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http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200702061816
米軍が実戦配備の準備を進めているティルトローター機、V-22「オスプレイ」を巡る議論が今だに米国内では続いている。離着陸はヘリコプターのようにローターを使い、前方に進む場合には通常の航空機のように翼の浮力を利用して進むというこの発想を実現したこの機体のどこがこれほど、問題となっているのか?
実は、ヘリコプターとレシプロ機の特長を足しても素直に2にはならない、技術的な制約が問題視されているのだ。
現在、オスプレイに関して一番問題視されているのが、「ボルテックス・リング状態(vortex ring state)」というヘリコプター独自の失速現象に陥り易いという点となる。ヘリコプターの場合、ローターを回転させ下方向に風を吹き下ろすことによって浮力を得ている。このため、下降速度がローターによって得られる吹き下ろしの速度と同じになってしまうと浮力を失い、飛行機における失速と似た現象が発生してしまう。
旧型のヘリコプターの場合、ローターによる吹き下ろしの速度はそれ程、早くなかったため降下速度が速すぎるとボルテックス・リング状態に陥り、墜落するという危険性が高かった。
もっとも、最近のヘリコプターの場合、比較的小径のローターを高速で回転させているため、軍用のヘリコプターなどで多少無理な急降下を行ってもボルテックス・リング状態に陥ることはほとんどなくなっていた。
ところが、このオスプレイのようなティルトローター機の場合、ティルトローター特有の空力特性のため一般のヘリコプターよりもボルテックス・リング状態に陥り易い構造だということが、開発が終了し実験段階に入ってからかなりしてから判明してしまったのだ。
これまで実験を重ねてきた米海兵隊ではボルテックス・リング状態に陥らない運用限界として、時速40ノット以下のヘリコプターモードで進行時の下降速度を 800フィート/分と定めた。40ノット以上の速度で進む場合には主翼による浮力の効果を得られるために800フィート/分以上の速度で降下してもボルテックス・リング状態には陥らないという。
過去にオスプレイは何度か大事故を起こしているが、その原因に関してもティルトローター機特有の運用を熟知していなかった軍隊が通常のヘリコプターと同じ感覚で急降下訓練を行ってボルテックス・リング状態に陥ったことに問題があるとされている。
「800 フィート/分」の制約条件に関して海兵隊ではUH-60「ブラックホーク」でも大した変わらないと言っている。しかし、これにも実は、含みがあって、同じ「800フィート/分」であってもオスプレイの「800フィート/分」の場合は運用限界のギリギリの数字を表しているのに対して、ブラックホークの「800フィート/分」場合はかなり余裕を持たせた数字となっているのだ。実際、現場のパイロットの間からはブラックホークの場合は2500フィート/分の速度で急降下してもボルテックス・リング状態には陥ったことはないといった声もでてきている。
オスプレイは敵地に奇襲をかける特殊任務用に開発されたもので、ブラックホークの3分の1の降下速度でゆっくりと降下などしていたらたちまち敵に打ち落とされてしまう。反対にヘリコプターの感覚のままでオスプレイの操縦を行い、急降下を行っても墜落してしまうことになる。
オスプレイは一見、ヘリコプターとレシプロ機の両方の特長を併せ持つ、夢の航空機のように思えるが、実はかなりの問題を持っているのだ。かと言って、これだけの巨額の開発費用を投じた後で「はい、使えませんね」とも言えない。この機体の開発が長引いてしまった理由がこの辺にある。
写真は海兵隊で飛行実験中のMV-22。ローターの回転に伴う気流の流れが見える貴重な写真だ。