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与野党逆転ではじまる民主政治の夜明け テロ特措法問題 青山貞一
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col10101.html
参院の与野党大逆転は、「政治とカネ」、「社会保険庁」、「格差社会」などの政策変更を促すばかりではない。
自民党政権が勝手な恣意的な憲法9条解釈により進めてきた自衛隊の海外派遣(派兵)にも大きな政策変更をもたらす可能性がある。
◆青山貞一:なし崩しの自衛隊、多国籍軍参加
具体的に言えば、この11月に期限切れとなるテロ特措法の延長停止である。
テロ特措法延長問題に対し、民主党の小沢代表は、「今まで我々が主張した通りだ。反対したのに、賛成というわけはない」と政府案に反対する考えを表明している。
朝日新聞によれば「小沢氏は野党で過半数を制した参院の国会運営で政府・与党を揺さぶり安倍政権を早期に衆院解散・総選挙に追い込む考えで、11月1日の期限切れを前に政府が延長を目指す同改正案の審議でも攻勢をかける考えだ」とある。
これに対し、米国ブッシュ政権や自民党は以下の時事通信の記事にあるように、神経をとがらせている。
テロ特措法問題に神経とがらす=「脅威」かざして延長促す−米
時事通信 2007年8月3日
【ワシントン2日時事】米政府が11月に期限切れを迎えるテロ対策特別措置法の延長問題に神経をとがらせている。先の参院選で与党が過半数を割り、民主党が延長反対を表明したのを受けて延長の成否に不透明感が増す中、米側は国際テロ組織アルカイダの脅威を訴えるなどして延長を促していく考えだ。 「日本はテロ攻撃の潜在的な標的であり、過去にテロの被害に苦しんだこともある」−。ケーシー国務省副報道官は1日の記者会見で、日本を狙ったテロの脅威をかざし、対テロ戦争への協力継続を求めた。米側は今後、8日にワシントンでの開催を調整中の小池百合子防衛相とゲーツ国防長官の初会談などを通じ、テロ特措法延長を強く働き掛けるとみられる。
読売新聞に至っては、2007年8月3日の社説で、テロ特措法 民主党は延長反対を再考せよ(8月3日付・読売社説) と声高に民主党に再考を迫っている。
テロ対策特別措置法
平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年11月2日法律第113号)
米国ニューヨークのWTCでのいわゆる9.11を背景に2001年11月2日に成立したテロ特措法に基づき、海上自衛隊は、インド洋のガルシア等近くに、艦艇2隻を派遣し、米国を中心に11カ国の艦艇に給油活動を行ってきた。同法が延長されなければ、11月1日の期限切れをもって撤退を迫られる。政府は、秋の臨時国会で期限を延長する予定である。
だが、共産党、社民党はもとより、民主党もテロ特別措置法案については今まで3回の法延長に反対してきた経緯がある。
周知のように民主党の若手の中には、自民党よりも右よりの議員がいるが、小沢氏が民主党本部で記者団に対し「(これまで)反対してきたのにここで賛成するわけない」と、テロ特措法の延長反対を言い放っている。
おそらくその背景には、参議院選挙で与野党逆転した民主党の小沢代表が、この秋の臨時国会を衆院戦をターゲットとした与野党攻防の大きな山場とていることがある。もちろん、参院選での歴史的な与野党大逆転のうねりを衆院選まで持続させようという考えもあるだろう。
というのも、1998年のいわゆる金融国会で、民主党はすんでのところで政権を奪取できる状態にいたが、金融危機問題を政局にしないという方針を取ったため、結局、自民党の政権存続となるなど民主党の歴史に残る汚点の経験があるからである。
小沢代表のなかには、今やマスコミまでが大合唱している「米国との関係悪化」や「政局化による国会の混乱」といった政権与党、自民党の決まり文句には乗らない、強い政権奪取への意志が作用しているものと思われる。
....
上記の小沢代表の戦略は、単に昔から反対してきたからここで賛成するわけにはゆかない、という安易なものではなく、周知のように米国連邦議会におけるこの間の情勢変化を見て取ったものである。
すなわち、米国ではブッシュ政権による国際世論を押し切ってのイラク戦争が結果的に大量破壊兵器が見つからず、石油エネルギーを収奪する新たな植民地戦争であることが明らかになったことがある。実のところ、これはアフガニスタン戦争でも同じである。
私は以前、エネルギー権益から見たアフガン戦争 という論文を書いたが、まさにテロ特措法の直接的な対象となったアフガン戦争自体、きわめて米国、いやブッシュ政権の権益、利権に満ちたものである。
◆<青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争
世界、岩波書店
もとより、アフガン戦争、イラク戦争では、膨大な数の一般市民が殺傷されており、米兵もその例外でない。
米国の連邦では、現在は上院、下院とも民主党が多数を占めており、その民主党は下院のペロシ議長はじめ多くの議員が予算計画にも大幅修正を加えるなど中東での米国の戦争継続に反対している。
つまり、情勢は大きく変わっており、ステレオタイプ的な「米国との関係悪化」という論評は、それらの情勢変化を見誤っているという認識も小沢代表にあると思われる。
これはテロ対策特措法だけでなく、イラク特措法についても妥当するだろう。自民党はなし崩し的な自衛隊の海外派遣(派兵)をしてきたことこそ問題であるという認識である。
さらに言えば、今回の参院選で公明党は政権末期の自民党の煽りを受け、大幅に当選議員数を減らした。もともと公明党は平和と福祉、環境の党をシンボルとしてきた歴史的経緯がある。
ひょっとすると、今後、公明党が自民党と距離を置く可能性がないとはいえない。とくに改憲はじめテロ対策特措法やイラク特措法などは、公明党の理念、政策と相容れない部分がおおいはずだ。
小沢代表はおそらく、その辺も眼中に入れているはずである。
いずれにしても、レームダック化しているブッシュ政権下の米国に、日本政府が日米関係の悪化などという決まり文句で追随する必要はない。ブッシュ以降を見通した戦略と戦術が不可欠であるはずだ。
ここでも旧態依然の自民党やそのまつわりの御用メディア、御用学者の認識はおそまつである。