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Technobahn
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200608162241
米国の戦闘機界で特に戦闘機開発企業や現場のパイロットに大きな影響力を持つ通称「戦闘機マフィア」と呼ばれるグループが存在する。今、この戦闘機マフィアの間の中でももっとも影響力のある2名の著名人が米次期主力戦闘機のF-22ラプターは失敗作だと批判、米軍産複合体で波紋を呼んでいる。
批判の口火を切ったのはF-15、F-16、A-10の設計を担当した米国を代表する天才的戦闘機デザイナーのピエール・スプレイ氏だ。ピエール氏は米軍備計画にもっとも影響力のあるシンクタンク「米軍事情報センター(Center for Defence Information)」で行われた「F-100からF-18まで、四半世紀の戦闘機を比較する」と題された講演で過去四半世紀の戦闘機の仕様、機能、戦果や空戦テスト結果などを詳細に分析。その上で、第二次世界大戦からベトナム戦争までを通じて空中戦で喪失した65〜95%の戦闘機は、敵機の存在すら認識することなしに撃ち落されていることを指摘し、戦闘機として最も必要な要件は(優先度順で)
1.敵を先に目視できること
2.敵を上回る性能を持つこと
3.敵よりも先に攻撃できること
4.敵を迅速に打ち落とせること
だと結論付けた。更に過去四半世紀の米国の戦闘機の空中戦(ドックファイト)能力などを数値解析した上で、米国の戦闘機のドックファイト能力は朝鮮戦争当時に活躍したF-86セイバー以降、基本的に進歩はしておらず、大きな機体のサイズを持ち(相対的に目立ち)、ドックファイト能力が劣り(機体が大型な分、機動性に劣る)敵の方から先に目視される可能性の高いF-22が数で圧倒する敵機と遭遇した場合は、第二次世界大戦末に登場し、性能では他国の戦闘機を圧倒した70機のMe-262(史上最初の実用ジェット戦闘機・ドイツ空軍)が米国の2000機のP-51に対してまったく戦果を上げられずに、打ち落とされてしまったように負けてしまうだろうと論じた。
スプレイ氏のF-22批判を更にバックアップしたのが、米空軍トップガンの戦術専門誌「トップガン・ジャーナル」の編集長を務め、戦闘機の空中戦術研究の分野では第一人者となるジェームズ・スティーブンソン氏だ。スティーブンソン氏は同じく米軍事情報センターで行われた「F-22は四半世紀後にどう評価されるか」とする講演の中で、セルビアでの戦闘ではステルス戦闘機のF-117の喪失率がF-16よりも高かった。また、セルビアで撃墜された2機のF-117戦闘機は1950年代の旧式武器によって撃墜されたことなどを挙げ、優秀な戦闘機にもっとも必要な条件は敵を先に目視できることであり、ステルス性能ではない。ステルスでも敵に目視されたら終わり。来るべき戦争では再びドックファイトが主体となる。戦闘機同士の戦いはステルス性能よりドックファイト能力の優劣が勝敗を決定する、と論じた。
その上で、スティーブンソン氏も同じくドイツの70機のMe-262が米国の2000機のP-51に敗北した例を挙げて、90機のF-22を実戦配備するよりは、同じコストで調達可能となる1800 機のF-16を実戦配備した方が戦争で勝利を収めることができると結論付けている。
現場の戦闘機パイロットや開発者の間からの高い信頼を集めるこの戦闘機マフィアの2人の批判に対して、今のところ米空軍の制服組トップは沈黙を守っている。ただし、この批判を契機にして議会などを中心に再び、F-22を巡る論争が再燃する可能性もでてきている。この2人が繰り広げている戦闘機の空中戦能力に関する議論は非常に高度であまりにも専門的過ぎるため、米軍事技術専門家の中だけで行われている、しかし、何はどうあれ、F-22は高すぎるのだ。この2名は戦闘機開発と戦闘機戦術の分野の権威であるだけに議論が米議会にまで飛び火する可能性も高い。