征はアメリカ南部のキリスト教原理主義者たちが煽ったものだ。ブッシュによれば神のお告げによるものだという事ですが、中世の十字軍遠征の失敗が物語るようにキリスト教国家としてのアメリカ帝国の衰退をもたらすものとなるだろう。