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英・ハリー王子はなぜ戦場へ行くのか
http://www.sankei.co.jp/kokusai/europe/070314/erp070314001.htm
英国の王位継承権第3位のヘンリー(愛称ハリー)王子(22)が所属部隊とともに、イラクに派遣されることになった。なぜ、王子は生命を危険にさらす戦場に向かい、それを英政府も認めたのか。(ロンドン 蔭山実)
王室と軍との歴史的関係ゆえ
英国防省と、父親のチャールズ皇太子のオフィスは2月22日、近衛騎兵連隊に所属する皇太子の二男、ヘンリー王子が陸軍士官としてイラクに派遣される、と発表した。王子は4月ごろにイラクに入り、南部バスラに半年間、駐留する。
王子は昨年4月にサンドハースト王立陸軍士官学校を卒業し、部隊に配属された。同僚と同じ待遇で、戦地のイラクかアフガニスタンに派遣されることを希望し、拒否されれば除隊するとまで訴えていたという。
酔ってつかみ合いをしたり仮装パーティーにナチス・ドイツの制服姿で現れたりして王室の“問題児”となっていた王子も、士官学校で鍛えられて意識が変わったようで、一昨年の21歳の誕生日には、「同僚が祖国のために戦っているときにじっとはしていられない」と愛国心を吐露していた。
「国民は勇敢な王室を望んでいる」と英国の有識者が指摘しており、王子にも「勇敢な王室」の一員たろうとの思いは強いようだ。世論は、王子のそんな心意気には好意的でも、実際の派遣には抵抗が根強い。
英軍が駐留拠点とするバスラの治安状況は、米軍が武装勢力掃討を集中的に進める首都バグダッドなどに比べればましだとはいえ、王子はテロなどの標的になりかねず、周囲の英兵が巻き添えになる危険も増すからだ。英軍は王子の危険地区での任務は避け、戦闘状態になった場合は王子を徹底して守る方針だという。
そうまでして、王子が戦地を目指し、英政府もそれを容認した背景には、王室と軍の密接な関係がある。
立憲君主制の英国では、軍最高司令官は実質的には首相ながら、名目的にはなお国王である。王室関係者は陸海空軍で訓練を積み、軍要職を歴任して兵士らと接することを絶やさない。
歴史をひもとけば、戦場に赴いた君主は、1743年にオーストリア継承戦争で英軍を率いてフランスを破ったジョージ2世が最後で、時に60歳だった。エリザベス現女王の父ジョージ6世も即位前の1916年に海軍中尉としてデンマークで第一次大戦を戦った。
女王の夫君、フィリップ殿下も第二次大戦で昇任した海軍軍人。82年にはチャールズ皇太子の弟、アンドルー王子も海軍ヘリコプター操縦士としてフォークランド戦争に参戦しており、ヘンリー王子のイラク派遣はそれ以来のこととなる。
ただ、その王室でも、王位継承に重大な支障を来し得る国王直系の長男の戦地派遣はさすがに論外であるようだ。ジョージ6世は兄のエドワード8世が廃位したのを受けて急遽、戴冠しており、出征時には即位は想定外だった。現在、王位継承権第1位のチャールズ皇太子も戦闘機の操縦訓練を受け軍要職を歴任しつつも、戦場とは無縁で来た。
大学進学で遅れて士官学校を卒業し陸軍に配属された継承権第2位の皇太子の長男、ウィリアム王子については、戦地派遣はない、と国防省は断言している。
(2007/03/14 08:43)