★阿修羅♪ > 戦争87 > 507.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
ならず者国家アメリカの腰巾着の日本は世界から蔑まれる
----------------------------------------------------------
http://chikyuza.net/modules/news3/article.php?storyid=70
ならず者国家 〈小出裕章〉
〈こいでひろあき:京都大学 原子炉実験所〉
(この記事は2001年9月「科学・社会・人間」78号に掲載されたものです。)
地球の誕生は46億年前、人類の誕生は400万年前といわれる。その人類は近年著しい「繁栄」を誇るようになり、1800年には10億だった地球の人口は、1930年には20億、1960年には30億、2000年には60億を超えた。その上、産業革命以降のエネルギー消費量の増加はまさに爆発的ともいえるもので、20世紀の100年間に人類が消費したエネルギーは、400万年間に人類が消費した量の6割に達する。複雑な生態系を抱えた有限な地球環境は、この人類の「繁栄」のために危機に瀕し、2000年の1年だけで50万種の生物種が絶滅に追い込まれたとの推定もある。しかし、その責任が人類全体に等しくあるわけではない。人類の内部にも著しい格差があり、膨大なエネルギーを消費してきたのは一握りの「先進国」でしかなく、アフリカ、アジア、中南米の多くの国々は未だに生命を維持するだけのエネルギーすら使えない。飢餓人口は5億を超え、「絶対的貧困」の人々は10億を超える。そしてUNICEFのデータによれば、2秒に1人の割合で子供たちが命を落としている。
したがって現在の課題には、他の生物種に対する人類の責任の問題と人類内部の格差の問題がある。そして、これらのいずれの問題とも、「先進国」と呼ばれている国々が膨大な浪費を尽くしてきたことによって引き起こされた。
去る6月17日、米国のブッシュ新政権は「国家エネルギー政策」を発表した。その「政策」は石油、石炭、原子力を含め従来からのエネルギー消費をさらに加速させるというものであった。ブッシュ政権の閣僚リストをみれば、そのすべてが石油、石炭、原子力などのエネルギー業界関係者であり、あからさまな利益の追求に、さすが米国流と感心した。
豊富な資源に恵まれ、第2次世界戦争で戦争の現場にならなかった米国は原爆開発に邁進した。日本の一般歳出が59億円(1940年)、215億円(1945年)という当時、20億ドルもの費用を単に原爆開発だけに投入して、米国は広島・長崎の原爆を作り上げるとともに、核兵器開発の主導権をとった。しかし、数年にしてソ連、英国、フランスなどが原爆開発に成功したのを受け、IAEA(国際原子力機関)を設立して核兵器材料の管理、統制を強め、さらには核拡散防止条約を作って、米・ソ・英・仏・中の5カ国による核独占体制を謀った。その上、非核保有国への核攻撃をしないという消極的安全保障すら拒否し、さらなる核軍拡を進めながら、米国の正義が世界の正義であるとして世界中に支配の手を広げた。一方、ソ連が崩壊して冷戦構造が終焉するや、今度は「ならず者国家」から米国を防衛するとの理由で、ミサイル防衛(MD)をはじめとする軍拡を進めている。朝鮮民主主義人民共和国(以下、「朝鮮」と記す)は1998年8月に人工衛星打ち上げ実験を行ったと発表したが、純粋技術的に言えば、それは大陸間弾道ミサイルにもなりうる。もちろん米国は無数の軍事用人工衛星を打ち上げ、無数の大陸間弾道ミサイルを持っている。しかし、米国はただ1発のロケットを打ち上げた朝鮮を「ならず者国家」と呼び、それを理由にさらなる軍拡を進める。また、朝鮮には寧辺に熱出力25MWの研究用ガス冷却原子炉があるが、それがプルトニウム生産目的のものだとして経済制裁を加えてきた。しかし、プルトニウムは原子炉の使用済燃料を再処理しなければ取り出せず、朝鮮にはもともと再処理施設がない。おまけに、朝鮮が仮に使用済燃料の全量を再処理して原爆を作ったとしても、最大でも50kT(広島原爆約3発分)にしかならない。米国には5000MTもの核兵器があるから、10万倍に相当する。それでも、悪いのは「ならず者国家」朝鮮で米国は正義の国だという。ちなみに、日本には巨大な原発も再処理工場もあり、すでに30トンを超える分離プルトニウムがある。また、H2ロケットをはじめ人口衛星を打ち上げる力もあるが、幸か不幸か「ならず者国家」ではないそうだ。
米国は従来から世界一のエネルギー浪費国であった。2億7000万(世界人口の4%)の人口で、世界全体が消費するエネルギーの4分の1を消費し、地球温暖化の元凶であるといわれる炭酸ガスもそれだけ放出してきた。その地球温暖化に関しては気候変動枠組み条約締約国会議(COP)が取り組みを進め、1997年12月には日本が議長国となって、炭酸ガス廃出量の多い国々に温室効果ガス削減目標を課す「京都議定書」を定めた。その当時も米国は国内産業界の反対で議定書の成立に難色を示したが、温暖化によって水没すると言われた小島諸国の切実な要求もあってようやくに成立にこぎ着けたのであった。ところがブッシュ政権になった米国は、「京都議定書」に従えば米国産業の活力が失われ、国益に反するとの立場から批准に反対。日本は、自らが議長国として定めた「京都議定書」でありながら、米国抜きの批准は実効を伴わないとの理由で最後まで米国の肩を持って抵抗。ボンで開かれていたCOP6は、大幅な後退を余儀なくされた。
新しい「国家エネルギー政策」の公表を前にチェイニー副大統領は「省エネは個々人の嗜好を縛るもので好ましくない」とコメントしたという。しかし、エアコンを24時間・365日つけっぱなしという浪費社会が地球環境を破壊してきた。そして、そのつけを払わされるのは、地球環境の破壊に責任がなく、かつ破壊された環境から身を守る力のない国々の人々、そして生き物たちである。そうした現実の前で、「個人の嗜好」と「自国の利益」を振りかざしてエネルギー過消費を加速するというのが米国である。日本の原子力業界誌「原子力eye」に、「供給力が増加し、『個人の嗜好の問題』に国が何ら関与するのを避ければ、さらにエネルギー需要は増大する。無制限的に増大する需要に合わせ、供給も無制限的に増加させていくなどという循環はあり得ない。今の米国の1人当たり消費量でさえ、世界平均がそこに近づくことすらかなわない」と書いたのは、東京電力ワシントン事務所である。
米国こそ今後「ならず者国家」として世界から嫌われ、その腰巾着の日本は世界から蔑まれることになると私は思う。
初出:「科学・社会・人間」第78号(2001年9月)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
----------------------------------------------------------