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(回答先: 【ビデオ】元CIA分析官が証言:サダムはクルド人にガス攻撃を行なっていない 投稿者 white 日時 2007 年 1 月 09 日 10:24:27)
毒ガス使用の二枚舌疑惑(『湾岸報道に偽りあり』)
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/gulfw-12.html
『湾岸報道に偽りあり』
隠された十数年来の米軍事計画に迫る
第二章:毒ガス使用の二枚舌疑惑
「黒い水鳥」と並んで、イラク悪魔化に大きな役割を果たしたのが「毒ガス」である。
果たしてイラクは、毒ガスを「自国民の」クルド人弾圧に使用していたのであろうか。
私は、この難問への回答の一部を、以下の文中に記した『文芸春秋』(91・4)で発見し、早速、『噂の真相』(91・5)に引用した。その後に現われた材料を加えて同誌(91・11)にまとめなおし、さらに加筆したのが以下の小文である。
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次々に暴かれるデマ宣伝の真相
[中略]
ブッシュ政権の足下のアメリカでも、巨大な運動が始まっている。元司法長官のラムゼイ・クラークを中心に「国際戦争犯罪法廷のための調査委員会」が組織され、五月九日には、アメリカ政府と軍を相手取り、ブッシュ、パウエル、シュワルツコフらを「被告」とする戦争犯罪の「告訴状」を発表していた。以後、世界中の主要都市で公聴会運動を繰り広げ、最終的には、残虐兵器使用禁止の平和条約で名高いハーグで、国際戦争犯罪法廷を開く予定になっている(★場所はニューヨークに変更。一九九二年二月二十八〜二十九日の両日にわたって開廷され、告発の罪状すべてについて「有罪」が宣告された)。
[中略]
「罪状」の第二では、「誤報だと知りながら、保育器の中の数百人の乳児が殺されたという報告を、繰り返し引き合いに出した」とし、「化学兵器の使用」に関しても、「アメリカ情報部がその情報を偽りだと信じていることを知りながら……非難した」という判断を示している。
CIAプロパガンダ作成者、スコウクロフトは何者か
もちろん、この「化学兵器の使用」もしくは「毒ガス」問題の真相追及は、決してクルド人への同情を否定する発想ではない。むしろ、「アメリカはいつでもクルド人を都合のよいように利用しているだけだ」という、大国エゴ告発の一部である。
フセイン政権が「自国民のクルド人に対しても毒ガスを使用した」という趣旨の報道は、これまた総ジャーナリズムで展開された。だが、調べてみればやはりこれも、だれも裏を取っていない垂れ流し情報であった。確かにヴィデオの映像はあった。アメリカのネットがコメントをつけて流したものであるが、この問題でも、ブッシュの発言が先行していた。ブッシュは、イラクがクウェイトに侵攻した直後の昨年八月十五日、ペンタゴンでの演説でサダムをこう形容していた。
「自国の男、女と子供に対して毒ガスを用いた男( the man who has used poison gas against the men, women andchildren of his country )」
[中略]
「リンケージ」提案への狂暴な逆襲
ではなぜ、この時期、ブッシュがサダムを先のように形容し、国防総省の職員をアジる必要があったのだろうか。
「やりすぎ」の理由は、この部分に先立つ演説の文脈から明らかである。サダムが「アラブの聖戦」を宣言したから、なにがなんでもその正統性を否定する必要があったのだ。
この演説の三日前の八月十二日に、イラクが平和提案を発表したが、それにはクウェイトからの撤退と同時にパレスチナ問題の解決を求める、いわゆる「リンケージ」提案がふくまれていた。これはアメリカにとって耳が痛い話だった。だから直接の反論を避け、「アラブの聖戦」を唱えているのは「毒ガス」を自国民に対して使った「男」なのだ、という喧嘩言葉で応酬したわけである。経過からして、あまり品の良いやり方ではない。
イラクはすでに、対イラン戦争での毒ガス使用は認めている。また、イラン側に味方して反乱を起こしたクルド人を、武力によって鎮圧したことも認めている。
[中略]
問題の「自国民」への毒ガス使用事件が起きたとされているのは、一九八八年のことである。映像がその当時撮影されたものだとすれば、水鳥の場合と違って、湾岸危機発生以前から存在した素材が使われたことになる。だから、謀略だとすれば、非常に計画性が高いといえる。
そこで、今までに判明している事実関係を整理してみると、アメリカ側は少なくとも、次のような疑問点を知っていたはずなのである。
私が入手し得たかぎりの資料によると、物的証拠の分析と専門家の医学的調査に関する報告は、以下に紹介する松原久子(歴史学者、スタンフォード大学フーヴァー研究所スペシャル・スカラー)のものだけである。
第一回は『文芸春秋』(91・4)掲載の「アメリカは戦争を望んでいた」の次の部分。
「毒ガスはイラクとイランがお互いに使ったのであって、自国民(クルド族)に使用していないことは当時イラクの死者を検診したトルコの医者たちが、毒ガスの内容から証言している。それはイラン側の所有するシアン化物であった」
『イラン・イラク戦争』という元陸将補鳥井順の大著によると、イラクがイランに対して使用した毒ガスは「マスタード・ガス」と「タブン神経ガス」であり、「シアン化物」または「青酸ガス」はふくまれていない。
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http://www.jca.apc.org/~altmedka/gulfw-13.html
デマ宣伝で高名な特派員さえ、ついに沈黙
この松原説に対して反論を試みたのは、産経新聞のワシントン支局長、古森義久だけだったようである。
「論文を読んでびっくりした。……イラクのクルド族への毒ガス使用も実はイランの仕業と書くあたりはあぜんとするほかはない」(『産経』91・3・26)
だが、なんら反論の証拠も示さずに、「あぜんとする」という主観的な感想を述べるだけでは、なんの意味もなさない。逆にいうと、この古森の反論の仕方は、ワシントン駐在の「ボーン・上田賞」とやらに輝く高名なベテラン記者ですらが、まったく反証をあげ得なかったという事実を自ら立証しているようなものだ。これが裁判の公判なら、その場で鋭く反対尋問され、イチコロのボロボロである。
(★その後の現地情報によると、毒ガス関係の原資料は国務省の「機密記録」(Classified Document)として保管されており、普通のジャーナリストでは入手不可能だという。ブッシュらは肝腎の証拠をかくしたまま、いわば公開裁判抜きでサダムを無罪あつかいしたり、有罪と決めつける非難を行ったことになる)
また、「イランの仕業」という表現は、松原の主張を故意に歪めている。だれも「イランの仕業」などという悪罵を投げつけてはいないのだ。
問題となった地帯では、イラン・イラク戦争中、両軍が入り乱れて何度も戦っていた。毒ガスは風で流される。下手をすると味方まで殺してしまうという、危険な兵器なのだ。近隣の住民に被害が及ぶことは充分にありうる。
[中略]
「毒ガス」問題にもどると、喧嘩を売られた当人の松原久子は、翌月の『文芸春秋』五月号の「戦勝国アメリカよ驕るなかれ」で、さらに調査機関の名をあげて反論した。
事件当時の記録の審査に当たり、「国務省の主張」を否定した「アーミー・ウォー・カレッジ(Army War College)」は、「米軍士官学校制度の頂点に位し、参謀養成機関として厳選された米軍人のみを入れる大学であり、陸海空軍の統合参謀本部により運営されている権威ある機関」である。
「一九八八年、毒ガス死者に関する事件が二度あった。一回目はまだイランとイラクが戦争中の三月下旬、イラク国境のハラブジャ市。毒ガスでやられたクルド族は、アメリカの専門家による調査の結果、シアン化物使用の結果であったことが明らかとなった。シアン化物はイランのみ所有の毒ガスである」
「二回目は戦争の終わった八月で、北イラクのクルド族が戦争中政府に謀反を起こしたという理由で、親衛隊の復讐に会い、命からがらトルコへ逃げのびた。トルコの医者たちは患者や、病院における死者たちを詳細に点検し、毒ガスの徴候はなかったと言明した」
古森も、これには反論していないようだ。他の論者たちと大手マスコミは、沈黙を守り続けている。要するに、もともとどこも裏を取っていない報道なので、新しい反論の材料がないのだ。
だが、古森が知らぬ存ぜぬではすまないのが、当のアメリカ国内の政治的思惑である。次の事情からして、前記のような調査や審査の存在を、関係機関のメンバー、特にブッシュは、十分に知っていたはずなのである。
イラク非難決議にホワイトハウス反対
ロンドンで原著出版の『サダムの戦争』には、次のような記述がある。
「一九八八年、イラクがクルディスタンを攻撃した際、多数の民間人が毒ガスで殺されたことを契機に、制裁法案が(米議会に)提出されてかなりの支持を集めたが、ホワイトハウスの反対によって廃案となった。イラク政権による残虐行為は、ワシントンに本部を置く組織ミドル・イースト・ウォッチ委員会によっても記録されており、その信憑性は明らかであったにもかかわらず、ブッシュ政権はイラクの独裁者にたいして寛大な態度をとったのであった」
ここでの「信憑性」の根拠は、「ミドル・イースト・ウォッチ委員会によっても記録されて」いるという「事実」である。だが、この委員会は、民間のクルド支援組織である。つまり、一方の当事者側の組織であり、専門的な要素を欠いている。また、残念ながら出典の注や資料リストがないため、これ以上の吟味ができない。問題の核心は、その「記録」なるものが果たして、医学的ないし化学的な鑑定として採用し得るものなのかどうかなのだが、それを判定できないのである。
先のアーミー・ウォー・カレッジによる記録審査は、このイラク制裁法案と同時期になされており、アメリカ国務省が保持する公式記録を材料としたものである。国務省の記録は非公開だそうだが、アメリカの専門家による調査やトルコ人医師の診断は、当然、被害を訴えたクルド側の主張を踏まえて行なわれている。記録そのものが間違いか嘘だという証拠でもあるのなら別だが、それらをアーミー・ウォー・カレッジがさらに吟味しているだけに、このハードルは高い。
また、今度のアメリカの宣伝が正しいのだとすれば、さかのぼって一九八八年、アメリカ軍の権威ある機関の信用は失われることになる。それなのになぜ、軍関係者は黙っているのだろうか。先に紹介した『司令官たち』における国防長官チェイニーの「不安」の原因は、ここにあるのかもしれない。『サダムの戦争』には、このほかにも毒ガス使用に関する記述があるが、そのいずれにも、専門家による調査だという主張がない。
アメリカで原著出版の『クルド民族』では、著者自身は問題の毒ガス事件にふれていないのだが、日本語版に訳者でイラク駐在の経験を持つ前田耕一が解説を加えている。そこでは、先の制裁決議をめぐる事情が次のように説明されている。
「アメリカ上院議会は、一九八八年九月、イラクの化学兵器使用を非難し、イラクに対する経済制裁を提案した。しかしイラクとの貿易で利害関係をもつ農民との絡みなどがあり、結局実施されなかった。この制裁案には、八年間の実戦を通し軍事強国にのしあがったイラクを弱体化させようというイスラエル・ロビーストの思惑があったとも伝えられている」
この『クルド民族』の解説では、クルド人に対してイラク政府が毒ガスを使用したとする記述が、さらに詳しく展開されているが、やはり、出典は示されていない。私が前田耕一本人に確かめたところ、資料の出所は主としてクルド支援組織のニュースだという回答があり、英文の資料を提示された。だがここにも、「自国民のクルド人」に対する毒ガス使用を証明するだけの専門的鑑定はなかった。アメリカ側の「人権のための医師団」などによる調査とあるのは、すでに指摘した国務省の記録にふくまれているものだろう。一部の資料では、使用された毒ガスの種類をマスタード・ガス(イラク所有)とシアン化物(イラン所有)の両方としており、先の松原論文に照らせば、逆に、両軍入り乱れての戦闘状況を思わせるものであり、ますます証拠能力を疑わざるを得ない。また、現地の土を持ち帰って検査した例があるが、これも、現地で毒ガスが使われたことの証明とはなっても、それだけで直接的に「自国民のクルド人」への使用を証拠立てることはできない。
前田は「被害者の立場から報道するのが正しい姿勢だ」と主張する。もちろん、「被害者の立場」の重視には賛成だ。だが、いかなる立場からの情報であっても、裏は取るべきである。これが裁判ならば、味方の情報を信じて失敗したときの傷の方が大きくなる。
しかも、今度の湾岸戦争の最中にも何度か、イラク軍が毒ガスを使用したというニュースが流れており、そのすべてが誤報だった。また、残念なことだが、クルド側の情報には誤りが多かったというのも、日本の報道関係者が異口同音に認める事実だった。だから途中から、裏を取るまで報道しないように気をつけたというのだ。それなのになぜ、毒ガス問題だけがフリーパスだったのだろうか。まさかではなく、きっとそれが、アメリカ経由だったからではないだろうか。
ところがこの場合、裏づけのない情報をフルに活用しているのは、これ以前に二度もクルド人とイラク政府との対立を煽り、溝を深め、失敗すると捨て去り、今また三度目の国際謀略の犠牲にしようとしている超大国アメリカの政権なのだ。ブッシュは決して、クルド人に同情して、この事件を持ち出しているのではない。そうであれば、一九八八年当時に議会の制裁決議を支持し、今度の戦争をも未然に防ぐ努力をしていたはずである。
核戦争を覚悟の元CIA大統領
ブッシュの姿勢と対比して、「毒ガス」報道には、もう一つの重大な偏向があった。
駐日大使のアルリファイは『アラブの論理』の中で、「イスラエルの核兵器に対して、われわれはどうやって自分の身を守るのか。われわれにはその権利がある。そのために、イラクは『貧者の原爆』┘─┐化学兵器を持った」と主張し、湾岸戦争に関しては次のように述べている。
「イラクは大量破壊兵器を決して使わなかった。……ある西側の新聞は、イラクが化学兵器を使うと脅迫したと報じた。この新聞は、クェール米副大統領が核兵器の使用をほのめかした際には、急に口をつぐんでしまったが……」「皮肉にも、恐るべき気化爆弾やナパーム弾、集束爆弾、対人殺傷爆弾、スーパー爆弾といった国際的に許されていない兵器を使用したのは、他ならぬ米国とその同盟国だった」
[後略]
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