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大新聞による自作自演の 「大政翼賛」誘導の愚劣 = 青山貞一
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col1127.html
私が小沢代表が辞任の意向を表明することを知ったのは、2007年11月4日(日)午後3時過ぎ、政策学校一新塾の入卒塾式で基調講演を終え、塾生への助言指導をしている最中だった。
独立系メディアの共同代表の池田こみちさんが私の携帯にメールを送ってきた。その場で塾生に小沢代表の辞任意向を知らせたら大きな悲鳴、続いてため息が会場をおおった。
小沢代表の辞任意向の3日前、11月2日、独立系メディアのもうひとりの共同代表、佐藤清文さんが私に読売新聞の社説につき意見を求めてきた。そう「大連立」を読売新聞の社説が呼びかけたことだ。 衆参ねじれの下で、行き詰まった政治状況の打開へ、積極的に推進すべきである。自民党総裁である福田首相が民主党の小沢代表との党首会談で、連立政権協議を提起した。いわゆる大連立である。実現すれば、日本政治に画期的な局面を開く。 だが、小沢代表は、民主党役員会での拒否の決定を福田首相に電話で伝えた。役員会の大勢が、「先の参院選の民意に反し、国民の理解を得られない」としたからだという。 これは疑問だ。 会期末を目前にしながら、法案は一本も成立していない。国益や国民生活の安定のための重要政策の推進という、政治の責任がまったく果たされていない現状こそが、国民の利益に反することをしっかりと認識すべきである。 衆院解散・総選挙で、与党が勝利し、政権を維持しても、参院で野党が過半数を占める状況は変わらない。しかも、長ければ10年近く続くと見られる。 国際社会も日本の経済・社会も大きな転換期にあって、国内の不安定な政治情勢のために、それに対応した政策の推進ができないとなれば、日本の将来は極めて危う い。 こうした事態を避けるためには、重要な政策を推進するための安定したシステムを構築しなければならない。そうした判断に立って、福田首相が「大連立」を提起したのは、極めて適切な対応だ。 小沢代表も、政治の現状への強い危機感があるからこそ、党首会談に応じたはずだ。連立協議の拒否で通るのか、ぜひ、再考してもらいたい。 民主党内には、参院選の余勢を駆って、政府・与党を追い込み、衆院解散で政権交代を目指すという主張が根強い。だが、いたずらに“対立”に走った結果、今日の政治の不毛を生んでいるということを直視すべきだ。 大連立を選択肢から排除することは、責任政党の取る姿勢ではない。 各小選挙区で自民党と民主党が競合していることを理由に、大連立を困難視する声もある。だが、これはおかしい。大連立にあっては、大政党同士が、国益や国民生活の問題の解決にどう具体的に貢献し、成果を上げるかを競うことが大事だ。その結果を総選挙で問えばよい。 大連立への試金石となるのは、インド洋で海上阻止行動に当たる多国籍軍艦船に対する海上自衛隊艦船による給油活動の早期再開だ。 その一環として、自衛隊の国際平和活動のための恒久法の制定問題も、重要なかぎとなる。
党首会談 政策実現へ「大連立」に踏み出せ
2007年11月3日読売社説
周知のように読売新聞の社説での大連立の呼びかけは2007年8月16日にもあった。
言うまでもないことだが、これら読売新聞の社説は、単にメディアの領分を超えるものである。
そもそも、このような提案であれ進言、さらにその後のシカケを誘導した大メディアの関係者に、日本近代政治史の最大の汚点といえる「大政翼賛会」をどう思っているのか、問いただしたい。
いかなる理由があろうとも「大連立」による実質「大政翼賛会」は、議会制民主主義の放棄であり破壊であるからだ。これについては、佐藤清文氏が以下の論考の中で歴史と原理を踏まえ明快に述べている。
ところで、上記の読売新聞社説が、福田・小沢会談、その後の小沢辞任意向表明劇の呼び水だったことは間違いないなどと推察していたら、11月7日の夕方、民主党両院議員懇談会の後の小沢代表の記者会見で次のような質疑が飛び出した。
記者会見で2番目に質問に立った記者は、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長の側近記者であったが、その記者は小沢氏に対し、次のように質問している。
Q 連立構想を小沢代表がもちかけた、という報道が「事実無根の中傷」であるとの発言を撤回していただきたい。報道が間違っていると言うのであれば、その経緯を小沢代表から明らかにしてほしい。
A 私は当事者の一方のはずであるが、私には取材の申し込みすらありませんでした。複数の関係者からの情報に基づいて、と書いているが私や民主党のことを含んでいない。それは公平ではないのではないか、という意味で申し上げました。
私は政治家同士で内々で話したことについてこれまで一切外部にもらしたことはないが、2カ月前だったか、さる人からお呼び出しをいただき、食事を共にしながらお話をした。
「お国のために大連立を」というたぐいの話だったが、私はまず、「われわれ民主党は、参議院選挙で国民のみなさんから大きな議席を与えて頂いた。全党、衆議院も力をあわせてがんばろう、勝てる、という雰囲気の中であります」と申し上げた。
それから「そういうたぐいの話は現実に政権を担っている人が判断する話であって、私どもからとやかく言う話ではありません」と申し上げた。
先月半ば以降、また連絡があり、「福田総理もぜひそうしたいとの考えだ。ついては、総理の代理の人と会ってくれ」という話があった。私も、むげにお断りできる相手の方ではないので、じゃあ参りますと言って指定の場所に行き、「本当に総理はそんなことを考えているのか」と質問すると、「総理もぜひ連立をしたい、ということだ」。
「では、あなたも本気か」とその総理の代理という方に質問したら、「おれも本気だ」という話でした。
総理がその気であれば、総理から直接お話をうかがうのがスジではないでしょうか、と話を返しました。
そしてあの党首会談の申し入れとなった、というのが事実であり、それが誰であり、どこであったかいうのは調べれば分かりますが、私の口からは申しません。それが事実であり、経過であります。
すでに周知の事実となっているが、仲介人は「渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長」であり、首相の代理は「森元首相」であるとされている。
大政翼賛会に通ずる「大連立」をメディアがシカケ、最終的に首相と小沢代表二人だけの会合までシナリオ化しておきながら、結果的にシカケが失敗したとたん、小沢氏やその関係者に取材もせず、一方的に読売新聞は書き放題を行い、小沢氏が辞任意向表明をした会見でメディア批判をしたら、上記のような質問を読売新聞がしているのである。
そもそも、国政の将来に係わる重要な問題、さらに国政を二分して与党と野党が闘っている問題に、自分たちの社主がしかけてたことを、小沢代表に一切取材せず、一方的に書きまくっている。挙げ句の果てに、その上、先のような質問をする記者が、はたしてジャーナリストといえるのであろうか?
この一件は、まさに読売新聞による「自作自演」である。
もちろん、その陰謀、策謀にひっかかった小沢代表の責任は重い。
だが、与党系メディアがメディアの領分を逸脱し、元首相や自民党幹部を動員して仕掛けたこと、また情報操作による世論誘導によって、小沢代表や民主党のイメージダウン、さらにいえば信用毀損、名誉毀損した罪は極めて重大であると思う。
明確なことは、これほど重大な問題に関し、当事者のひとりである小沢代表への取材、インタビューをせず、一面トップで結果的に情報操作による世論誘導となる記事を読売新聞そして毎日新聞が掲載したことである。
両新聞社は、複数の関係者から情報をえていると述べていた。が、複数の関係者とは推定するに渡辺会長ないし自民党幹部のはずである。
果たして「大連立」を仕掛けた側、それを利用しようとした側の情報だけで、この種の記事を大々的に書けるものであろうか?
さらに唖然としたのは、こともあろうか毎日新聞が以下にあるような記事を11月4日(日)の一面トップで大々的に掲載したことである。
下記の記事の8割が何の出典、根拠、ソースを示すことなく、断定的に書かれている。最後の閣僚ポストに触れる部分だけ、自民党関係者からとあっただけだ。
小沢氏は辞任意向会見で、「朝日と日経以外は...」と述べた。それ以外の筆頭は読売新聞であるが、毎日新聞が上記の記事を何ら小沢氏に取材せず一方的に、しかも断定的に書いたことは、きわめて由々しきことである。
これは私の推論だが、おそらく自民党幹部は、「大連立」を社説に書き続けている讀賣だけでなく、もう一社、新聞メディアで上記の記事を流せないか、さらにいえば野党系の論調をもつ新聞で流せないかと考え、毎日新聞に一連の信用毀損、名誉毀損に通ずる情報をリークしたのだと思う。
いずれにしても小沢氏の辞任意向会見、撤回会見で、読売新聞、毎日新聞からの取材がまったくなかったことが明確になったわけだ。
多くのメディアや評論家は、シタリ顔で小沢代表や民主党の政治的資質をミソくそに論じている。だが本来、論ずべきは、自民党の情報操作による世論誘導の手先、先兵と成り下がってきた日本の大メディアのあり方ではなかろうか?
ところで、国民の多くは、過去半世紀近く、実質的に自民党が政権を独占し、政官業癒着にもとづく既得権益を極限まで重ねてきたことに怒りを隠さない。社会保険庁問題に象徴される、いわば「官僚社会主義」による犯罪的弊害が露わになってきたことにも辟易としていた。
その結果、今夏の参議院議員選挙で民主を中心とした野党が大勝した。参院大勝から3ヶ月も経たないなかで、ブレない政治家として君臨してきた小沢代表がこともあろうか、自民党の筋書き通りの落とし穴に、ズボーと落っこちてしまったのであるが、そこには大きな呼び水があったと思える。
国民が次の衆院選挙で政権交代に大きな期待をもってみまもっていた矢先「大連立」騒動が勃発したのである。
あまり触れられていないが、私は小沢氏が、岩波書店の「世界」に論文を書いた時点で、間違いなく政府与党に利用されると直感した。
一連の会見で、小沢氏が論文にある国連中心主義の考え方にどれだけ入れ込み、信奉していることはよく分かったが、たとえ当該領域で原理主義者の小沢氏とはいえ、なぜ、あの時点であの論文を世に問うたかが気になる。
自民党幹部は、表向きこぞって小沢論文を批判したが、私はあのタイミングで唐突に「世界」に持論を展開、公表したとき、これはいわゆるフィッシングのエサになると思った。小沢氏は簡単に引っかかると感じた。
国連中心主義政策ををエサにし、福田首相がうまく話しをもちかければ、小沢氏を「大連立」に呼び込めると。もちろん、このことは国民はもとより民主党の多くにも分からなかったことである。
周知のように、過去、民主党はここ一番でドジ、敗着をすることで、あと一歩で政権交代を逃してきた。菅議員、永田議員など枚挙にいとまがない。しかし、まさか小沢氏が政権奪取直前で、政権から落ちそうになって危機感を募らせている自民党の筋書きに、マンマとひっかかってしまうとは誰も思っていなかった。
覆水盆に戻らずではあるが、大切なことは半世紀に及ぶ自民党独裁による利権構造、既得権益の継続、官僚社会主義、談合癒着型社会からの脱皮であり、何よりも消費者主権、市民、国民の生活の安定である。
その意味からすれば、「虎穴にいらずんば虎児を得ず」の猪突猛進、小沢氏が民主党幹部に何ら相談せずにひとりで虎の子を取りに行った愚はあるとしても、まさに雨降って地固まるのたとえの通り、参院大勝で浮き上がり、舞い上がっていた民主党やそれに投票した国民に、神様が気を引き締める一大機会を与えてくれたと思えばよい。