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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 15 日 14:47:49: mY9T/8MdR98ug
 

改憲は遠のいたか?

 先週のコラムで、「9条破壊を目論む者の無残な敗北によって、改憲がやや遠のいた」と書きました。
 むろん、民主党の中に、前原誠司氏ら多くの改憲論者が存在することは知っています。しかし、安倍首相惨敗によって、憲法改定を争点にすることが選挙では不利、ということを多くの与党議員は思い知ったのです。とすれば、次の衆院選では、声高に改憲を叫ぶ候補者は、与野党ともに激減するでしょう。このことを、私は「改憲がやや遠のいた」と表現したのです。

 「民主党の危険性を、むしろ覆い隠すことになる」「民主党大勝の陰で、社民党や共産党といった護憲派が退潮したことは、かえって改憲の声が高まることにならないか」「2大政党制の危うさが暴露された」という論調も聞こえます。それは、その通りだと思います。
 民主党の危なっかしさは、いまに始まったことではありません。

捩じれる思想性

 先日、あるテレビ番組で、妙な場面を見ました。
 自民党の河野太郎議員が「アメリカ議会の従軍慰安婦問題に対する決議案は、狭義の意味での強制性はなかったという安倍首相の発言や、その後の日本の議員や有名人たちによる、アメリカの新聞への従軍慰安婦は強制ではなかったという全面広告が、むしろアメリカ側の人権意識を刺激した結果、可決されてしまったようなものです」といった意味の発言をしました。
 これに対し、民主党の河村たかし議員が、例によってあのわざとらしい名古屋弁で反論したのです。
 「そんなことを言うからなめられる。日本の毅然とした態度をみせるのに、新聞広告ぐらい打たんでどうする!」(名古屋弁は知らないので意訳です)とエライ剣幕で噛みついたのです。どちらが自民党か分かりません。
 さらに、この時期にそんな広告を出したらどうなるか、その政治的な影響を考えられないような政治的センスの持ち主。政治家としては、かなり適格性が疑われます。自分では、未来の首相候補、などと言っている河村議員ですが、あの人が首相だなんて、勘弁してほしい。
 民主党は、そんな人たちをたくさん抱えています。
 つまり、現在の2大政党制は、まさにその思想性が捩じれているのです。自民党の公認を得られないから民主党から立候補する、などというのは、自らが無思想であるということを、天下に表明しているようなものです。恥ずかしくないのでしょうか。思想なき政治家、それは明らかに語義矛盾です。
 こんな「危なっかしい2大政党制」には、とても賛成できません。
 しかし、ここから脱却(この言葉、安倍さんのおかげで色あせましたね)するには、二つの道があります。

第3極は可能か

 ひとつには、よく言われることですが、第3極の政党を作ること。つまり、自民党と民主党の間に、9条を守り社会福祉と格差解消などをより明確な政策として掲げる第3の道への政党が、これからどうしても必要となってくると思うのです。共産党、社民党がまず先頭を切って統合への道を探るような動きが出ないものでしょうか。
 もし、そんなことが実現したなら、いま行き場を失っているリベラルな考えの有権者たちが、雪崩を打ってその新党派に殺到することは目に見えています。共産社民両党の獲得票数の単純な足し算などでは考えられないほどの、大量得票があるはずです。
 いわゆる「死に票」になることを恐れて、いまは仕方なしに民主党に投票しているリベラル派が、やっと死に票でない一票を行使できる、ということで本来の考え方の近いところへ戻ってくることが予想できるからです。
 今回の参院選では、比例区で社共両党の獲得票は700万票強でした。ある政治学者の計算によれば、もしこの両党が統合新党を作れば、獲得票は1000万票を超えるだろうと予測しています。
 一人区では難しいかもしれませんが、参院の複数区ではかなりの当選者も見込めるでしょう。そうなれば、今回の9条ネットの人たちや、民主党内護憲派の人たちも、同調する可能性大ではないでしょうか。
 立派な第3極政党の誕生です。
 社共両党は、このまま衰退の道を辿るより、この第3極を模索するべきではないでしょうか。

 ただ、現在の社民党、共産党では、その第3極としての統合を望むのはムリでしょう。組織統合ではさまざまな軋轢が起き、必ずと言っていいほど紛糾します。それは、組合の統合や会社合併の際などに、よく見られる現象です。
 けれど、それ以上に深刻なのは、やはり共産党の体質でしょう。
 立花隆さんも、8月7日の朝日新聞に書いていますが、共産党が「民主集中制という名の指導部による非民主的絶対指導体制を捨てないかぎり、再興の道はない」ということです。同感です。
 しかも共産党は、その共産党という名称を、絶対に変えようとしません。これでは第3極として統合することなど、やはり難しいでしょう。社民党や市民グループが、共産党という名称のもとで統合に同意するとはとても思えないからです。
 社民党も共産党も、同時に党名変更することを前提にして、協議の場につく。お互いの政策をすり合わせ、基本的合意を大切にするが、個人の自由はあくまで尊重する。指導部の絶対的命令体制はとらない。こんな話し合いが成立するでしょうか。
 多分、それしか道はありません。
 でも、やはり、ムリ、だろう、なあ。

 共産党が党名の変更をも含めて改革し、党首選挙で複数の候補者が自由な政策を掲げて競り合う、という開かれた政党になったとき、初めて他党派との協力が始まるでしょう。しかし、現在の共産党にその兆しは見えません。
 だから当分は、この考えは「夢想」でしかないでしょう。

政界再編への動き

 第2の道は、徹底的な政界再編です。
 きちんと思想と政策で政界を再編すること。
 現在、民主党の中には、そうとうに危ない人たちが入っている、と指摘しました。しかし一方では、やはり9条だけは守り抜く、と決意している議員も相当数いるのです。
 この人たちが、自民党内の護憲派や福祉政策重視派の人たちと連携し、さらに、そこに社民党や無党派リベラルも加えた新しい形で、政界を再編するのです。これは、ある程度、実現の可能性があります。
 なにしろ、安倍さんが改憲を喚けば喚くほど票は離れ、ついには大惨敗。こんな人にはついていけない、と自民党内のリベラル派が反安倍の新党結成も考えている、との情報もあります。それが引き金となって、いわゆる政界ガラガラポン(品のない言葉です!)が起きる可能性があるからです。そこから、思想や政策を基本とした、言葉本来の意味での「2大政党制」が生まれるかもしれません。 そうなれば、私たち有権者にとっては、とても分かりやすい。誰が9条を大切にし、誰が9条を変えたがっているのかが、一目瞭然になるのですから。

参院選で、改憲派激減

 そんな感じが、実は今回の参院選に現れていたようです。

 8月7日の朝日新聞が、一面で報じた記事です。

参院「改憲派」2/3割る
3年後の発議に壁

<以下に、記事を要約します>
 今回の参院選当選者のうち、改憲賛成派は48%と半数を割った。非改選をあわせた新勢力でも賛成は53%。しかも、9条だけに限れば、当選者のうち改憲賛成は26%、反対は54%。新勢力全体でも、賛成31%、反対50%だった。
これまでは、民主党では衆参を問わず6〜7割が改憲賛成派だったのが、今回の選挙当選者では改憲賛成派が29%と激減。全体でも初めて4割を割り込んだ。

 つまり、民主党の中でも9条を守ろうとするリベラル派が増えている、という図式です。これは、改憲政権を目指した安倍晋三首相の「戦後レジームからの脱却路線」が、まったくの裏目に出たということです。
 むろん、年金問題や例のバンソーコー大臣に象徴される政治とカネの問題が、与党への大逆風になったという側面は確かです。しかし、それ以上に、安倍首相の危険性に国民が気付き始めた証拠だと思うのです。
 そしてそれが、「戦後レジーム」の平和的象徴であった「憲法9条」の大事さを、再認識させる結果につながったのでしょう。その意味では皮肉にも、安倍首相は9条護憲の大いなる貢献者になってしまったわけです。
 これは皮肉ではなく、自公が政権を失うまで、安倍氏にはずっと首相の座にしがみついていてもらいたい、と私は思っています。

 私たちの一票が、ほんとうに意味ある一票になるような政治状況を、なんとか作り上げなければなりません。

(小和田志郎)

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