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○ホロコースト否定禁止、EU全体に拡大か 法制化の動きに波紋
欧州連合(EU)内で、ナチス・ドイツによる第2次大戦中のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)
の事実を否定したり、ナチスのシンボルである「カギ十字」を公の場で掲げたりすることを
禁止しようという動きが出ている。
一部の加盟国は「言論の自由」が制限されるとして反対姿勢を示しているほか、カギ十字を
「平和」の象徴とするヒンズー団体も猛反発しており、法整備までには紆余(うよ)曲折が
ありそうだ。
この動きは、EU議長国のドイツが主導しているもので、15日のEU会合で正式に提唱された。
ユダヤ人約600万人の命を奪ったナチスを生んだドイツでは、ホロコーストの否定発言を
したり、公の場でナチス式の敬礼をしたりすることは懲役刑(最大3年)の対象となる。
ヒトラーの著書「わが闘争」も出版禁止だ。
類似の法律は、オーストリアやベルギーなど4カ国にもある。
EUでは今月、ルーマニアなどが新規に加盟したことで欧州議会(定数785)内で新たな
極右会派が結成されたほか、ホロコーストを「神話」と語るイランのアフマディネジャド
大統領が先月、ホロコーストを検証する国際会議をテヘランで開催したことから、
ドイツはEUで明確な方針を打ち出したい考えだ。
欧州委員会のフラティニ副委員長(司法担当)もドイツに賛同。
「こうした動きは、欧州に人種差別主義者の『安息地』はないのだという警告になる」
と強調している。刑期については、各国に一任する構えだ。
加盟各国はホロコースト否定発言を厳しく非難することでは一致しているものの、英国など
3カ国は「言論の自由」が制限されるとして法導入に慎重な姿勢を崩していない。
英国では2005年、ヘンリー王子が友人宅の仮装パーティーでナチスの制服を着用し、
物議を醸したことがある。
2年前にEU議長国だったルクセンブルクは加盟国に対し、ドイツと同様の働きかけをしたが、
ベルルスコーニ・イタリア右派政権によって阻止された経緯がある。
「言論の自由」制限だけが反対の理由ではない。冷戦崩壊前、旧ソ連の衛星国だった東欧の
EU加盟国は、ナチスのシンボルだけでなく、共産主義のシンボルも禁止すべきだと主張
している。
EUのこうした動きは英国やオランダなど5カ国に拠点を持つヒンズー団体から猛反発を
招いている。同宗教にとってカギ十字は5000年も前から「平和」を象徴するもので、
団体幹部は「ヒンズー教の結婚式でカギ十字は最大の敬意が払われる。(米国の黒人差別
主義者グループ)KKKが火を付けた十字架を持ち歩くからといって、十字架を禁止する
つもりか」と憤慨している。
■ホロコースト否定禁止の動きに対するEU内の各国の立場
<法整備国>ドイツ、オーストリア、フランス、スペイン、ベルギー
<慎重国>英国、スウェーデン、デンマーク
ニュースソース:http://www.sankei.co.jp/kokusai/europe/070118/erp070118000.htm