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政治記事読みくらべ
2007年3月9日
精巧な偽100ドル紙幣は北朝鮮製ではなく、米CIA製の疑い(上)
2005年9月に米国が北朝鮮に対して行なった金融制裁はいくつかの理由があるが、ブッシュ大統領が最も強く非難したのは、「スーパー・ノート」と呼ばれる、専門家でも見分けがつかないほど精巧な100ドル紙幣を偽造したといわれる点である。ところが、この偽造紙幣は北朝鮮製ではなく、米国の諜報機関、CIAがワシントン北部にある秘密工場で印刷し、アフリカなどに流通させた疑いが、最近、強くなってきた。
「スーパー・ノート」については、昨年12月と今年1月に行なわれた米朝両国の金融制裁を巡る金融実務者協議と、1月16〜17日にベルリンで行なわれた6カ国会合の米朝主席代表による会談でも取り上げられたが、両国は金融制裁を緩和することで合意し、それが契機となって、6者会合が北朝鮮の核放棄に向かって進展した。それだけに、両国がスーパー・ノートを巡って、どのようなやり取りをしたか、興味深い。
ホワイトハウスに近いワシントン筋と、東京の北朝鮮に近い筋の情報によると、北朝鮮側が、スーパー・ノートはCIAによって製造・流通された可能性を指摘すると、米国側はそれに強く反論せず、金融制裁緩和に関する協議を続けたといわれる。
スーパー・ノートへのCIA関与説をかなり決定的にしたのは、ドイツの有力紙の一つ、フランクフルター・アルゲマイネ紙の2007年1月7日付39面に載った、世界の紙幣印刷事情に詳しい同紙コラムニスト、クラウス・ベンダー氏による「偽造ドル紙幣の秘密」と題する暴露記事である。
この記事の中で、ベンダー氏は、本物の100ドル紙幣、スーパー・ノートともドイツのKBAギオリ社製の超高級印刷機と、極めて限定的なルートで販売されるスイスのシクパ社製の、高価な特殊インクを使って製造されていることを指摘している。これらの超高級印刷機と特殊インクを北朝鮮が入手することは、北朝鮮にとって、ほとんど不可能というのである。また、アフリカ、中近東や旧・ソ連の各地域にばらまかれたスーパー・ノートが武器購入代金として北朝鮮に流入したのではないかと示唆している。
日本国内で、ベンダー氏の記事を取り上げたのは、日刊ゲンダイと、一部のネット・ニュースだけである。マスコミは、新聞、テレビ・ラジオ、週刊誌を問わず、まったくといっていいほど報道していないようだ。複数の外務省高官も「ベンダー氏の記事は資料としても回ってきたことはない」と証言している。
ドイツの有力紙に載っている重要な記事を、日本では、ほとんど誰も読んでいないというような事態が、なぜ生じるか分からない。しかし、米朝関係を左右しかねない重要な記事は、日本のリーダーも知っておく必要があると思うので、長文になるが全文を以下に紹介する。
なお、クラウス・ベンダー(Klaus. W. Bender)氏の略歴は下記の通りである。
1938年、ドイツ・ダルムシュタット生まれ。大学卒業後、社民党系のフリードリヒ・エバート財団に勤務。72〜80年、フランクフルター・アルゲマイネ紙東京特派員として、東アジア地域の政治、経済、文化をカバー。現在は同紙の専門コラムニスト。著書に「Moneymakers. the secret world of banknote printing」(2005年発行、J. Wiley出版社)がある。
(フランクフルター・アルゲマイネ紙の記事)
偽造ドル紙幣の秘密:CIAは偽造ドル紙幣を、秘密印刷所で製造しているのか
すでに約20年、完璧に偽造されたドル紙幣が流通し続けている。その流出元はまだ明らかになっていない。米国政府はこれを北朝鮮の仕業と主張しているが、容疑は、いま、米国自身に向かっている。
国際刑事警察機構(インターポール)にとって同件は最重要事項に属する。約20年にわたって流通し続けている、精巧に偽造された大量のドル紙幣。そして長年の捜査にも関わらず、いまだに判明しない流出元。
2005年3月、インターポールから各加盟国に対し、この危機的状況への注意を喚起する通称「オレンジ警報」が発信された。さらに2006年7月末に当局は、各国中央銀行、捜査機関、そして最重要機密に関わる印刷産業に対して「スーパーノートに関する危機管理会議」の招集を呼びかけた。
同会議において米国側は、すでに犯人が明らかであると信じていた。すなわち、それは、共産主義独裁政権国家にして、米国の不倶戴天の敵、北朝鮮である。しかし1日だけの日程で行われた同会議において、すでにこの見解に対する疑念は支配的となり、むしろそれは、米国にとって悪い方向へと向かった。「米国は、偽造紙幣の陰になにかを隠している」との噂が広がっていた。
「北朝鮮が犯人」説に確証なし
1989年、最初の100ドル偽造紙幣がフィリピン・マニラのある銀行で発見されたときの衝撃は大きかった。造幣の専門家による視覚および触覚鑑定をもってしても(一般市民にとっても最も重要な見分け方だが)、この偽造紙幣を本物の紙幣と見分けることは不可能だったのである。このため捜査官は、この驚くべき偽造紙幣に対し「尊敬」を込めて「スーパーノート」の名称を献上した。
以後、多くの国に嫌疑がかけられた。イランのMullahs、シリア、レバノンのヒズボラ、そして旧東ドイツの名前も挙がった。しかし、米国政府はもはや、それらの嫌疑については触れたがらない。「犯人は北朝鮮でなければならない」との確信を持っているからである。その証拠として、外交官旅券を所有している北朝鮮外交官やビジネスマンが近年、旅行カバンにスーパーノートの札束を入れた状態で逮捕されるという事態が起きている。北朝鮮からの亡命者の証言として、国家事業としての紙幣偽造工作が行われているとの報道もあるが、これらの証言の信憑性については確認のしようがないと言わざるを得ない。
これらの中で重要証言といえるのは、かつての駐モスクワ北朝鮮大使館勤務の経済担当官によるものだろう。この人物は1998年にロシア・ウラジオストックで、3万ドル相当のスーパーノートを所持していたところを取り押さえられている。彼は2003年に西側へ移送され、自分がかつて独裁者キム・ジョンイルの、個人的な金を管理する係であったこと、またスーパーノートの製造にも個人的に関与していたことを語った。
以来、キム・ジョンイルが偽造紙幣を生産しているのは、自分のためのフランス製コニャックやロケットや原子力兵器開発のためだけではなく、疲弊しきった北朝鮮経済を崩壊から救うためである、という事実を米国政府が知っている、ということになっている。年間2億5000万ドル相当のスーパーノートが北朝鮮によって刷られ流通している、という筋書きを、米国人は信じて疑わず、そこに疑念を差し挟む余地はない。この多大な危険をはらむテーマに対して米国メディアは一斉に自ら口をつぐんでしまった。
超高級印刷機はドイツ社製、特殊インクはスイス製
紙幣の印刷は、高度に複雑な技術を要する作業である。「スーパーノート」の品質に求められる専門知識を素人が理解することは不可能であると言わざるを得ない。「スーパーノート」に用いられている紙は、いわゆるFourdrinier製紙機械によって製造されている。詳しくは、75%の木綿と25%の麻の混紡によるもので、これは米国紙幣においてのみ使われている。
ポリエステルの安全糸で書かれた「USA 100」のマイクロ文字も、濃淡の入ったすかしも本物と同様。紙幣偽造者は少なくともこのために1台の抄紙機が必要だ。紙の専門家による、化学的物理学的見地からの分析によると、使用されている木綿はアメリカ南部原産のもので、これは市場でごくふつうに入手できるものであるという。
第二次世界大戦中に行われた、ナチス・ドイツによる英国ポンド紙幣偽造の件を除けば、長い歴史の中で凹版印刷機によって紙幣の偽造が行われた例はこれまでにない。しかし、「スーパーノート」の製造には、高性能のインタリオ凹版(彫刻凸版)印刷が用いられており、これにはインタリオ凹版印刷機が必要となる。同機は、ドイツ・ヴュルツブルクのKBAギオリ(旧DLRギオリ)社のみで製造されており、長年、米国造幣局(BEP)がこれによりドル紙幣印刷を行ってきた。
この特殊な印刷機は、一般の市場では自由に入手することができない。中古品の転売に際しても、インターポールへの届け出がされる。北朝鮮は、1970年代にKBAのスタンダード印刷機をヴュルツブルクから1台購入している。専門家の指摘によると、後付け機能なしに「スーパーノート」を印刷するには、この機械は不適切であるという。しかも交換部品の不足から、現在同機は稼働しておらず、北朝鮮紙幣の印刷は中国で行われていると憶測されている。
北朝鮮が90年代に密かに、KBA社から最新の印刷機を購入したとの説は風評である。北朝鮮政府は当時確かに、ヨーロッパで新たな機械を購入しようとしていたが、それは実現しなかった。まだ、以前に購入したスタンダード印刷機への支払いが完了していなかったからである。
犯罪技術研究所の分析によると「スーパーノート」に用いられているセキュリティ・インクは、本物のドル紙幣のものと一致するという。しかもこれは、光の加減によって外観が変わり、ドル紙幣の場合はブロンズ・グリーンから黒へと変化して見える、高価な変色インクであるという。機密性の高いこの変色インクは、スイスのローザンヌにあるSicpa(シクパ)社でしか製造されていない。このインクはBEPの最高秘密工場で、米国内のライセンス保持者によって、極秘に調合されている。他のドル紙幣のセキュリティ・インクに関しても、同様の方法が用いられている。
しかし、もちろん、厳重な監視のもとにおかれているこの特別インクが少量、製造過程で横領されるという可能性は排除できない。それでも、興味深い疑問は残る。大量生産に必要な量のインクが、どのようにすれば不法に持ち出されることが可能だろうか? しかも、厳重な警戒態勢がしかれている国境をかいくぐって。北朝鮮はかつて、シクパの顧客だったことがある。
「スーパーノート」がシクパ社のオリジナル・インクによるものかどうかを解明するのは、同社にとってたやすいことだ。タグ付き(tagging)という秘密表示が施されているので、セキュリティ・インクの追跡調査が詳細まで可能なのだ。しかし、米国を最大顧客にもつシクパ社は、同件に関するコメントを拒否している。 ( 早房長治、翻訳=ドイツ在住、見市知さん)
(下につづく)
メディア・レボリューション(Yahoo!ブログ)
3月7日掲載分を転載