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被爆国として責任がある 核の脅威
きのうはクリスマスでした。みなさんは何を思いましたか。
世界中で、たくさんの人たちが、家族の幸せと、その幸せを奪う戦争がなくなるよう祈ったことでしょう。
原爆で多くの人が犠牲になった長崎でも、被爆者やその家族、市民らが教会で平和の祈りを捧(ささ)げました。
しかし今年は、そんな願いが踏みにじられることがありました。
アジアの東では、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、核実験まで行いました。
国連は制裁を決議し、12月には関係6カ国による協議が開かれました。
北朝鮮は核を外交の切り札にし、核放棄の交渉に応じません。協議再開のめども立たないまま、年を越します。
アジアの西でも、イランが国連の制裁決議を無視し、ウラン濃縮を続けています。隣接するイラクは内戦の危機にひんし、レバノンやパレスチナも一触即発の状態です。イランの核開発は、中東情勢をいっそう不安定にするでしょう。
冷戦終結で、抑止力としての核は不要になると期待されました。しかし、世界の現状をみると、核廃絶の取り組みは、逆に後退したと言わざるを得ません。
小国でも、核兵器さえあれば、超大国と互角に渡り合える。そんな危険な考えが広がっているからです。
北朝鮮は、その悪夢を現実にしようとしています。国際社会は何としても、無謀な企てを止めなければなりません。
もし北朝鮮が核保有国として認められたり、核を振りかざして大きな外交成果を得たりすることがあれば、それをまねようとする国が必ず現れます。
そうなれば、揺らぎかけている核拡散防止条約(NPT)体制は完全に骨抜きになってしまいます。
すでにNPTに未加盟のインドとパキスタンは核保有を表明し、イスラエルも事実上の核保有国といわれています。
友好国のイスラエルや経済関係を重視するインドのルール無視には目をつぶる米国の「二重基準」も問題です。
そもそも米国やロシアが率先して核軍縮に取り組まなければ説得力はありません。NPT体制の再構築は急務です。
唯一の被爆国である日本は何をすればいいのでしょうか。核廃絶運動の先頭に立つべきだ、というのが国民の大多数の意見だと思います。
けれども、政府の対応は、残念ながら対米関係最優先のように見えます。インドの原子力開発に協力する米国の方針を、安倍政権は容認する姿勢です。
もっと驚いたことに、安倍政権になって、政府与党幹部から日本も核保有論議が必要だという声が相次ぎました。
私たちは、核武装論議は周辺諸国に無用の警戒を招くだけでなく、戦後、築き上げてきた非核・平和国家としての日本の信用を傷つけるものだと考えます。
年末で退任する国連のアナン事務総長は、国連加盟50周年を迎えた日本にこんなメッセージを寄せました。
「国家というものは、世界で偉業を成し遂げるため核兵器を所有する必要はありません」
国際社会が日本に求めている役割はこういうことなのです。北朝鮮やイランの核問題は来年、正念場を迎えます。地球上から核の脅威をなくすため、日本は特別な責任を負っている国であることを自覚しなければなりません。
=2006/12/26付 西日本新聞朝刊=
2006年12月26日00時02分
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20061226/20061226_001.shtml