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□ヒラリー、ロワイヤルが大統領になったら ジャパン・パッシング加速? [読売ウイークリー]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070327-02-0202.html
2007年3月27日
ヒラリー、ロワイヤルが大統領になったら ジャパン・パッシング加速?
ヒラリー・クリントン上院議員が2008年秋の米大統領選に、今年4月、セゴレーヌ・ロワイヤル元環境相が仏大統領選に挑む。当選した場合、日本には喝采を送ってはいられない理由があるという。
米大統領を目指す候補たちは、選挙前年の夏以降から相次いで出馬表明するのが通例だ。今回は民主党から、本命視されるヒラリー上院議員、初の黒人大統領を目指すオバマ上院議員、共和党からもジュリアーニ前ニューヨーク市長など主要候補がそろい踏み。異例の前倒しペースで事実上の選挙戦に突入している。
共和・民主両党の米大統領指名候補を決める党大会も済んでいないが、現時点で大統領の椅子に一番近いとされるヒラリー議員が当選した場合、小泉前首相とブッシュ大統領との個人的関係にも支えられ、「極めて緊密で良好」(外務省)とされる日米関係はどうなるのか。
「米国の住宅バブルが崩壊したら、かつての日本叩きの『悪夢再来』となる恐れがある」と警告するのは、越智道雄・明治大学教授(アメリカ文化研究)だ。
「米国は今、住宅バブルを謳歌しているが、米経済は常に綱渡り状況。ヒラリー政権でバブルがはじけたら、米国民の不満を外にそらすため、叩きがいがあって、おとなしい日本は絶好の標的になる」
クリントン前政権時代(1993〜2001)を思い出してほしい。米側はバブル崩壊後の日本に規制緩和や市場開放、景気刺激策を強硬に求める“ガイアツ”をかける一方、外交では日本を素通りして経済成長著しい中国を重視。「ジャパン・パッシング」(日本軽視)と呼ばれた。この悪夢が再び起こるというのだ。実際、外交経験の少ないヒラリー氏が、経験豊富な夫ビル(前大統領)を重要な外交アドバイザーと見なし、再び中国重視に傾斜する可能性は小さくない。
仮に米バブル崩壊がなくても、「ヒラリー氏の外交政策は、イラク問題、中東和平などが中心。対日政策にはほとんど言及がないが、極東アジアは現状維持が望ましいはず。日本、韓国、中国などに等距離で接する勢力均衡政策を保つのではないか」(越智教授)。
日本と距離を置き、「ブッシュ氏に比べて冷淡」となるのは確実だ。また、専門家が懸念材料として口をそろえるのは、ヒラリー氏が「日本に無関心」ということだ。「ヒラリーとライス」の著書があるエッセイスト、岸本裕紀子さんは、こう指摘する。
「ヒラリー氏はファーストレディー時代に来日したが、夫のビル・クリントン前大統領ともども、日本の文化、歴史に特段関心を抱いた形跡はない。“ヒラリー政権”になったら、アジア戦略上、日本を軽く扱う可能性がある」
「民主党のヒラリー氏が当選したら、お手上げ」と危機感を募らすのは、ジャーナリストの角間隆氏だ。
「米連邦議会などでのロビー活動、個々の外交官や大物政治家の努力、日々の付き合い、情報交換などを通じ、米政権高官や政財界の有力者らと日常的に信頼関係を築く必要があるが、日本は怠ってきた。小泉前首相はブッシュ大統領ベッタリだったので、蚊帳の外だった民主党はもちろん、共和党穏健派もみんな怒っており、関係はズタズタ。外交努力によって、あっという間に国連事務総長の座を奪った韓国とは、えらい違いだ」
ただでさえ、安倍政権になってから久間防衛相や麻生外相の対米批判が相次ぐ一方、ブッシュ政権2期目ではアーミテージ国務副長官などの知日派が政権を去り、すでに日米関係は隙間風が吹き始めている。「徹底した女権拡張論者」とも呼ばれるヒラリー氏が、柳沢厚生労働相の「女性は産む機械」発言はもちろん、厚労相を終始擁護した安倍政権に不快感を抱いている可能性もある。
安倍首相を陣笠代議士時代から知る記者が不安視する。
「安倍首相は外交経験がほぼ皆無で、英語が堪能な麻生外相に丸投げしている状態。清濁併せ呑む度量もないし、小泉さんのようなハッタリやパフォーマンスも苦手。自力で築いた外国要人の人脈もなく、日米間で重大な懸案が浮上した場合、経験不足の首相では対応しきれない」
安倍首相は長州(山口)の血を引く古風な「日本男児」で、実は女性が不得手。小泉チルドレンの女性議員との付き合いもぎこちない。ヒラリー氏との間で「小泉―ブッシュ」のような信頼関係を築くのは望むべくもないという。
それでは、4月22日に大統領選1回目投票を控えるフランスで、最大野党・社会党のロワイヤル元環境相が、保守与党「民衆運動連合」のニコラ・サルコジ内相、中道・フランス民主連合(UDF)との三つどもえ選挙に競り勝ったら、どうなるか。
ロワイヤル氏は以前、自著で「日本社会は暴力と児童ポルノに寛容」と批判したことがあり、日本に厳しい視線を注いでいるようだ。90年代初めに仏首相を務めたクレッソン氏の反日発言を思い出す人も少なくないだろう。「日本人はアリのように働き、小さなアパートに住み、通勤に2時間かけ、物価は外国より高い」「日本は敵だ」といった一連の発言だ。
実際、昨年12月に訪仏して、ロワイヤル氏と面会した社民党の福島瑞穂党首は、「日本は女性差別があるので、日本女性は大変でしょう」と語りかけられたという。ただ、
「糾弾調ではなかった。若者の雇用や女性の社会進出、少子化対策など日本の現状に強い関心を持っていたので自国の現状を説明した。女性の地位向上のためにお互い頑張ろうというエール交換の雰囲気だった」
と話す。
その点が、日本文化への造詣が深く、「45回の訪日歴を持つ知日派・親日派」(外務省)のシラク現大統領とは違う。現在の日仏関係は極めて良好。双方向の投資も盛んで、日仏経済も「両思い」の関係だ。だが、今後は不透明となる。渡辺啓貴・東京外語大学教授(フランス外交・政治)は、
「ロワイヤル、サルコジ両候補とも、日本に詳しいとは言えない。シラク時代よりも対日関係はより消極的になるのは避けられない。ただ、能吏タイプのサルコジ氏はアジア戦略に占める日本の重要性を理解し、合理的な判断を下すだろうが、ロワイヤル氏はわずか3年前から頭角を現した候補だけに外交政策が不透明。場当たり的な対応になる恐れもある」
と指摘している。
支持率低下に悩む安倍首相にとって、また頭痛の種が増えそうだ。