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ブログ「随想 吉祥寺の森から」
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2007年03月21日
50兆円あれば何ができたか
アメリカ国防総省のまとめでは、イラク戦争開戦以来、かれこれ戦費は合計3500億ドル(40兆円)の巨額に達した。アメリカ単独でこれだけの金額であり、英や豪、その他、日本や欧州各国などが拠出した費用も合わせれば軽く日本円で最低50兆円を超える。国連や国際組織がかけた費用なども含めれば60兆円近いかもしれない。
ラムズフェルドの後を継いで元CIA長官から国防長官に着任したゲーツは、CBSテレビインタビューでイラク情勢は自力で解決できないことを弱弱しく認めている。
「アメリカが今していることは、基本的に彼ら(イラク政府)のために時間的余裕を稼ぐこと。これが戦略目的の全部だ。」
どう足掻いてもイラクの治安を米軍単独で確立することはもう無理になっている。盟友だったはずのサウジアラビアが敵対するシーア派の台頭を極端に警戒して、処刑した元大統領サダム・フセインが属していたスンニ派に資金と軍備を支援し始めた。イランからも支援が流れ込む。アメリカはこれらの資金、兵器支援を中止するように要求もできない状態。もはやイラクは治安どころの話ではなく、焦土になるまであらゆる武器が軍事兵器テストのように果てしなく使われていくおそろしい地域になった。旧約聖書の時代、美しいバビロンの地であったはずの中東は悪夢の地になった。
米軍がイラク政府のために時間を稼ぎ、その間にイラク政府の治安部隊が自力で統括できるように持っていきたいという筋書きをゲーツは言ったわけだが、このような状態になってから描くことができる見通しはない。今後の失敗と敗戦処理を予告したようなものだ。
そもそもイラクの治安が大崩壊したのは戦術的、戦略的な面から言えば全てドナルド・ラムズフェルドの責任である。チェイニーの盟友にして軍産複合体出身のユダヤ人、ラムズフェルド。イラク侵攻が終わりアメリカ軍がフセイン政府を蹴散らした後、ラムズフェルドは一つの全くありえない選択を強行した。侵攻直前までフセインが統括していた現地のイラク人兵士、軍隊を解散させてしまったのである。
現地で米軍の指揮を執っていたジェイ・ガーナーらは当然、この現地の兵士と兵力をそのままイラク占領後の統治に活用する見積もりだったのだが、ラムズフェルドは部下の進言を全て跳ね返した。気に食わない部下を次々に解任。やがてだれも彼に真実を話せなくなったのである。
軍人に何も代替する仕事を用意することもなく放り出せば彼らはやることがない。すぐに彼らは失業状態にいらついて威張り散らす米軍の敵になっていった。これは大量にテロリストを野に放ったようなものだった。軍隊をゼロから造り上げるにはどれほどうまくいっても数年はかかる。ラムズフェルドは軍事について何も知らなかった。
ワシントンポスト記者のボブ・ウッドワードをして、当時の国防長官と現場の部下の間には
"monumental lack of communications" (歴史的な意思疎通の欠落)
があったと言わしめる惨めな道のり。現代の組織論の深刻な課題が最も出てはいけない局面で噴きあがったのだった。キューバ危機直前のJ.F.ケネディもこうした状態だったし、今のブッシュJr.、チェイニーらも立たされている立場が似ている。解任、更迭を恐れて必要な情報が上にまで上がってこなくなっているのである。パウエルら彼らに苦言を呈してきた部下を片っ端から切り捨てていったツケが回っている。
いったい、50兆円という金額があれば何ができたであろうか。飢餓、貧困、環境破壊、難民問題など世界に横たわるほとんど全ての課題が端から端まであっという間に解決できてしまったのではなかろうか。無自覚にじゃぶじゃぶと金、人の命を散らした挙句に世界を未曾有の危機に追い詰めつつある人たち。ブッシュJr.、チェイニー、ラムズフェルド、ウォルフォウィッツ、ライス、パール。ネオコンの連中のしでかした罪はどれほどの言葉で形容しても足りない。
・文庫改訂版 「あの金で何が買えたか―史上最大のむだづかい’91~’01」 (文庫)
村上 龍 (著)
# 文庫: 148ページ
# 出版社: 角川書店; 文庫改訂版版 (2001/04)
# ISBN-10: 4041586127
# ISBN-13: 978-4041586129
出版社/著者からの内容紹介
現実感のない不良債権や債務の額。我々はあの金で何が買えたのだろうか?
10億円という金は一体どのくらいの価値があるのか?100億円、1000億円、1兆円だったらどうか?毎日、新聞で目にし、ニュースで読み上げられる、そんな数字を実感としてイメージする「知る」ための絵本。
内容(「BOOK」データベースより)
金融機関・企業の不良債権や債務の額は、あまりにも巨大で、どのくらいのものなのかイメージするのは難しい。しかも、巨額の税金が注入されながら、再び危機が叫ばれ、誰も責任をとろうとはしない。「知る」ということは、年を追うごとに、さらに重要度を増しているのだ。十億円という金はいったいどのくらいの価値があるのか?十億円あれば何が買えるのか?百億円、一千億円、一兆円、十兆円、百兆円だったらどうか?毎日毎晩、新聞で目にし、ニュースで読み上げられる、そういった数字を、実感としてイメージする「知る」ための絵本。