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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=257
欧州連合(EU)加盟各国の検察当局は、米国主導の「国家間秘密移送(rendition)」計画に関わったとされる者に逮捕状を発布し、起訴手続きの開始を求めている。国家間秘密移送は違法行為であり、これによって数多くの人間が違法に拘禁され、密かに第三国へ送られ、そこで拷問や強制的失踪など、さらなる犯罪行為の被害にあっている。欧州連合と欧州各国政府は今こそ、欧州での国家間秘密移送が歴然たる事実であり、作り事などではないことを認め、国家間秘密移送に関わって人権侵害を犯した者の責任を全力をあげて追求すべきである。
欧州議会は、1週間後に、欧州諸国がCIAによって、被拘禁者の移送と違法拘禁に利用されたという疑惑に関する報告書について投票を行う。アムネスティ・インターナショナルは、欧州議会に対し、欧州連合加盟各国政府は、これまでの人権侵害の責任を認め、国内で独立した公正な調査を行うべきであるということを明確に示すよう求める。
カレド・エル・マスリ ― 逮捕状発布
1 月31日、CIA工作員13名に対し逮捕状が出された。彼らはカレド・エル・マスリの誘拐と国家間秘密移送に関与した疑いがあるとされている。ドイツ国籍のカレド・エル・マスリは、2003年12月にマケドニアで誘拐され、結局アフガニスタンに送られた。そこで4カ月にわたって独房で隔離拘禁され、尋問中に虐待を受けたとされている。アムネスティは2004年8月、カレド・エル・マスリの件についていち早くCIAなど米国当局に書簡を送ったが、返答はなかった。アムネスティは、カレド・エル・マスリの誘拐と国家間秘密移送に関与した者の責任を問う動きを歓迎する。そして、米国政府職員およびドイツ政府職員が、カレド・エル・マスリの国家間秘密移送に関与したことについて、ドイツ検察庁が行う調査に全面的に協力するよう、両国政府に要請する。
アブ・オマール ― 起訴手続の要請、犯罪人引渡しの要請
イタリア検察庁は12月、米国人26名について起訴手続を要請した。うち25名はアブ・オマールの誘拐と国家間秘密移送に関与した疑いのあるCIA工作員である。アブ・オマールは2003年にミラノで誘拐された後、エジプトへ移送され現在も拘禁されている。アブ・オマールによると、エジプトでの拘禁中に拷問を受け、逆さ吊りにされたり睾丸に電気ショックを与えられたりしたという。
検察庁はさらにイタリア人9名についても、起訴手続の開始を求めている。ほとんどがイタリア諜報機関SISMIの工作員である。検察庁は2006年7月、米国人26名に対する犯罪人引渡し要請を出したが、イタリア政府はこの要請を米国政府に対して実行しなかった。アムネスティは、アブ・オマールの誘拐と国家間秘密移送の容疑者に対し、国籍を問わず責任を追及する動きを歓迎する。他方イタリア政府には、米国人26名に対する犯罪人引渡し要請を実行するよう求める。さらに、アブ・オマールの国家間秘密移送についてイタリア検察庁が行う調査に全面的に協力するよう、両国政府に要請する。
欧州連合加盟国はこれ以上責任を拒否し続けることはできない。国家間秘密移送の被害者に十分な補償、とりわけ原状回復、社会復帰、公正かつ十分な金銭的賠償を直ちに与えるよう保証すべきである。国家間秘密移送が二度と起こらないよう、全加盟国が手段を講じなければならない。
欧州連合加盟各国に対して、アムネスティは以下を要請する:
・何人をも他国の国家職員の拘束下に移送しないこと、またそのような移送の便宜を図らないこと。但し、司法が監督し国際基準を満たしている場合を除く。
・秘密であるか否かにかかわらず、何人も、自国領土または自国の管轄下にある領土において恣意的に拘禁されないよう保証すること。
・司法および議会による調査を開始・継続し、関係のある人物への連絡や関連情報の入手を可能にするなど、調査に全面的に協力すること。
・国家間秘密移送に用いられたとされる航空機を所有する航空会社については、いかなる立場で関与したのか、目的地、各搭乗者の移送の法的根拠に関する詳細な情報が提供されない限り、領空および空港への立ち入りを認めないこと。
・秘密拘禁および国家間秘密移送の被害者の安否と居所を確認し、直ちに十分な補償を与えるよう保証すること。
欧州理事会に対して、アムネスティは以下を要請する:
・「国家間秘密移送」は容認できないものであり、人権を侵害し欧州連合の創設意義に反するものであることを明言すること。
・国家間秘密移送計画によって過去に拘禁された人びとや現在拘禁されている人びと全員の居所と身元を開示し、国家間秘密移送に関するすべての調査に全面的に協力するよう、米国政府に要請すること。
欧州議会に対して、アムネスティは以下を要請する:
・2月14日に、欧州での国家間秘密移送に関する欧州議会臨時委員会の報告を全会一致で採択することにより、欧州連合加盟各国政府に対し明確に見解を示すこと。
AI Index: EUR 01/002/2007
(2007年2月5日)