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http://tizu.cocolog-nifty.com/heiwa/2007/01/240__f7c5.html から転載。
第240号 歴史の転換点と日本の経験
発行者 伊豆利彦
ホームページ http://homepage2.nifty.com/tizu/
歴史の転換点と日本の経験
◇ブッシュ大統領は年頭のテレビ演説でイラクに新たに2万1000人を増派すると述べた。
asahi.com:米軍2万人増派 米大統領、イラク新戦略をテレビ演説?-?
http://www.asahi.com/international/update/0111/007.html
>2007年01月11日12時23分 ブッシュ米大統領は10日夜(日本時間11日午前)、全米向けにテレビ演説し、宗派間抗争が内戦状態にまで悪化したイラクの現状は「許容できない」との認識を示した上で、「過ちがあった点については、私に責任がある。戦略を変えなければならないのは明らかだ」と述べ、新戦略を発表した。治安回復にあたるイラク軍・警察を支援する目的で、イラク駐留米軍(現兵力約13万人余り)について、首都バグダッドに1月から段階的に投入される米陸軍5個旅団をはじめ、計約2万1000人増派する。ベトナム戦争の再来との懸念も強まっているイラクで、最後の機会にかける形だ。
◇イラク戦争の失敗を認め、治安維持のために2万1000人を増派するというのだ。主として首都バグダッドの治安維持に力を注ぎ、せめてもの手柄にしたいのだろう。これは撤兵を前提に、イラクの現政府を強化し、これに任務を委譲するための措置で、その期限を大体11月においているという。それまでにイラク政府が治安維持の任務を遂行出来るようにならなければ、それはイラク政府の責任だとも言っていた。
◇この演説を読んで何よりも心に浮かんだのは近衛文麿元首相の上奏文のことである。1945年(昭和20年)2月14日に近衛が奏上した上奏文は「敗戦は遺憾ながら最早必至なりと存候」にはじまり、軍部を抑えることで和平に導くべきであるということを主張した。これに対して天皇は「もう一度、戦果を挙げてからでないとなかなか話は難しいと思う」と否定した。
◇もし、このとき日本が平和に向っていれば、3月の東京大空襲以下の都市絨毯爆撃もヒロシマ、ナガサキの原子爆弾もまぬがれたであろう。
さらに、沖縄戦以下全線にわたる苛酷な戦争も避け得たであろう。
あの戦争の犠牲者数は最後の1年に急増したのだった。
◇戦争ははじめるのは容易だが終結するのは難しい。アメリカも兵力増強がかえって宗派対立から反米、反政府闘争へと転換し、これまでにない多数の犠牲者を出すことになるのではないかと思われる。しかし、もっともっと多数の犠牲を出さなければ、この戦争は終結することができないのであろう。
◇イラクで米軍が敗退すれば、イランやシリアの勢力が拡大し、イスラエルの危機が強まることになる。イスラエルがイランに対して核攻撃をおこなうのではないかという危惧も語られている。もし、そうなればアラブ全体がはげしい戦乱にまきこまれ、アメリカも撤退どころではなくなる。
◇朝鮮問題も中東情勢の影響を受けないわけにはいかないのだろう。アメリカにとっては、中東問題ほど緊迫感がないことは否定出来ない。それにしても、アメリカはこの問題を平和的に解決するほかはないわけで、22日から米朝会談が開かれることに期待したい。
◇アメリカの米政界の超党派の「ベーカー委員会」(イラク研究会)も、ブッシュが朝鮮とともに<悪の枢軸>と呼んで事態を悪化させたイラン・シリアと和解する方向に転換することを忠告する報告書を出している。さらにイラクのタラバニ大統領がイラク・シリアを訪問して支援を要請している。
◇事態は紛糾している。決して一筋縄ではいかないが、アメリカが長くつづく戦争で疲労困憊して、とにかく事態の終結を急がなければならなくなっていることだけは確かだと思う。
◇日本も戦争の早期終結を求めながら、途方もない泥沼に落ち込み、回復不可能な惨禍をこうむって、ようやく戦争を終結することが出来た。アメリカもまた、回復不可能な敗北を経験しなければならないのだろうか。アメリカに日本の経験を学んでもらいたいと切に希望する。
◇もし、アメリカがぼろぼろになるまで戦争をつづけて撤退することになるなら、そのあと世界はは大変な混乱に陥る。もちろん、次期大統領選挙もあり、アメリカ国民の大多数が戦争の早期終結を望んで活発な動きをしていることに期待し、アメリカ民主主義の根強さと優越性を信じたい。
◇今年はやはり例年にない暖冬なのだろう。自然の条件も人類の文明に転換を求めているようだ。社会的にも、このごろつづく異常な事件は戦後ようやく獲得したと思った平和と安定の時代がおわり、おそろしい混乱と破滅の時代がはじまろうとしていることを語っているのではないだろうか。呑気な坊やの総理大臣は<戦後体制の脱却>などと粋がっているが、<戦後体制の脱却>がどんなものかをこれから日本国民がその苦難の体験を通して思い知らされるのであろうか。
◇アメリカも日本の過去に学ばなければならぬ。日本ももちろんそうだ。<戦後体制>を脱却してどこへいこうとするのかを安倍首相は明確に示さなければならぬし、国民はそれを明確に認識せねばならぬのであろう。
◇防衛省が発足し、教育基本法は改定された。安倍首相は憲法改定に向けた猪突猛進するという。なにか足が地についていない感じだ。今年も多事だが、無力ながらも自分のできるたたかいをつづけたい。小さな声、ちいさな力も集まれば大きな声になり、力になるだろう。私はなお日本の未来に絶望することはしない。それが戦争の時代を生き、かろうじて生き残ったものの責務だと思う。
◇去年の11月、市大国文有志の会での話「敗戦がもたらしたもの」を幹事が文章化してくれた。資料もなしに話したもので、思い違いや間違いも多いと思うが、暇があればお読みいただき、参考にしていただければありがたい。
→http://homepage2.nifty.com/tizu/keireki/haisenkaraetamono.htm
◇今年も1月26日に新春平和学校を開きます。講師 浅井基文さん(広島大学平和研究所所長)朝鮮問題などを世界の視野で話していただきます。私も10分くらい閉会の辞を述べます。明日の展望のためにぜひ、ご参加ください
→http://homepage2.nifty.com/tizu/tusin/heiwagakkou.htm
◇暖冬だとはいえ、体に気をつけて、みなさん、お元気でお過ごしください。