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(回答先: Re: テスト 投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 6 月 30 日 16:38:23)
この提案を支持する人々の主張によれば、代替燃料を利用することで、地球上の貴重な天然資源の枯渇を回避できる。生産国はエネルギー自立を高めることができ、農民にも明るい展望が開かれる。とりわけ開発途上国の農民にとってはそうだ。ヨーロッパでも、共通農業政策によって「凍結」された農地(EUは食糧作物以外の農地を休耕地にすることを受け入れている)を活用できるようになる。
反対派のうち、「栄養不足の南の大衆」の名のもとに、真っ先に異論を唱えた国家首脳がカストロ議長である。彼は3月9日にこう述べた。「二者択一が眼前の事実となっている。土地を食糧の生産に充てるのか、それともバイオ燃料の製造に充てるのか」。先進諸国には、その消費水準からして、バイオ燃料向けに転換するほど農地の余裕がない。そこで、南の国々に安価なエネルギーを供給してもらおうという発想が生まれている。だが、それらの国々はいかなる代償を払うことになるのか。
5月9日、エネルギー分野を担当する国連の機関とプログラムからなる組織「国連エネルギー」が、「代替可能エネルギー:政策決定者のための枠組み」と題した文書を発表した。この文書では、バイオエネルギーのシステムが、貧困の削減、エネルギーへのアクセス、農村の開発やインフラといった面で、多くの利点をもたらすことが強調されている。しかし、その一方で、「この分野の開発に関する決定を下し、いかなる技術、政策、投資戦略を採用するかを決定する前に、細心の注意を払って、バイオエネルギーの経済的、社会的影響を評価する必要がある」との危惧も示されているのだ。[フランス語版編集部、訳・三浦礼恒]
バイオ燃料。この単語から思い浮かぶのは、再生可能でクリーンな無尽蔵のエネルギー、技術への信頼感、持続可能な環境保護と両立する力強い進歩、といった実に美しいイメージである。石油生産のピークから、まだ輪郭の見えない再生可能エネルギー経済へと、緩やかに移行するための次のステップは、トウモロコシ、サトウキビ、大豆、その他の作物を原料とする燃料だと、産業界、政治家、世界銀行、国連、さらには気候変動に関する政府間パネル(IPCC)までもが言う。それもひとえに、この単語のおかげである。
野心的なプログラムが打ち上げられている。ヨーロッパは、2010年には道路輸送の燃料需要の5.75%、2020年には20%をバイオマス燃料に切り替える予定だ。米国は、年間350億ガロン(約1300億リットル) という目標を掲げている。これらの目標は、北半球工業国の農業生産力をはるかに超える。ヨーロッパでは、耕作可能地の70%を用いなければならず、米国では、国内のトウモロコシと大豆の収穫をすべてエタノールとバイオディーゼルへの加工に回す必要がある。農地の用途をそんなふうに転換すれば、北の国々の食糧供給システムはめちゃくちゃになってしまう。そこで、経済協力開発機構(OECD)諸国は自国の需要を満たすために、南半球に目をつけたのだ。
インドネシアとマレーシアは、アブラヤシのプランテーションを急ピッチで拡大し、ヨーロッパのバイオディーゼル市場で20%のシェア獲得を目指している。ブラジルでは、燃料用作物の耕地面積が、英国、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの4カ国を合わせた規模に達しており、政府はさらにサトウキビの作付を5倍に増やすことを計画している。ブラジルの狙いは、2025年までに世界のガソリン消費の10%をエタノールに切り替えさせることにある。
アグリ燃料業界では、資本投下と事業集中が驚くべき速さで進んでいる。この3年間で、ベンチャー投資は8倍に伸びた。BP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)がカリフォルニア大学に5億ドルの助成金を出した例のように、民間資金が公的研究機関にどっと流れ込んでいる。石油や穀物、自動車や遺伝子工学の大手企業は、強力な提携関係を結びつつある。たとえばアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)とモンサント、シェヴロンとフォルクスワーゲン、BPとデュポン、トヨタなどだ。これらの多国籍企業は、我々の食糧および燃料の供給システムに関連する部門において、研究、生産、加工、流通の事業集中を進めている。
こうした現状からしても、時流に飛びつく前にしなければならないことがある。アグリ燃料への移行という幻想の解体である。
アグリ燃料の推進派は、生態学的に劣化した土地を農地にすれば、環境の改良につながると主張する。ブラジル政府が合計2億ヘクタール規模の熱帯乾燥林、草原、湿地の土地区分を農地用「劣化地」に変更したのも、そうした考えに基づくものだろう(5)。この措置によって区分変更されたマタ・アトランティカ、セラード、パンタナール地方の土地は、実際には、多様な生物の見られる生態系であり、先住民や貧しい農民が暮らし、粗放的な育牛が行なわれている地域である。
そこにアグリ燃料用作物を導入すれば、これらの住人コミュニティが、アマゾン川流域の「農作限界ライン」へと追い立てられることにしかならないだろう。アマゾン川流域は、伐採の方法が破壊的なことで知れわたっている。すでにブラジルのアグリ燃料の40%は、大豆から作られているのだ。米国航空宇宙局(NASA)によると、大豆相場が上昇すればするほど、アマゾン川流域の熱帯雨林の破壊が進行する。破壊は現在、年間32万5000ヘクタールのペースで進んでいる。
インドネシアの場合、森林減少の最大の原因は、「森林破壊ディーゼル」の異名を持つバイオディーゼルの原料たるアブラヤシのプランテーションである。プランテーションの面積は、2020年頃には現在の3倍の1650万ヘクタール(イングランドとウェールズを合わせた面積に相当)に達すると予想される。つまり森林面積の98%が失われることになる(6)。世界最大のパーム油生産国である隣国のマレーシアでは、熱帯林の87%がすでに失われ、現在も年間7%のペースで伐採が続いている。
推進派は、アグリ燃料は今のところ食糧作物から作られているが、近いうちに成長の早い樹木類やスイッチグラス(1.8メートルもの高さになるイネ科の植物)など、もっと環境にやさしい植物から作られるようになると言って、懐疑派を安心させようとする。第1世代のアグリ燃料を受け入れやすくするための説明だ。
しかし、どの作物を燃料に加工するかということは本質的な問題ではない。野生の植物を用いたところで「自然環境に刻まれる足跡」が減るわけではない。商業栽培されることによって、その生態が変わってしまうからだ。集約的に栽培されることで、野生植物の生息地は垣や繁みから耕地に移る。それが環境に影響を与えることは言うまでもない。
産業界は、セルロースが多く、容易に糖質に分解できる遺伝子組み換え植物、なかでも成長の早い樹木類の生産を目指している。遺伝子組み換え作物が交雑しやすいことがすでに証明されている以上、大規模な遺伝子汚染が発生する可能性が高い。
温暖化の最悪の影響の回避につながる技術は、今後5年から8年以内に大規模な商用化にこぎつけることが必須である。セルロース由来のエタノールにその見通しはほとんどない。二酸化炭素ガス排出量の削減につながるとは、今のところ証明されていないからだ(13)。つまりアグリ燃料産業は、何かしら奇跡に期待しているということだ。
国際エネルギー機関(IEA)は、今後23年のうちに世界で1億4700万トンのアグリ燃料が生産されると予測している(14)。これほどの規模の生産になれば、大量の二酸化炭素と亜酸化窒素が排出され、土壌浸食が進み、20億トン以上の廃水が出ることになる。意外に思えるかもしれないが、これだけの生産があったとしても、世界の石油需要の年増分(現時点で推定1億3600万トン)を補う程度にしかならないのだ。それで割に合うものだろうか。
ところが穀物大手の場合は、それでしっかり割に合う。アグリビジネスの中心は、ADM、カーギル、ブンゲといった穀物大手である。その周りに、これも大手企業である原料加工業者と流通業者がおり、それらがさらに、一方ではスーパーマーケットチェーン、他方では農化学会社、種苗会社、農機会社と結びついている。食料品の価格が5ドルの場合、そのうち4ドルがこれらの企業群の取り分となる。だが、しばらく前から、この産業の生産部門は「退縮」に悩まされている。投下(化学肥料、遺伝子工学、機械化)を増やしても、農業生産性が上昇しないという現象である。アグリビジネス企業群の支出は増えるのに収入は減っていく。
アグリ燃料は、この退縮現象に対する完璧な回答である。補助金を受けられるし、衰退の途上にある石油とは対照的な成長産業である。そして、食品産業およびエネルギー産業の最強企業への事業集中を加速させる。
残念ながら、アグリ燃料への移行には、事の始めから欠点が存在する。土地、水、資源を、燃料と食糧が奪い合うことになるのだ。さらにアグリ燃料は、究極的にはアグリ燃料自体の生産に用いられるようになるだろう。この命題は、熱力学の観点からすれば悲劇的である。アグリ燃料はまた、分限を超えた生活へと我々を駆り立てる。「再生可能」とは、「無限」という意味ではない。作物を再び植えることは可能でも、土地、水、栄養素はあくまで有限である。
バイオ燃料の真のアピールポイントは、石油を基盤とする経済モデルを引き延ばすことにある。あと1兆バレルほどとされる石油の世界埋蔵量からして、石油相場が1バレル100ドルに達する日も遠くない(15)。石油相場の上昇につれて、エタノールは原価が上がるが、それでもなお競争力は維持される。ここにこそ、第2世代アグリ燃料の矛盾がある。石油相場の上昇につれて、第1世代のアグリ燃料の利益率が上がるため、第2世代に向けた開発投資の意欲がそがれるからだ。石油相場が1バレル80ドルになれば、エタノール生産者は1ブッシェルのトウモロコシに5ドル以上でも出すだろう。そうなればトウモロコシはサトウキビとさえ張り合えるようになる。世界的なエネルギー危機は、食品企業とエネルギー企業のふところに、80兆から100兆ドルもの大金をもたらす可能性を秘めている。「過消費」の習慣を改めようという掛け声が聞かれなくても、何も驚くことはない。
アグリ燃料への移行は不可避のことではない。地元に根ざし、エネルギー効率もよく、住民の需要を中心に据えた別の解決法が動き出し、成功を収めている例は数多い。それらは環境を破壊することも、生活の糧を奪うこともなしに、食糧とエネルギーを生み出そうとするものだ。
米国には、バイオディーゼルを生産する数十の小規模の地域組合がある。リサイクル植物油を原料にしているところが多い。中西部のエタノール生産者組合の過半数は(今のところ)地域の農民によって営まれている。ミネソタ州のエタノール精製所の4分の3も、同様に地域農民がオーナーであり、高額の補助金を受けている。
熱帯の国々には太陽も、雨も、耕作可能地も自国より豊富にあるという理由だけで、北の国々が南の国々に、自分たちの過消費のツケを回すのは許されることではない。
(1) George Monbiot, << If we want to save the planet, we need a five-year freeze on biofuels >>, The Guardian, London, 27 March 2007.
(2) The Washington Post, 25 March 2007.
(3) Miguel Altieri and Elizabeth Bravo, << The ecological and social tragedy of biofuels >>, 1 January 2007, http://www.foodfirst.org
(4) The Ecologist, London, May 2007.
(5) << Plano Nacional de Agroenergia 2006-2011 >>, in Camila Moreno, << Agroenergia X soberania alimentar : A questao agraria do seculo XXI >>, Brazil, 2006.
(6) The Ecologist, ibid.
(7) Annie Dufey, << International trade in biofuels : Good for development ? And good for environment ? >>, International Institute for Environment and Development, London, 2006.
(8) Elizabeth Bravo, << Biocombustibles, cutlivos energeticos y soberania alimentaria en America Latina : Encendiendo el debate sobre biocomustibles >>, Accion Ecologica, Quito (Ecuador), 2006.
(9) 北米自由貿易協定(NAFTA)にはカナダ、米国、メキシコが加盟している。
(10) NAFTAの発効以来、メキシコでは、人口の5分の1の就労先となっていた農業部門で130万人が失業者となった。
(11) Silvia Ribeiro, ALAI-Amlatina, Quito, 17 May 2007, http://alainet.org
(12) C・フォード・ランゲ、ベンジャミン・セナウアー「エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか」(『フォーリン・アフェアーズ』日本語版2007年5月号、『論座』同年6月号)。
(13) セルロース由来のエタノールを環境にやさしい持続的な製品にするためには、既存技術を改良するだけでは十分ではない。セルロース、ヘミセルロース、リグニンの経済的かつ効率的な分解を実現できるような、植物生理学分野のブレークスルーが必要になる。
(14) http://www.iea.org/Textbase/subjectqueries/index.asp
(15) Caroline Lucas (ed.), << Fuelling a food crisis : The impact of peak oil on food security >>, The Greens/European Free Alliance, European Parliament, December 2006.
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2007年6月号)
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