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イスラエルとロスチャイルドの百年戦争
2005年6月22日 田中 宇
http://tanakanews.com/f0622israel.htm
イスラエルは、19世紀末に欧州を中心に世界に広がったナショナリズム(民族意識)の高揚に触発された欧州のユダヤ人たちが「自分たちも、国を持たない流浪の民である状況を脱し、ユダヤ人の国を作ろう」と考えて起こした建国運動(シオニズム)の結果、1948年に建国された。
シオニズム運動が成功したのは、イギリスで非常に強い権力を持っていたユダヤ人政商のロスチャイルド家が支援したからであり、ロスチャイルド卿がシオニズム支援のために、当時のイギリス外相のバルフォア卿に「パレスチナにユダヤ人の祖国(ホーム)を作ることを支持する」という一筆を書かせたのが「バルフォア宣言」である、というのが定説だ。
ロスチャイルド家は、イギリス産業革命に投資して巨万の富を蓄え、その後婚姻その他の人脈拡大によって、イギリス政府の中枢に入り込んで覇権を拡大維持する政策を行った。バルフォア宣言が発せられたころには、イギリスの上層部にはロスチャイルド系の人が多く、バルフォア卿もロスチャイルド家に近い人物だった。そのためバルフォア宣言は、ロスチャイルド家がお手盛りでイスラエル建国を決めたものと解釈されることが多い。
だが、私は最近「ロスチャイルドは本当にイスラエル建国を支持していたのだろうか」という疑問を抱くようになった。ロスチャイルド家に限らず、欧州諸国の政府に資金を貸し、金融などの政策立案まで担当していたユダヤ資本家の多くは、自らの存在を曖昧にし、黒幕として存在し続けることに、意義を見出していた。
それは、ユダヤ人差別への対応策という意味もさることながら、それ以上の理由がある。戦争が起こりそうになったら、敵同士である双方に金を貸したり政策を出したりして、どっちが勝っても儲かるようにするとか、一つの国の産業革命に投資して大儲けできたら、他の国でも産業革命を誘発し、そちらにも投資して儲けを増やすなど、一つの国に対してのみ忠誠を尽くすのではなく、国際的に動くことで儲けるのが、伝統的なユダヤ商人の作法としてよく見られる。
これをやるためには、それぞれの国の黒幕が誰なのか、分からないようにしておかねばならない。ばれたら両方の国から裏切り者とされてしまう。ロスチャイルド家の中には、キリスト教に改宗した人が多く、ユダヤ人であることすら自ら改変し、キリスト教社会の中に埋没し、目立たないようにネットワークを張り、その結果、イギリスの「上流階級」と「ロスチャイルド」とが、ほとんど同義語であるような状態を作り出した。
欧州のユダヤ人には、大別すると2種類の系統が存在する。一つは、16世紀のスペイン帝国の勃興に貢献した後、オランダ、イギリスへと覇権が移動するとともに、これらの覇権国に移住し、欧州各国政府の金庫番や知恵袋として機能した「スファラディ(スペイン系)」(もしくは、そこからキリスト教徒に改宗した人々)と呼ばれる商人勢力で、彼らは人口としては数万人から10数万人しかいない。これが黒幕系である。
もう一つは、8世紀に今のウクライナ周辺にあった「ハザール汗国」がユダヤ教を国教にした関係で、ユダヤ教徒となった人々の末裔で「アシュケナジ(ドイツ系)」と呼ばれ、1000万人かそれ以上の人口があり、ほとんどは貧しい農民で、ロシア革命前までロシアからウクライナにかけて住んでいた。
シオニズムは、最初に考えたのは西欧のスファラディ系の知識人だったが、それを支持した人の多くは東欧の貧しいアシュケナジ系だった。シオニズムは、パレスチナにイスラエルを建国する運動へと発展する中で、貧しいが数の多いアシュケナジ系の大衆が、ユダヤ人としての意識に目覚め、少数派の金持ちであるスファラディ系の黒幕的なあり方を批判する、という色彩をとった。シオニズムは、ユダヤ人社会の中での「革命運動」であった。
このような経緯があるので、シオニストは今も「われわれは、バルフォア宣言で約束された土地のうちの、わずかしか与えられていない」と主張している。イスラエルの国旗は、上下2本の青い線の間に、ダビデの青い星が描かれているが、この上下の線は、チグリス・ユーフラテス川とナイル川であるとされている。
つまりシオニストが主張する「約束された土地」とは、この2つの川の間にある、今のイスラエル、ヨルダン、シナイ半島(エジプト領)、シリア、レバノン、イラクの西半分までを含む「大パレスチナ」である。
1970年代に入ると、近年になって「ネオコン」と呼ばれるようになったイスラエル系の勢力が、国防総省などのアメリカ政府内で政策立案者として注目されるようになった。ネオコンがアメリカの中枢に入り込んだ経緯は、以前の記事「ネオコンの表と裏」(上下の下はこちら)に書いたとおりである。
レーガン政権では、1期目にはタカ派が強かったが、2期目には国際協調派が盛り返した。次のパパブッシュ政権では、タカ派の計略で湾岸戦争が起こったが、協調派の防戦で、イラク国内に米軍を侵攻させることは止められた。あのとき米軍がイラク領内まで深く侵入していたら、2003年から発生しているイラク占領の泥沼とイスラエル軍への依存は、1991年に起きていただろう。
次のクリントン政権は、国際金融を中心にした典型的なロスチャイルド的な政権で、アメリカが経済的に世界を支配する構造を強化することでタカ派を排除したが、1996年からの世界的な金融危機によってこの構想は崩れ、1998年ごろから米国内では再びタカ派の論調が強くなり、次のブッシュ政権では2001年の911事件を機に、完全にタカ派が支配的になった。
▼今後も続くロスチャイルドとシオニストの戦い
こうしてみると、アメリカの世界支配をめぐる揺れの根本にあるものは、従来の支配層だったロスチャイルド的な国際協調派と、それを倒してイスラエルに対する抑圧を解こうとするシオニストとの戦いであると考えられる。
国際協調派は、国連を使ってイスラエルを何度も非難しており、イスラエルは国連を全く無視している。そして、タカ派の影響力が強いブッシュ政権は、国連や国際社会を無視して動いている。これらのことからも、ロスチャイルド対シオニストの戦いが、アメリカ中枢を舞台に、今も続いていることが感じられる。
以前の記事「ネオコンは中道派の別働隊だった?」に書いたように、ネオコンは、イスラエルの回し者ではなく、国際協調派の回し者であると感じられる部分が、今もある。これは、もしかするとネオコンと呼ばれる人々の中に、イスラエル支持者のふりをした国際協調派の回し者が混じっていたのかもしれない。
[コメント]
一年前からもうシオニストやネオコンの正しい(と思える)解釈はでているのです。タルムードなんたらで大昔のことをもちだし、ロスチャイルドなどの大富豪勢力のたいこ持ちてき発言に気づくべきです。「貧乏くさいアシュケナジーユダヤやシオニストの味方をしてもとくになんないよ」などというゼニゲバ的な発想をやめましょう。ライブドアにちょうちん買いした株屋は「きっこの日記」に日本一のたいこ持ちと揶揄されるよ。