★阿修羅♪ > 戦争89 > 697.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
□中国より強い!? 日本の宇宙軍事力 [読売ウイークリー]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070313-01-0202.html
2007年3月13日
中国より強い!? 日本の宇宙軍事力
中国の衛星破壊実験の余波が続いている。専門家のなかからは、日本の宇宙技術では不可能という声も出ているが、一方、日本の最先端技術なら間違いなくその程度は可能とする説もある。
「地上発射の弾頭で直撃したのなら、かなりの技術力と見ていいでしょう」
防衛大学校航空宇宙工学科の高野博行助教授(宇宙航行)は、こう話す。
中国は1月12日、高度864キロの宇宙空間で、老朽化した自国の気象衛星「風雲―1C」を弾道ミサイルで破壊した。中国四川省の西昌発射基地か、その近辺から発射された弾道ミサイルが命中したとされている。これについて、当初は、「人工衛星を打ち上げる国ならどこでもできる」「20年以上前の技術」などとする見方が多かったが、高野助教授の見方は異なる。
「人工衛星を人工衛星にぶつけて破壊する『キラー衛星』という方式なら、人工衛星を打ち上げる技術を持つ国ならある程度は可能だと思います。でも、地上からミサイルを発射して弾頭を直撃させる技術は全く別です」
つまり、キラー衛星なら周回しながら時間をかけて修正し、直撃させることは容易だが、地上からの打ち上げだと難易度は格段に高いのだ。
人工衛星を破壊する研究、開発は、もともとは戦後の米ソ両大国の“お家芸”だった。
防衛省の資料などによると、米国は1950年代、宇宙空間で核爆発を起こして衛星を破壊する「核エネルギー兵器」の開発に着手して75年まで続けた。
米国は続いて65年、レーザーなどで人工衛星を破壊、または機能を停止させる「指向性エネルギー兵器」の開発を始め、97年には対衛星照射試験を実施した。旧ソ連は70年代に開発を始め、91年以降、計画は中止されている。キラー衛星については、旧ソ連が71年に破壊試験を行って83年に計画中止。米国は2003年から05年に研究機を打ち上げている。
これに対し、今回、中国が行ったような地上発射式の対衛星兵器の場合、米国が90年に開発を開始、01年になって試作機を完成させた。
「秒速7キロの速度で宇宙空間を移動する人工衛星を、地上から発射するミサイルで破壊する技術は、現在日米で導入を進めているミサイル防衛システムに近い技術と言えます」
と高野助教授は言う。日本単独の技術で、中国と同様の人工衛星の破壊が可能かについては、
「仮に人工衛星に直撃させたとすれば、地上からの誘導だけでは無理で、弾頭が自ら目標をとらえて姿勢制御を行わなければなりません。姿勢制御用のロケットと、相手の衛星を見るセンサー、それを処理する電子機器を備えた弾頭ですが、日本には今、その技術はないでしょう」
と否定的だ。防衛省は、ミサイル防衛の日米共同技術研究の一環で、弾道ミサイルを直撃する弾頭の研究を行ってきたが、まだ日本だけでは、こうした技術獲得に至っていないようだ。
宇宙まで広がる中国の軍拡を前に、日本で技術以前に立ちはだかるのが、自前の縛りなのだ。
「今、防衛省や自衛隊ができることは何もありません」と、元防衛長官の石破茂衆院議員は、にべもない。
というのも、国会は69年、「宇宙の平和利用」決議を採択しているからだ。文中の「わが国における地球上の大気圏の主要部分を超える宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げ用ロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り」の文言によって、日本の宇宙開発は、平和利用という制限があるのだ。
だが、前出の高野助教授は、道さえ開かれれば、自衛隊はインフラに始まって、さまざまな整備をできるという。
「とにかく衛星を介した情報通信網を整えること。極端に言えば、一人一人の自衛官が持つ情報を統合できるような体制です。米国がすごいのは、イラクで戦争をやっているのに、衛星ネットワークを使って、米本土まで一体化し、情報を共有していることです」
さらに踏み込んだ軍事の宇宙利用を主張する声もある。
防衛省の外郭団体「ディフェンス リサーチ センター」研究委員で、陸自、海自幹部学校などで講師を務める、杉山徹宗・明海大学教授(比較防衛学)は、レーザービーム砲を備えた「宇宙戦艦」の日米共同開発を提唱している。有人の戦艦で、衛星軌道上からレーザービームで地上の弾道ミサイルなどの兵器を無力化するという。杉山教授は真顔でこう話す。
「日本のレーザー技術は世界最先端を行っています。米国の照準技術など、完成している技術も多い。7割は既存の技術でクリアできます。実現までに必要な予算は140兆円。日米で年7兆円ずつ負担し、研究開発を進めれば、10年後には実現可能」
地上の目標をピンポイントで破壊できるレーザー兵器が実現すれば、中国や北朝鮮の弾道ミサイルはもとより、戦車など従来の兵器も役に立たなくなる。目的は、抑止に力点を置いた平和構築だという。
「日米がそれを持ち続ける必要はなく、最初の2〜3年運用したら、後は国連に任せればいいんです。レーザーで弾道ミサイルを破壊する米国の戦略防衛構想(SDI)は未完成のまま終わりましたが、米国がこれを推進した結果、ソ連の崩壊につながりました。同じことが北朝鮮や中国に対しても可能です。さらに、この巨大プロジェクトを通して多くの新技術も派生し、産業界にとってもメリットが大きいはずです。経営者の集まりでこの話をしたら、興味を持ってもらえました」
もちろん現段階では、実現の可能性は低い。ただし、日本の宇宙における「一国平和主義」とは無関係に、周辺諸国の軍拡は着々と宇宙に伸びている。そして、「宇宙の平和利用決議」が日本を縛っているのは、事実なのだ。