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昨日までの3日間、永田町徒然草に『月刊日本』6月号に掲載された「自公“合体”政権批判(3)」を紹介した関係で、本文の方ははっきりいって手抜きであったことを告白しなければならない。しかし、この3日間にひょっとすると安倍内閣の命取りになる重要な出来事があった。今日は3日ぶりに本格的に書き下ろしたものである。
去る5月26・27日(土・日)に、いくつかの新聞社が世論調査をやった。その世論調査でいずれも安倍内閣の支持率が急落した。マスコミ各社の世論調査で、おおむね支持が不支持を上回るところまで安倍内閣の支持率は回復していた。しかし、再び不支持が支持を上回るようになってしまったのである。これは、なんといっても5000万件もの「消えた年金記録」問題が原因であろう。国民投票法の強行成立、在日米軍再編促進法、集団自衛隊得権に関する有識者懇談会の発足などでは、あまり支持率が落ちなかった。だが“お金”のこととなると、このように一挙に10%前後も支持率が急落するのである。私としては、この辺のところも国民からちょっと考えてもらいたいところではある。
支持率が急落したところに、松岡農林水産大臣の自殺である。昨日までの3日間、報道はこの話題をこれでもかこれでもかと報じた。これでは急落した支持率はもっと下がるだろうという見方が多い。自民党内には、危機感や焦燥感が出ているという。私も松岡氏の自殺がプラス要因になるとは思わないが、野党が考えるほど単純ではないとも思っている。内閣支持率というのは風のようなものである。しばらく順風が吹いていたと思って安心していると思わぬことが原因で急に強い逆風が吹くのである。内閣支持率というのは、本来そんなものなのである。野党は逆風は利用しなければならないが、逆風まかせでは私がよく使う“吹く風まかせのグライダー”政党だ。野党は逆風を期待しているのではなく、それを吹かせる努力をいつもしていなければならないのだ。
安倍首相は松岡氏の自殺に関して致命的な発言をしてしまった。松岡氏が自殺をした28日夕刻の次のような発言である。
「ご本人の名誉のために申し上げておくが、『緑資源機構』に関して捜査当局が松岡農水相や関係者の取り調べを行っていたという事実もないし、これから取り調べを行う予定もないという発言があったと聞いている」
おかしなことを前後の脈絡もなく場違いのところでいうなぁ、と私も思った。しかし、次に引用するように総理大臣の指揮権発動であるというところまで思いは至らなかった。さすがは立花隆氏である。立花氏はやはり第一級のジャーナリストである。
『なぜこの発言がとんでもないのかといえば、これが、総理大臣による事実上の指揮権発動に近い発言と感じられるからだ。なぜこれが事実上の指揮権発動になるのかといえば、この発言が明らかにしていることは、官邸(安倍首相本人かその意を体した周辺の人物)が、(緑資源機構問題に関し)捜査当局に対して、誰と誰を取り調べたのかを問い合わせ、これから誰を取り調べるつもりであるのかを問い合わせたということである。
政治世界では絶対の禁句
問い合わせにあたって、「誰と誰を取り調べろ(あるいは取り調べるな)」という発言があれば、それは指揮権発動そのものになるが、そこまで露骨なことをいわなくても、現に捜査が進行中の個別案件について、官邸(筋)からこのような問い合わせがあれば、それは現場では事実上の指揮権発動と受け取られてしまうということである。だから、これまでどのような政権担当者も、このような露骨なものいいをした人は一人もいない。指揮権発動のにおいが少しでもするような発言は、日本の政治世界では絶対の禁句なのである。
安倍首相はあるいは、事実問題としては、このような露骨な問い合わせをしなかったのかもしれない。そして、このようなコメントを記者団に発表するだけで、同じような効果が発揮できると考えて、こういうものいいをしたのかもしれない。新聞報道によると、検察当局者の側からも、この安倍発言にそった内容の発言があったと伝えられている。問題はその前後関係である。検察発言が安倍発言を受けてのものなのか、安倍発言が検察発言を受けてのものなのか、あるいは両者全く無関係なのかである。
不自然な検察関係者のコメント
念のためにいっておけば、一般に、このようなこと(事件の容疑者の自殺など)が起きた場合、検察関係者が、
「実は○○さんには××の疑いがあったので周辺の取調べを開始しておりました」
とか、
「近く調べる予定でした」
などとコメントすることは、たとえそれが事実であっても絶対にない。だから、このような検察発言(捜査予定なしの発言)があったとしても、それは安倍発言の妥当性をいささかでも保証するものではない。安倍発言はそれ自体が(現に進行中の事件の特定被疑者についての見通しを総理大臣が語るということそれ自体が)不穏当なのだ。事実関係がいずれであるにしろ、このような発言をするということそれ自体において、この人は総理大臣という職務の持つ重さを十分に理解していない人というべきだろう。』
少し長い引用となったが、nikke BP net に連載されている立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第109回 松岡氏の遺書に隠された秘密 消えた「政治とカネ」の真相 (2007年5月29日掲載)の「安倍首相の問題発言」項以下で立花氏が述べていることである。鋭い評論とは、こういうものをいうのである。昨日安倍首相と小沢民主党党首の党首討論があったようだ(残念なが私はこれをテレビで観ることはできなかった)が、ニュースをみる限り小沢氏はこの問題を追及していないようである。それはまあいい。民主党をはじめとする野党は、今後あらゆる場でこの問題を追及すべきである。
政権を責める場合は、政権の中枢すなわち首相そのものをターゲットにしなければ政権を倒すことなどそう簡単にはできない。75%の支持率を誇った細川非自民連立内閣を倒すには、細川首相の1億円疑惑を追及するしかないと思い、私はその先頭に立った。4ヶ月間その追及をすることは私にとっても辛いことであったが、追及を受けた細川首相にはもっと辛かったのだろう。私が細川首相の1億円疑惑の口火を切ったのは、1993年(平成5年)12月1日の衆議院予算委員会であった。細川首相が辞任を表明したのが、翌年の4月8日である。この間私は細川氏に関することを調査するためにありとあらゆる人々とあった。そういう地道な努力をしていると、思わぬところから貴重な情報が集まってくるのである。
民主党の人材不足は、いまさらここで私がいう必要はあるまい。残念ながらこれはいまや国民の共通した認識である。しかし、わが国に優秀な人士がいない訳ではない。民主党は、そういう党外の人々の智慧や経験を借りなければならないのである。率直にいわせてもらうが、民主党をはじめとする野党にはそういう謙虚さがないような気がする。自民党が野党になったとき、私たちは党外の多くの人士に頭を垂れて会った。そういう姿勢や努力をみて、いろいろな人が自民党に改めて力を貸してくれたのである。民主党は参議院で自公与党を過半数割れさせるといっている。これは口でいうほど簡単なことではない。風だけを頼りにしていると東京都知事選と同じになる可能性が高い。今後の民主党の努力を注視しなければならない。
それにしても自民党はつくづく馬鹿な政党になってしまったものである。昨日また“消えた年金”救済法案を強行採決した。今日河野衆議院議長の斡旋で、労働厚生委員会で採決の確認をした上で、本会議にかけるという。委員会で強行採決がなされた場合、採決があったことを確認するということが話題になることはあったが、これはあまり前例がないような気がする。だから自民党としては採決の確認を呑んだのだから大幅に譲歩したと考えているのだろう。だが、そんなことは国会内のどうでもいい駆け引きにすぎない。ただでさえ怒っている国民は、自民党は何を考えているのだろうかと思うだけである。こういうことを“火に油を注ぐ”というのだ。こんな簡単なことが分からなくなっているのだから、“馬鹿な政党”といったのだ。まあ、どうでもいいけどね。自業自得なのだから。
それでは、また明日。