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http://www.asahi.com/national/update/0211/TKY200702110069.html から転載。
イラクの姿伝える闘い 戦火の映像、揺れる米国
2007年02月11日07時59分
イラク開戦から間もなく5年目に入る中、テロ根絶のためと支持していた米国民たちも、第2のベトナム戦争とさえいわれる泥沼化に揺れる。「テロとの戦い」の現実を映像で切り取ってきた日米のビデオジャーナリストたちは、米世論の変化を肌で感じている。
「以前の米国なら、大手テレビ局は恐れて放映しなかっただろう」
東京都内で1月に開かれたシンポジウムで、ニューヨークから来日したジョン・アルパートさん(58)はそう語った。
05年、バグダッドの米軍病院で2カ月間カメラを回した。血まみれの米兵が次々とヘリで運ばれてくる。爆弾でちぎれた米兵の腕を医師が無造作にゴミ箱に捨てる……。
できあがったドキュメンタリー番組「バグダッドER」は放映前、米陸軍幹部から内容を変えるよう圧力がかかった。しかし、米ケーブルテレビHBOは昨年、放映を決断。テレビ界の栄誉「エミー賞」を受賞する。
01年の9・11同時多発テロ後、アフガニスタン空爆で親族19人を亡くしたアフガン系米国人の番組を制作し、イラク開戦直前には、米国とイラクの学生の衛星テレビ討論を実現させた。しかし、国中がテロとの戦いに賛成する中、大手テレビ局はどこも放映を渋った。
イラク開戦後は、自力で米国民に現実を伝えることを決意する。ニューヨーク、アフガン、イラクで撮りためた映像を、スクリーン付きバスで10都市を回って上映。米軍の攻撃で息子を失ったイラクの母親の姿に多くの人が涙を流した。アルパートさんは「米国人は自国以外で起きていることに無知すぎた」と語る。
ジャーナリストの綿井健陽さん(35)は今月9日まで、2週間かけて米国内の4都市を回った。米軍の攻撃で子を失ったイラクの父親らを03年から1年余りかけて撮影したドキュメンタリー映画「Little Birds イラク戦火の家族たち」の上映のためだ。
米国上映までの道のりは険しかった。
空爆や占領がもたらす被害を米国人に知ってほしいと、最初に英語版を作った。だが、米国の映画、テレビ関係者の反応はなく、先に日本や欧州などで上映された。
状況が変わったのは、米国の中間選挙が近づいた昨秋。イラク帰還兵を支援する団体などから上映会の要望が舞い込むようになった。イラク戦争は間違いだったと考える米国人が増えたからだ、と綿井さんはみる。
イラクでの犠牲者は米兵が3000人、イラク市民は5万人とも言われる。
「米国がイラクで何をしてきたのか、日本の自衛隊が支援してきたものは何だったのか、米国人も日本人もその現実を避けては通れないはずだ」