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週刊『前進』(2278号4面1)(2007/01/15 )
超大国米帝の没落は帝国主義間争闘戦の死闘化と侵略戦争=世界戦争に行きつく
反帝・反スターリン主義世界革命に労働者の未来
はじめに
アメリカ帝国主義のイラク侵略戦争の敗北・敗勢、その深刻化はとどめようもなく進行している。それは米帝国主義に大きな打撃を与え、その没落を激しく促進している。06年11月の米中間選挙はその政治的表現であり、この結果自体が米帝をさらに没落と混迷にたたき込むものとなっている。
このような情勢の展開を根底で規定しているものは、全世界の労働者階級人民の怒りと闘いである。とりわけ、イラク人民を先頭とするムスリム人民の反米・反帝国主義の民族解放・革命戦争の不屈の展開である。また帝国主義国の、とりわけ米帝直下のプロレタリアート人民の反戦の意識であり闘いである。
このイラク侵略戦争への怒りと闘いは、米帝・国際帝国主義による後進国・新植民地主義体制諸国に対する収奪・搾取・略奪(帝国主義的超過利潤のあくなき追求)への怒りと一体である。そして何よりも決定的なものは、1980年代の米のレーガン、英のサッチャー政権以来の歴史的な大資本攻勢のもとでの搾取の極限的激化に対する労働者階級のつもりにつもった怒りが、今や臨界点にまで高まってきていることである。この、侵略戦争への怒りと憤りと、労働者階級を「工場法以前」的な世界にたたき込んででも自らの利益追求にひた走る資本への怒りと憤りは、今やアメリカ本土を始め全世界のプロレタリアート人民の中で高まり、渦巻いている。
しかし、帝国主義という存在は国際プロレタリアートの世界革命、今日的には反帝国主義・反スターリン主義のプロレタリア世界革命によって打倒されないかぎり、どこまでも凶暴化し、非人間的に腐り果て、戦争や搾取・収奪や弾圧のかぎりを尽くしても延命をとげていこうとあがきまわる。
その観点からみるとき、イラク侵略戦争の敗北・敗勢にのたうちまわり、唯一の超大国としての力の限界・支配の破綻(はたん)に陥った米帝国主義が、反動的反革命的な延命を求めて動く方向は何か。端的にいえば、帝国主義世界〔列強と大国的世界(中・ロを含む)〕における帝国主義間争闘戦である。それは一面では国際的な大企業・独占体間の激烈な争闘戦・競争戦・独占的再編の嵐である。他面では世界的な石油・諸資源の独占的支配をめぐる、あるいは地政学的支配権をめぐる激しい争いである。そして、基本的には侵略戦争への突入である。
経済争闘戦の死闘的展開とその一環としての侵略戦争政策の駆使が、超大国米帝の没落の中で生じてくることを、国際プロレタリアート、その一隊としての日本のプロレタリアートは、07年冒頭という時点でしっかりと銘記しなければならない。
この国際的すう勢の中で、国際帝国主義の最弱の環としての日帝の姿はますます鮮明になってきている。日帝は戦後の経済大国化をなしとげたとはいえ、敗戦帝国主義の歴史的現実の重みのもとで七転八倒している。日帝・安倍政権はこのため改憲をふりかざし、朝鮮侵略戦争への参戦をめざす政策を推進するとともに、小泉政権以来の「骨太の方針」と新たな07年1・1御手洗ビジョンをベースにしつつ、参院選のりきりをもかけて、いわゆる「成長戦略」なるものでこの情勢に対応しようとしている。
以上の全体的なスケッチをふまえて、今日の世界情勢をめぐるいくつかの重要事項について若干の確認をしていきたい。
〔T〕 イラク侵略戦争の敗北・敗勢が米帝の没落と危機を促進
まず、イラク情勢について、巨大な戦略的変動が起こっていることをおさえることが重要である。
何よりも、06年11月の米中間選挙の結果の米帝にとっての重大性・打撃性である。米帝のイラク侵略戦争がイラク人民の不屈の抵抗闘争の前に決定的な敗北と敗勢に追い込まれ、その泥沼的内戦化への突入が鮮明になったこと、その中で米本土の労働者階級人民の怒りと不満が圧倒的に強まったことが中間選挙の根底を規定したのだ。
もちろん、米国の今日の階級的現実に規定されて、選挙の選択肢は共和党か民主党かに絞り上げられている。民主党は帝国主義的ブルジョア政党であって、イラク政策の根底的転換をなしとげられるような存在ではまったくない。しかし、共和党が圧倒的に支配していた上下両院で民主党が多数派へとのしあがったことは、ブッシュ政権とそのイラク政策への全人民的ノーのつきつけを基礎とするものであって、ブッシュ政権ひいては米帝そのものに決定的打撃を与えるものとなった。
米軍のイラク占領こそ内戦の元凶
この結果、ブッシュはラムズフェルドを更迭し、米超党派の「イラク研究グループ」(ISG)の一員でもあったゲーツを新国防長官にすえた。そして12月6日には、ISGの提言報告書が鳴り物入りで出された。この提言報告書についてきっぱりとした階級的判断を下すことがきわめて重要である。これはイラク侵略戦争の敗北・敗勢を認めながら、その現実のもとで、米帝が侵略戦争をさらに継続・激化していくための政策提言でしかない。
第一に、この提言の最もペテン的なところは、「イラクの状況は深刻で悪化している」「回復できるかどうか確信はもてない」などと言っていることだ。これは戦況判断でしかない。米帝のイラク侵略戦争が石油のための、中東の帝国主義的支配のための不正義の侵略戦争であったことがなんら確認されていない。開戦時、フセイン政権の「大量破壊兵器の保持」や「フセイン政権とアルカイダは結びついている」という断罪が行われ、戦争強行の合理化論として全世界にキャンペーンされた。この二つのことはまったく事実無根であったことが公式に確認され暴露されているにもかかわらずだ。
そこでは、ブッシュが戦争正当化のために掲げた「イラクの民主化」「中東の民主化」という政策こそが、まさに今日のイラクにおける帝国主義占領下の泥沼的内戦という恐るべき事態を引き起こしている原因であることが、まったくおさえられていない。そもそも「イラクの民主化」などと言うが、第2次大戦後の植民地解放闘争の嵐のような発展の中で成立した独立国家・イラクに対して、帝国主義的超大国がその軍事力にものをいわせて侵攻・侵略して打倒し、占領下に自己の望むような政権(本質的にかいらい政権でしかない)をデッチあげることが正当化できることなのか。
米帝・米軍は、その巨大な軍事力でフセイン政権を打倒した上で、「民主化」の名のもとに米占領下で「移行政府」や「正式政府」のための議会選挙なるものをしゃにむに推進しようとした。だがこれは、実際上は、つくり出されるかいらい政権の主導権をシーア派(とくにシスターニ派)に与えるということであった。また、米軍とシーア派の支援のもとでの「クルド自治政府」樹立の道を示すことで、クルド人をアメリカのプランの手先として巻き込むことであった。すなわち、スンニ派を排除して、スンニ派の怒りの爆発に対して米帝(とシーア派など)がスンニ派武装勢力のせん滅戦にうって出ることを意味していた。
このことは、スンニ派地区ファルージャへの米軍によるせん滅戦が何よりもよく示している。とくに06年1月のファルージャ攻撃では、国民議会選挙の直前まですさまじいせん滅戦を繰り広げたのである。
ISG提言は米帝のイラク侵略戦争がまさにこのようなものであることに何の言及もなく、「暴力の原因はスンニ派武装勢力、国際テロ組織アルカイダ、シーア派民兵など。大部分はスンニ派武装勢力による」などと言っている。そして、今日の内戦化もスンニ派の武装闘争などの挑発によるものであるかのようにキャンペーンしている。だが現実には イラク治安部隊の中にシーア派民兵のバドル軍団やマフディ軍などが入りこみ、米軍と連携した治安部隊としてスンニ派に対する拉致・テロルをほしいままに遂行していることが基底にあることは、今日、明白になっているのである。バグダッドでは毎月2千〜3千人の不明死体が死体安置所にもちこまれているが、その大半はシーア派民兵による対スンニ派のテロルの結果なのだ。だが「拉致があった」と言えば、それは自動的にスンニ派の仕業とされてきたのである。
だがここで、誤解のないように言っておけば、革共同はシーア派民兵の行動をあげつらうことに主眼をおいてはいない。こうした内戦へと追い込んだのはまさに米帝のイラク侵略戦争とその遂行のやり方そのものであったということである。また、あえていえば米帝・米軍は、情勢が変われば今度はシーア派(民兵)をイランの手先として大せん滅戦をしかけることすら辞さない存在だということだ。
侵略戦争の継続がISG提言の本質
ISG提言はその出発点において、イラク情勢についてデタラメな判断をしている。したがって、この提言が米軍占領下の内戦というイラクの現状を打開することなどできるわけもない。さらに、ISG提言で重要な点として、次の二つのことが言われている。
ひとつは、「米国はイラン・シリアと直接交渉し、イラク問題と地域の他の問題に関与させる」ということである。しかし、これは米帝にとって不可能に近いものではないか。米帝はイランやシリアに大きな見返りを与えるとでもいうのか。それは不可能だ。イランはさらに強化されて中東全体に大きな発言権をもつことになる。あるいは米帝がイラン・シリアを猛烈に脅迫して強制するというのか。しかし、それはイラクでの攻防が全中東に拡大することでしかない。
いまひとつは、「米国は大規模な駐留を無期限に約束すべきではない。大部分の部隊は08年第1四半期までに撤退可能だ。米軍将校(顧問・教官役)をイラク軍(治安部隊)の中隊レベルにまで組み込む」と言っていること。これは悪名高き軍事顧問団方式そのものではないか。この組み込みチームの人員をいまの4千人から2万人にするとも言っている。また、これと同じ文脈で、米国防総省はイラク国家警察と国境警察、米司法省はイラク内務省下の警察の訓練任務を指揮する、そのための要員を組み込むと言っている。まさにこれは帝国主義国による植民地政府のコントロールの方式の一形態そのものではないか。
以上の簡単な検討からしても、ISG提言の本質が、米帝がイラクでの敗北・敗勢の中でなおかつ侵略戦争を継続し、所期の目的を完遂しようとするブッシュ政権を助ける役割を果たす点にあることは明白であろう。
新たな大量増派へ動き出すブッシュ
ISG提言の本質はこのようなものだが、ISG提言が「イラクの状況は悪化している」「回復できるかどうか確信をもてない」としていることは、米帝にさらに追撃的な大打撃を与えるものとなることもまた事実だ。一言でいえば、唯一の超大国としての、帝国主義の基軸としての米帝国主義が、その世界支配と国内支配において今や根底から動揺し始めたことを鋭く示すものとなっている。
イラク侵略戦争で敗北と敗勢に陥り、その泥沼から抜け出すにも抜け出せない。この米帝の現実は、戦後帝国主義体制の歴史の中で、ベトナム戦争敗北以上のダメージを米帝が受けるということである。米帝の二大政党レベルでの政争がこれからどんな過程をたどるにせよ、この歴史的危機と破綻からの出口は帝国主義間争闘戦の未曽有(みぞう)の激化と侵略戦争のさらなる拡大以外にない。実際にもブッシュは1月10日、イラク新政策を発表し、そこで米軍2万人の新たな増派を決定しさえしている。またそれは、国内階級戦争におけるファシスト的暴力支配の登場を含むすさまじい政治攻勢・資本攻勢の展開となるということである。
イラク情勢をめぐって、最後にがっちり確認しておきたいことは、今こそ国際プロレタリアートは、米帝のイラク侵略戦争が本当に不当・不正の残虐きわまりない戦争であり、こんな戦争を続けるのが帝国主義というものであるなら、そんなものはこの地上から一掃されるべきだ、と声を大にして全世界で一斉に蜂起すべきだということである。
この怒りと糾弾は今や日本で、朝鮮で、米国で、全世界で、巨万の人々の心を必ずとらえることができる。この戦争の不当性、不正義性、許されない残虐性を火の言葉で暴露すべき時が来た。
また、それが全世界をぐらりと揺るがす力となる時が来たということである。世界情勢はまさにここで根底的に変動しつつあることを確信しよう。
〔U〕 アメリカ経済の住宅バブルの崩壊のもつ歴史的な重大性
米帝はイラクで敗北と敗勢に落ち込んでいるだけではない。アメリカ経済自体の危機と破綻も今や画歴史的段階へと突入しつつある。これは対外的には帝国主義間争闘戦と戦争、対内的には恐るべき階級攻勢・資本攻勢の展開となっていく。
米帝は唯一の超大国としての危機をのりきり、巻き返すために戦争政策へとのめり込んだのであるが、ブッシュ政権がその戦争政策の土台としたのは米経済のバブル的展開であった。しかし今やイラクでの危機の未曽有の深まりとまさに表裏一体のものとして、この米バブル経済がついに破綻し大崩壊を開始するにいたっている。
具体的には米国での住宅バブルがついに崩壊し始めたのである。これは決して住宅産業という一産業でのバブルとその崩壊ということではない。
ブッシュ恐慌対策が生んだバブル
歴史的にみれば、アメリカ経済は00〜01年の過程で、ITバブルの崩壊という形で29年型の大恐慌に突入しようとしていた。これに対して01年に登場したブッシュ政権は、レーガン以来の超反動的な労働・経済政策を継続・激化させていった。
すなわち、労働者階級が19世紀以来、ロシア革命以来、あるいは1930年代のニューディール以来、歴史的にかちとってきた労働組合を軸とする諸権利や社会保障政策を破壊し廃棄して、資本が規制緩和のもとに利潤・独占的超過利潤を求めて自由にふるまい、労働者階級の組合的団結を破壊し、けた外れのリストラを強行し、非正規雇用労働者を膨大につくり出すことを続行していった。そしてひとにぎりのブルジョアジーとそれに連なる階層のみが肥え太り、他方では労働者階級の膨大な部分が日々の食生活にも事欠くような貧困のもとにあえぐ現実をつくり出してきた。
ブッシュ政権はこういうレーガン以来の階級支配の反動的再編を推進しつつ、その上にたって空前の恐慌対策を強行した。すなわち、ひとつは超低金利政策(これは03〜04年にはついにFFレートが1%というところまでいった)を行った。いまひとつは大企業・金融独占ブルジョアジーへの超大型減税を強行した。またこの際ブッシュは、ドル本位制的現実にあぐらをかいて、いわゆる三つ子の赤字(貿易赤字・経常赤字・財政赤字)の天文学的膨張を平然と無視して上記の政策を強行したのだ。
この結果つくり出されたのがアメリカ経済のバブル化であった。具体的には住宅バブルの形態をとってそれは進行した。この政策は、レーガン反革命による労働市場の大変更と労働組合破壊下で、総額賃金が大幅に圧縮されて搾取率が強まり、労働分配率がどんどん下がるという現実なしには、大インフレを引き起こすものとなって直ちに破産するようなものであった。アメリカの労働者階級はこの現実への怒りをたぎらせ、また先端的に激しく闘いつつも、全体として既成のAFL・CIO(米国労働総同盟・産別会議)的な超ダラ幹の組合支配を打ち破れずに苦闘してきた。この上にたって初めて、ブッシュは空前の恐慌対策としての経済財政政策を遂行できたのである。
そして米経済は一定のGDP成長を見せ始め、03〜04年頃から住宅ブームを引き起こし、それはついには住宅バブルへと転化した。住宅市場が投機の対象となり、投資としての住宅建設が広範に行われていったのである。また住宅の持ち主にとっては、住宅価格の上昇分を担保に新しくローンを組むことを可能にするホームエクィティローンなるものが大々的に普及し、いわば借金をどんどんする形で個人消費が拡大していった。このような住宅建設や個人消費の拡大のもとで、ついには経済全体において設備投資の拡大さえ引き起こされ、GDPを拡大するものとなっていったのである。
しかしこのブームはバブル化し、投機性をますます強め、経済のインフレ化などを媒介に景気の大後退を引き起こす危機を深めていった。このためFRB(米連邦準備制度理事会)は金利を事実上のゼロ金利(マイナス金利)から次第に上げ、5・25%にまで引き上げていった。だが住宅バブルはせいぜい3%前後の金利(事実上インフレ率と同じくらい)のもとで成り立つものとしてあったので、金利の上昇は結局、バブル崩壊への引き金を引くものとなった。
昨年夏以降の住宅市場の急激な崩壊
06年1月以来、住宅バブルの収縮過程はじりじりと進行していたが、8月以降急激に加速度的に収縮(パンク)していった。
8月には住宅販売数が急減し始め、住宅販売価格も下落度を強めた。8月には1・7%減、9月には2・3%減となった。急激な値崩れである。8月の中古住宅の売れ残りは総計392万戸(7・5カ月分の販売戸数に相当する大きさ)となり、9月の住宅着工数は前年同月比マイナス27%というドラスティックな減少幅となった。GDP統計での住宅関連投資は、06年1〜3月6・4%減、4〜6月9・8%減、7〜9月17・4%減と急激に縮小していった。これらの数字は、きわめて激烈な市場の崩壊が生じたこと以外の何ものも意味しない。
ホームエクィティローンの残高の前年比伸び率は、04年のバブルピーク時の44・2%増から、06年9月にはたったの1%増となった。これが個人消費の減退に及ぼす影響は明白であろう。
住宅ブームがGDP成長全体にとっては1・5%分の成長増加をもたらしているとされてきた。また雇用増加の2〜3割が住宅関連産業であったとされてきた。実際に米のGDP成長率は06年の年初(5・6%)をピークに、06年4〜6月期には2・6%、7〜9月期には1・6%とどんどん減速している。下落の最大の要因は住宅関連投資の低下である。
住宅バブルの完全な崩壊は、アメリカ経済全体のバブルの崩壊となる。さらには中国経済・日本経済・EU経済などにも甚大な影響をこれから与えていくものとなる。米の住宅バブルがついに崩壊したということを絶対に過小評価してはならない。
アメリカ経済に限っても、個人消費の減退は自動車産業などにも巨大なインパクトを与える。米経済の減退は不可避である。そしてそれは米経済のバブルに依拠して対米輸出を拡大し、それを基礎に経済の浮揚を図ってきた中国・アジア諸国、そして日本に決定的なインパクトを与えるものとなる。
貿易赤字の拡大とドル暴落の切迫
ここで、基軸帝国主義としての米帝の存在にとって、またドル体制の維持という生命線にとって決定的な意義をもつ三つの赤字について、やはり簡単にせよおさえておく必要がある。
米貿易収支の天文学的レベルの赤字は、04年に総額6113億j、05年に7167億j、06年1〜10月には6434億j(これは前年同期比としては史上最高)と、06年においてもさらに拡大している。本来ならこんな巨大な貿易赤字は許されないが、米帝は唯一の超大国という帝国主義的「実力」においてドル本位制的にふるまっているため、これを放置できている。そして米帝当局者は国際的資金循環をとおしてオイルダラーがEU経由で流れ込み、中国・アジアや日本の巨大な貿易黒字が対米証券投資などとして還流し、資本収支を含めた国際収支のバランスを保持できているかぎり、何の問題もないといって合理化している。
また米帝は、グローバリズムの名のもとに世界をWTO(世界貿易機関)体制や各種の自由貿易地域・FTA(自由貿易協定)の網の中に組み込み、そこに巨大なスケールでの直接投資や金融的間接投資を行って、安い労働力からの超過利潤の搾取や金融的収奪などを遂行している。そしてそこから膨大な額の果実を米本国に送金することによって、国家としての経済の基礎を支えている。
しかしながらこれは、基軸帝国主義である米帝が、一部の金融・エネルギー部門や航空宇宙産業・軍事産業部門などで国際的優位を確保しているとはいえ、重要な工業的産業的基盤を空洞化・弱体化させつつ、金融資本的な対外直接投資・間接投資などによって世界を収奪しつつ延命していくというような姿であり、やはり帝国主義の末期の形態である。
しかもそのグローバルな資金の流動は、あまりにも多くの不安定要因を伴っている。とりわけ今日、世界の金融市場を時々刻々電子のスピードで飛び交って利ざやを巧みに集中するいわゆるヘッジファンドの動きは、それが想像をこえる大きさで行われていることを考えるとき、そのもつ破壊性・破綻性はあまりにも大きい。
ヘッジファンドの大破綻は実はすでに始まっている。06年9月には米ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズの大破綻が生じている。この破綻は商品取引、具体的には天然ガスの先物取引での天然ガス価格の暴落のため、ファンドの運用資金95億j(1・1兆円)の内約60億j(約7千億円)を損失してしまったことに端を発する。この損失規模は98年の、巨大な世界金融危機の引き金を引いた米LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の大損失以来のものだ。
この天然ガス価格の暴落とアマランスの大破綻のショックは、他のヘッジファンドの商品先物投資からの後退を引き起こしている。原油の1バレル78j台から60〜50j台への下落などもその流れの中で生じている。
そして皮肉なことに、これが巨額なヘッジファンド的投機資金のニューヨーク株式市場への流れ込みをつくり出し、時ならぬニューヨーク・ダウの株高(史上最高のくり返し)をつくり出している。しかしこれは、米と世界の株式市場の大混乱の引き金を引くものとなる可能性が増大しているということだ。まさに帝国主義の寄生性・腐朽性を絵に描いたような現実が生まれているといわなければならない。
貿易収支の天文学的赤字の果てしもない行進は絶対にいつまでも続くことはない。必ずドル暴落の大崩壊の局面をつくり出す。帝国主義の危機と末期症状がここまできていることについて、国際プロレタリアートはしっかりと自覚し、世界革命戦取への決意を新たにしなければならない。
財政収支については省略するが、経済が不況に向かえば米財政収支は一挙に再び恐るべき勢いで悪化していく。そうでなくても米当局者自身、07年から10年にかけて再び悪化することを自己確認している。
リストラの嵐との一大決戦期の到来
米帝国主義の危機は個別企業・独占体のレベルにおいても深刻化しつつある。住宅バブル崩壊と国際争闘戦での敗北のため、減産・工場閉鎖・リストラの嵐がアメリカの労働者階級に襲いかかろうとしている。新たな階級決戦の局面が到来し始めているのだ。
昨秋発表された米大企業の7〜9月期決算では、500社平均で当期利益が20%上昇したとされ、それを材料にニューヨーク株式市場が史上最高値を更新している。しかしこれはリストラ効果をベースにし、それに住宅バブルや原油価格高騰のもとで暴利をむさぼってきた素材産業・金融業・エネルギー産業などが全体を引っ張っている中で生じた結果である。このすう勢は住宅バブルの崩壊ですでに根本が揺らいでしまっている。
むしろはっきりしてきているのは、住宅バブル崩壊、米のバブル経済の全体的崩壊の巨大な重圧が深まっていく過程が、同時に、国内的=国際的な独占体間の激しい争闘戦の激化と結合していく過程となってきていることである。なかでも米帝にとって依然として重要な基軸的産業の一角をなしている自動車産業は、今日、未曽有の危機に陥っている。
06年9月にはまず、フォードが大リストラ計画を公表した。06年10月から07年3月にかけてホワイトカラー1万4千人の削減を行う。フォードの全ホワイトカラー労働者の3分の1にもあたる大削減だ。また06年1月に発表していた工場労働者3万人の削減計画についても、4年前倒しして08年までに実施すると変更した。これはフォードの米国内シェアが20%台から16%台に急落したことを理由にあげている。
9月にはさらにクライスラーも、06年下期の生産を10%減産することを発表した。すでにGM(ゼネラル・モーターズ)とフォードも06年10〜12月期の10〜20%減産を発表している。これはトヨタ・ホンダなどとの市場分割戦での敗北・敗勢が著しいためである。10月にはGMが、7〜9月期決算が1億1500万jの当期赤字となったと発表。これでGMは4〜6月期、7〜9月期と連続して赤字決算となる。
また9月初めには米国の半導体産業の最大手のインテルが、07年中に労働者の1割強、1万500人を削減すると発表した。これはAMD社とのシェア争いでインテルの独占力が崩されてきていることへの対応としてうちだされている。
これらはバブル経済の崩壊の進行の中で、国内的・国際的な争闘戦に敗北したり敗勢に陥っている企業・独占体の危機がまず表面化したものとしてある。これから米経済全体の不況化の重圧が強まる中で、こうしたリストラ攻撃はさらに全体化していくことが不可避となっている。
米産業の没落衰退と争闘戦は不可避
ここで次の点をしっかり確認しておくことが重要である。マクロ経済レベルでの貿易赤字のあまりの巨額化、国際資金循環のあまりのアクロバット性は、本質的にドル暴落として、米帝を軸とした戦後帝国主義経済体制の根底的瓦解(がかい)の危機を現実化する。そこにおいて、アメリカ自動車産業(それに代表されるアメリカ工業)が今日陥っている危機はあまりにも深刻だということである。このままの状況が進行すればアメリカの自動車産業の没落・衰退という恐るべき事態となりかねない。
米帝のイラクでの敗北・敗勢、それを受けた米中間選挙でのブッシュ・共和党の大敗北と表裏をなす事態として、このようなことが進行している。これはアメリカ帝国主義の基軸国・超大国としての危機そのものである。
われわれはこの事態から、米帝のなりふりかまわぬ反撃、保護主義・排外主義まるだしのすさまじい巻き返しが始まること、戦争・貿易戦争・通商戦争、総じて帝国主義間(大国間)の争闘戦激化の時代への突入が不可避であることをがっちりとおさえていくことが必要である。米中間選挙に続いて08年の次期大統領選で民主党が勝利するなら、この通商戦争―争闘戦は一段と激化していくことは必至である。
〔V〕 米・EU・日帝ならびに中・ロの存亡かけた争闘戦と分割戦
米帝のイラク侵略戦争の敗北・敗勢の深化、米国経済のバブルの大崩壊、そしてますます巨大化する貿易赤字とドル暴落の危機――この中で、米の帝国主義的独占ブルジョアジーはこれから未曽有の激しさで帝間争闘戦に全力をあげることは間違いない。
今日、世界帝国主義は、90年代初めのソ連スターリン主義崩壊後に成立した米帝を圧倒的基軸とする帝国主義世界体制に、資本主義化政策にのめり込む解体したスターリン主義国・ロシアや残存スターリン主義・中国が組み込まれてから十数年を経てきている。だが今や、基軸国米帝の没落と危機のもとで、帝国主義間(中・ロを含む大国間)の国家間争闘戦やその基盤としての大独占体間の死闘戦がかつてないスケールで爆発する時代へと突入するということである。
しかもそれは、中国の独特の形での「資本主義化政策」(本質としてのスターリン主義は根本的には変わらないままの)が進行する中で、巨大な中国市場が世界市場に参入し、さらにはBRICs(中国のほか、ブラジル、ロシア、インド)という形での巨大な新興市場が参入するということの中で進行するのである。
こうした中で、資本と商品の輸出市場をめぐって、石油などの天然資源の独占的支配権をめぐって、また安価な労働力の支配・確保をめぐって、政府と民間独占体の全体を巻き込むすさまじい分割・再編戦争、争闘戦となることは明らかである。
このすさまじい独占体間の相互せん滅戦と国家間の帝間争闘戦は、不可避に帝国主義的侵略戦争へと発展する。イラク侵略戦争、アフガニスタン侵略戦争はその始まりである。イラン(中東)侵略戦争、朝鮮侵略戦争の危機は一段と深刻化しつつある。
この〈戦闘〉で米帝が好戦的にふるまうことは明らかだが、EU(独仏英などの諸国)も日帝も、また大国としての中国・ロシアも、それぞれに自己の存否をかけてこの争闘戦・分割戦に突入する。いや、せざるをえない。
ドイツ経済の成長の背後にある危機
EUはそれ自体、経済的排他性をもつブロックであり、米帝の激烈な争闘戦圧力への一定の対抗力として形成されてはいる。しかし、経済ブロックというものに閉じこもるだけでは本質的には行きづまる。そもそも成長しえない。今日のEU(EU内の諸帝国主義)はまさにその意味でひとつの転換点にある。
確かにEUはドルに対する一定のユーロ圏としての相対性をもち、ドイツ経済の一定の成長をテコにして、06年4〜6月期には3・6%増、7〜9月期には2・0%増などのプラス成長をとげている。だが、この成長の牽引(けんいん)力となったドイツ経済をみても決して順風満帆ではない。
ドイツが経済的不況から05〜06年に2〜3%の成長へと転じることができたのはまず、輸出の拡大による。これは米バブル経済のもとでの世界経済のバブル化の流れに沿ったものであるとともに、EU拡大に伴って経済の東方拡大をなしとげ、安い労働力を搾取する新工場進出などをどしどし進めたことによる。また、国内に流入する外国人労働力を低賃金・強労働のもとにおき、リストラを強行して利潤をむさぼってきたからにほかならない。さらに、財政赤字3%以下というEU間の協約を破棄して、財政赤字拡大による景気の刺激を行ったことによる。
しかしこれでは労働者階級の賃金は抑圧され、個人消費の拡大力などは弱体化したままである。また、生産拠点の東方進出はドイツ国内の産業的空洞化を伴い、国際競争力の低下が懸念される状態となる。法人税収の減少も生じている。さらにドイツでも少子高齢化が日本以上に進行し、このため社会保障費は当然にも拡大する。
このような現実に直面して、ドイツ・メルケル政権は日本とほとんど同じような政策を打ち出している。「財政再建」「税制改革」「社会保障制度改革」「イノベーション」である。しかし、ドイツ政府がどうもがこうと、今日の末期の帝国主義のもとでは失業率は10%台を続けているし、個人消費は成長力を失い、財政赤字は拡大している。結局は日本の消費税にあたる付加価値税を3%増やして07年より19%とすることになっている。
EUの牽引力でありEUの基軸帝国主義としてのドイツのこのような現実は、結局、EUをして外に向かっての膨張戦略へと向かわせている。
対外膨張に向かうEUの新通商戦略
こうした背景のもとで、EUの指導部である欧州委員会は06年10月にEUの新通商戦略をうちだした。これは第一にインド・ASEAN・韓国とのFTA締結を急ぐことを決定した。第二に新通商戦略の最重要の環として対中国新戦略を確認した。EUとして連携してEU企業の対中国参入を促進・援助していくこととしたのである。
ちなみに、EUはすでに中国との貿易関係を強めている。中国の06年1〜9月の輸出入合計は1兆2726億jだが、貿易相手国の順位は次のようになっている。
第一位 EU(輸出入合計1944億j、前年同期比23・9%増)
第二位 米(輸出入合計1915億j、前年同期比24・8%増)
第三位 日本(輸出入合計1509億j、前年同期比12・8%増)
帝国主義的戦後発展が行きづまり、経済のバブル化を繰り返す中で延命している今日の最末期帝国主義にとって対外膨張は不可避であり、アジアとりわけ中国市場あるいはBRICs市場こそは、文字通り生命線となってきているといえる。このため、国際的競争戦、資本と商品の市場分割戦に勝ちぬき、工場立地・生産拠点移転などをとおして勢力圏を形成していくことは、帝国主義諸国にとってまさに死活的な事柄になりつつある。
そして、この過程で、安い資源とりわけ安い労働力を独占的に支配し、搾取し、収奪し、超過利潤を莫大(ばくだい)に積み上げていくことが帝国主義的生き残り戦争に勝ちぬく道となってきている。そして、この世界の労働力市場に生じている歴史的大変動の波にのって、帝国主義本国のプロレタリアートの「賃労働と資本」の関係をギリギリの生理学的最低賃金の重石によって支配していくことを、ブルジョアジーは狙っているのだ。
日帝・安倍政権の狙っていることもこうした米帝・EU帝諸国の動きと対応している。日帝は帝国主義の最弱の環であるがゆえに、その攻撃は最も苛烈(かれつ)なものとなってきている。
安倍は「骨太の方針Y」を基礎にして、自治労・教労など4大産別の労働者のリストラ・首切り、社会保障制度の根底的破壊、地方自治制度の帝国主義的侵略戦争体制への大変革(道州制導入など)を狙うとともに、07年の参院選をも狙って「成長戦略」なるものを今や圧倒的に押し出している。この「成長戦略」は、帝国主義間争闘戦の激化に対して国際競争力を飛躍的に強めるために、大独占企業への企業減税を惜しみなく行おうとするものだ。とりわけ対中・対アジアの帝間争闘戦に勝ちぬくための政策である。世界市場争奪戦に勝ちぬくことで一切が解決するという、きわめて帝国主義的政策であり、対外膨張政策、戦争政策そのものである。それは、現実の米日帝の朝鮮侵略戦争策動と百パーセント一体のものである。
巨大な独占体間の国際・国内的死闘
次に、今日の国家間の争闘戦の基盤となっているのは、巨大な帝国主義的独占体間の国際的=国内的なすさまじい死闘戦、市場分割戦、合併・再編の嵐の荒れまくる情勢であるということを確認しておきたい。
簡単にいくつかの重要産業での動きをみておこう。
@自動車産業では、米国内市場をめぐって歴史上かつてない市場分割戦が生じている。日帝のトヨタ、ホンダ、日産、スズキなどの対米進出はアメリカのGM、フォード、クライスラーの足元を大きく突き崩している。逆に後者は大幅な減益となり、工場閉鎖やリストラを迫られることになった。
トヨタは06年9月に「08年に980万台」という計画を発表し、GMをぬいて世界第一位の自動車会社となることを宣言するにいたった。また06年7月には、GMと日産・ルノーとの提携交渉が大々的に発表された。これは様々な要因からひとまず不成立となったが、全世界に衝撃を与えた。
自動車産業は世界規模の産業であり、世界市場の制圧をめぐる死闘を繰り広げているが、今日最大の激戦地となっているのは中国市場である。中国の現地の自動車(「汽車」といわれる)会社との合弁形式で中国進出が行われている。中国側もこの外資導入の形態をとおして自前の技術力を獲得し、それを自国の安価な労働力と結びつけて自動車産業を確立し、国内市場のみならず世界市場にのりだすことも展望していると言われている。
A電機産業でも激しい死闘が展開されている。日帝はかつて世界のトップを走ったこともあるが、一時期敗勢をかこっていた。今日では電子機器の素材・原材料分野、例えば液晶パネルなどで盛り返している。ここでは日本のシャープや韓国のLGフィリップスやサムスン電子などが世界の先頭に立っている。これに対して06年12月、米日韓の司法当局が価格カルテルの疑いで韓国企業への調査に入った。これは明らかに米司法当局が、米帝企業の利害にそって独占体間の死闘に介入を開始したことを示している。日本のシャープなど10社にも近く行われるという。
B鉄鋼でも国際的スケールの再編と死闘が展開されつつある。06年にオランダのシタルスチール(世界最大の鉄鋼企業)がルクセンブルクのアルセロールを買収し、アルセロール・シタルを形成した。超大企業の出現である。この力の前に、脅威にかられた日本の新日鉄と韓国のポスコ、新日鉄と中国の宝鋼集団という三者の間で、資本提携の合意が一挙に進められた。また、06年12月には英鉄鋼大手コーラスがインドのタタール・スチールへの身売り合意を撤回し、ブラジルの大手CSNの買収に応ずることを決めた。すさまじい合併・買収・再編という独占体間競争の時代に突入したのだ。
C航空機産業その他ほとんどの産業分野でも、このような国際的スケールの合併・再編、市場分割戦、争闘戦が繰り広げられつつある。
D帝国主義国が他の帝国主義国などにどんどん直接投資を行うこと、とりわけ外国企業が自社株を使用して合併・吸収(M&A)を行うことが07年5月から日本でも解禁となる。日帝は実は外国資本の直接投資の形態での自由な参入をこれまで拒否してきた。これについて日本経団連はやはり依然として恐怖し、何らかの制限を加えていくことを政府に要請している。これも国際間の資本競争の現実の一局面をなしている。
労働者階級の団結こそ勝利への道
問題は、こうした動きが労働者階級にとって何を意味するかということである。
中国を始めとしたBRICs諸国という巨大な新興市場が参入する中での帝国主義間争闘戦の進行は、世界的労働市場の側面からみれば、一方で、帝国主義の前に巨大な安価な労働力市場が開かれることを意味している。他方では、その力を背景に帝国主義国の労働市場にさらにすさまじいリストラと規制緩和の嵐が吹きすさぶことを意味している。
この現実を基礎に、今や日帝を始め世界の帝国主義ブルジョア階級は、戦後革命期以来の、あるいはロシア革命とニューディール以来の、さらには19世紀以来の労働者階級の闘いが獲得してきた諸権利や様々な階級的力関係を一挙に奪いとり、工場法以前ともいうべき状況へと逆転させる動きを一斉に強めてきているのである。
重要なことは、この攻撃が帝国主義の危機=「国家・企業の危機」というイデオロギーをもって労働者階級に強制されようとしていることである。まさにこの「国際競争に勝つため」という帝国主義ブルジョアジーの論理とイデオロギーが、これからますます激しくプロレタリアートに襲いかかってくるということだ。
これに対して、国際的階級としての労働者階級は、「賃労働と資本」の利害の非和解性の原点に立ち、労働者に国境はないこと、企業防衛や祖国防衛の観点は帝国主義戦争への道を導くものでしかないことをはっきりさせて闘うことである。政府・資本が流す国際争闘戦の論理を峻拒(しゅんきょ)し、労働者の階級的団結をつくりだし、労働者階級の力で生活と権利を守り、労働者自身を資本の鉄鎖から根本的に解放するために、自ら断固として決起していくということである。まさに06年11・5集会アピールの精神で闘うことが、唯一の勝利の道である。
〔W〕 米日帝国主義の朝鮮侵略戦争突入情勢の切迫と対決しよう
帝国主義の危機の深化、帝間争闘戦の激化の中で、帝国主義侵略戦争の拡大・激化の動きはますます深まり、その速度はかつてなく速まっている。行きつくところは帝国主義世界戦争である。プロレタリア世界革命か、それとも帝国主義のもとでの世界戦争か、として問題は立てられている。
民族解放・革命戦争が中東全域に拡大
今やイラク侵略戦争におけるイラク人民の民族解放・革命戦争の発展は、アフガニスタン情勢に決定的な変化を与えている。タリバンは今やほとんど完全に復活している。決定的なメルクマールはパキスタン政府と国境地帯の武装勢力とが昨秋、和平協定に合意したことである。これはアフガニスタンでの反政府ゲリラ勢力にとって聖域が生まれつつあることを意味している。アフガニスタン侵略戦争もまた敗北と敗勢にたたき込まれる可能性が増大している。
アフガニスタンの戦争で重要なことは、これが今や米帝の戦争から米帝とEU諸帝国主義との連合の戦争へ転化していることである。イギリス・フランスのみならず、ドイツもがNATOの旗のもとで侵略戦争の戦略的担い手になってきている。今やドイツ帝国主義は侵略戦争の本格的部隊として登場しつつある。この重大性をおさえないといけない。
イランをめぐる情勢もますます激しいものとなっている。イラクでの米帝の敗北はイランの立場を強めている。国連決議をテコにしてイランに重圧を加えているが、米帝を始めとする帝国主義の、石油のために中東を支配する戦略は、反米反帝の自主独立の旗を掲げるイランの存在をフセイン同様に圧殺していく以外に結局は成り立たない。表面上のあらゆる外交術策は、このすう勢をひっくり返すものなどになりえようもない。一種の時間かせぎでしかない。
イスラエルとレバノン、パレスチナをめぐる情勢も、イスラエルによる米帝を背景としたパレスチナ解放闘争圧殺攻撃のあくどさがすべての悪の根源となっている。06年にレバノンで「敗北」したイスラエルは、パレスチナでハマス政権を承認せず、経済封鎖することで、ファタハとハマスの内戦をけしかけている。この内戦的危機の諸現象を口実としてイスラエルはハマス攻撃の戦争に突入し、それへのハマスの反撃を口実にパレスチナ(ガザ)に介入し、結局はハマスの背後のレバノンの武装勢力をたたくとして、レバノンに再侵略する計画であることは明らかである。
朝鮮戦争発動の動きは分水嶺越えた
帝国主義の危機の侵略戦争への転化の動きの中で最も重大なものは、北朝鮮スターリン主義の核実験と核保有宣言を口実とした米日帝などによる北朝鮮への侵略戦争(これは同時にあらゆる意味で朝鮮侵略戦争そのもの)の動きである。米帝はこれを、対中国戦略を含むアジアでの米帝支配の強化をかけた戦争として構えている。日帝は日帝として、日米争闘戦の激化の中で、自己の帝国主義的利害をかけてこの米帝の戦争に参戦し、自らの帝国主義的侵略戦争としてそれを戦う構えを強めている。
この場合、北朝鮮・金正日体制自身の内部崩壊や内部政変の危機が本質的に深まっている中で、中国スターリン主義が北朝鮮の核武装には反対する立場を明らかにして米帝と一定の連携をもって動いているが、いくら中国が動いても、六カ国協議自体はもはや本質的な意味をもたなくなりつつあるといえる。北朝鮮は、根本的に間違った反労働者的な政策であるとはいえ、米帝の体制転覆の重圧、戦争の重圧にスターリニスト的に対抗するには「核保有国」の立場を失うことはできない。表面上どんな合意や協力表明があっても、本質的に受け入れられないのだ。
しかもすでに二つの点で米帝の動きは分水嶺(れい)を越えている。金融制裁と国連制裁決議である。したがって世界史は朝鮮侵略戦争、第2次朝鮮戦争に向かってすでに動き出しているとみるべきなのだ。
日帝・安倍政権は「拉致」問題をふりまわしつつ、帝国主義的ナショナリズムと排外主義をあおりたてている。安倍は来たるべき朝鮮侵略戦争に向けて一切の照準を合わせて動いている。教育基本法改悪、防衛省昇格法の成立を手にした安倍は、戦争教育への社会的弁を解き放ち、9条改憲に向かって突き進もうとしている。そして北朝鮮の「拉致」や「核実験」をむしろ絶好の条件として、軍事大国化、日米同盟の枢軸化、独自の核ミサイルの確保などの方向に突き進もうとしている。
日帝にとってアジアに勢力圏を形成することは、帝国主義間争闘戦上の絶対的命題である。しかしそれは経済力のみでは不可能だ。帝国主義的侵略戦争にうってでて、勝利していくしかない。どんなに絶望的な跳躍でもするしかない。
安倍政権の改憲への突撃打ち破ろう
日帝は敗戦帝国主義の現実からの脱出を日米安保同盟をテコとした対米関係の展開をとおして図ろうとしてきたが、逆にそれは帝国主義間争闘戦と日米矛盾の激化という時代の到来の中で、日帝の脆弱点・危機点になっている。日帝はなんとしても自前の侵略戦争のできる国家へと転換しなければ、その帝国主義的利害を守りきれない。しかしそれは米帝の、アジアに地域覇権をうちたてる国家の成立を許さないという基本政策と激突する。それ以上に、憲法、とりわけ第9条という形でつくられた帝国主義戦争への階級的制動を破壊しようとすることは、労働者階級との死活をかけた決戦としてある。
さらに決定的な事柄は、日帝の15年戦争や明治以来の侵略戦争の歴史に対する総括自体が、戦後の米帝の対スターリン主義の反共同盟の形成・推進の歴史の中であいまいにされ、すりかえられてきたことである。その結果として、日帝と中国・朝鮮・アジア・太平洋諸国のプロレタリアート人民の日帝への怒りと闘いが非和解的に激化してきていることである。
こうした日帝の戦後的あり方と不可分のものとして、日帝は戦後一貫して韓国や東南アジアを始めとするアジア諸国への経済・貿易関係を強め、帝国主義的再侵略を繰り広げてきた。だが、いまだにアジアにおける勢力圏形成をなしえていない。すでに述べてきたように、今日の世界はまさにすさまじい勢力圏形成とそれをめぐる争闘戦の激化の時代を迎えている。日帝はこの絶望的現実を突破するためにはむきだしの帝国主義的軍事力とその行使をもってする以外にない。しかし、これはまさに戦後国内体制と戦後世界体制の「ベルサイユ体制」「ワイマール体制」の爆破のような本質をもつものである。
この絶望的な現状の突破のために、今や日帝ブルジョアジーの体内にはすさまじい反革命的エネルギー、帝国主義的ナショナリズム、帝国主義的排外主義が非合理性をむきだしにして噴出し始めるにいたっている。もちろん没落期の帝国主義としての日帝は、超大国・米帝との安保同盟関係を簡単に離脱できるような条件もエネルギーもない。しかし、帝国主義的矛盾の爆発は帝国主義であるかぎり無慈悲に進む。
安倍政権の基底的本質には明らかにこうした超反動的な「大日本帝国統治」的な志向性が存在する。もちろんこれは一度120パーセント完膚なきまでに破産した歴史的大反動のコースであって、絶望的政策であり本質的に脆弱である。日本の帝国主義ブルジョア階級さえ統一できないものでもある。
したがって日本のプロレタリアートは、米・朝・中・アジアのプロレタリアート人民と連帯して階級的に決起していくならば、この安倍的反動は必ず決定的に吹き飛ばすことができる。
今や基本的に、米日帝の朝鮮侵略戦争前夜の切迫した情勢に突入している。日帝の07年からの数年の動きのすべて、政治・経済・社会・イデオロギーのすべては、この米日帝の朝鮮侵略戦争、日本的には日帝の朝鮮侵略戦争をめぐる動きと一体のものとして進む。日本プロレタリアートは11・5の示した方向にそって、07年新年号でうちだした「日韓米3国労働者の国境を越えた団結で米日帝の朝鮮侵略戦争を阻止しよう」のスローガンのもと、今こそ立ち上がっていかなければならない。
結語
内外情勢は今や明白に革命的情勢への急接近の情勢となってきている。これはすさまじい戦争と反動の荒れまくる時期の到来であるが、これまでどおりには帝国主義がやっていけなくなってきているということだ。これまでのあり方の大激変の中で、労働者階級もあらゆる形で階級的覚醒(かくせい)を強めていく。帝国主義侵略戦争なども、一時的には帝国主義と権力が排外主義の嵐を利用して強大にみえても、そもそも帝国主義がもはや体制として成り立たなくなってきて一種の混乱と分裂に陥ったことを意味している。
革共同は、11・5に結集した3国の労働者や3労組共闘の闘う労働者と一体になって、戦争と改憲にむかう階級的動乱期に、労働者階級とともに闘う革命的プロレタリア党として今こそ奮起し、党勢を拡大し前進していこう。何よりも青年労働者と学生の中で始まっている革命的高揚の息吹を真っ向から受けとめ吸収して、21世紀の早期のプロレタリア革命−世界革命の達成をめざして進撃しよう。
http://www.zenshin.org/f_zenshin/f_back_no07/f2278.htm#a4_1