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月刊チャージャー5月号
【調査】言いたい事を言ってくれ!
業界別覆面座談会 第18回 『小学校教員』が心の底からSOS!
http://promotion.yahoo.co.jp/charger/200805/contents01/vol18.php
いろいろ不祥事が目立つ最近の小学校。報道では先生の不始末ばかりが目立つけど「このままじゃ先生なんていなくなる」といった悲鳴に近い複数の声が編集部に届いたのだ。いろいろとぶちまけたい。でも、先生同士って意外に横の繋がりがあるから、ほかの先生と顔を合わせて話すのは難しい。ってことで、別々の場所で二人の小学校教員が思いの丈をぶちまけた覆面インタビューを再構成。題して「時間差覆面座談会」とすることにした。先生たちの辛〜い内幕。聞いてみようじゃないですか。
小学校の先生って、何がそんなに辛いんですか?
ウサギ先生:小学校教員になって10年以上の女性。OL時代に子どものスポーツを指導する機会があり、子どもたちの感性を伸ばす仕事の面白さに目覚めて教員になった。でも、年々厳しさを増す現実に失望を深めているところ。
カエル先生:20歳代の男性教師。小学校6年生時代の恩師への憧れから、小学校教員を目指す。一度郷里で普通の会社に就職したが、3年前に首都圏の採用試験に合格して晴れて先生に。ますます「バカ親」が増えていく現状を憂慮している。
ウサギ先生 いろいろあるけど、根本的におかしいのは忙しすぎるのよ。クラス編成がある春休みはとくに忙しいから、本当はこんなインタビューに答えてる場合じゃないんだけどね。
カエル先生 終業式の日に一応の内示はあるけど、正式にクラス編成が決まるのは4月1日。そこから一週間で生徒を迎える準備をするんです。出席簿や健康診断票などの膨大な書類に生徒たちの名前のスタンプを押したり、教科書の手配をしたり。雑務に追われていくら時間があっても足りないくらい。教科を指導する準備もしなきゃいけないし。
ウサギ先生 そもそも、小学校っていう労働環境が前時代的でおかしいのよね。ちょっと前まではワープロやパソコンでプリントを作ると「手書きで印刷しなさい」とか言われてたし。
カエル先生 未だに職員室にパソコンが3台しかないなんて学校もあるようですよ。全部がそうとは言わないけど、ワープロやコピーもなかった時代のやり方や習慣が、工夫されないままに残っているところがあるんです。
ウサギ先生 合理化を提案しても無視されるしね。私は教師になる前に普通の会社でOLをしていた経験があるんだけど、世間の常識からかけ離れたところがあるわ。教頭が半日コピー機に張り付いて書類を作ってたりしてさ。教頭といえば管理職でしょ。一般企業ではあり得ない。
カエル先生 私も教師の前に普通の会社で働いていました。たしかに、時間感覚は一般企業ではあり得ないって感じますね。給食の時間が休憩時間扱いにされてたりして。休憩のはずなのに、教室を抜け出して煙草を吸いにいったりすると「給食指導をちゃんとやれ」って怒られる。理不尽ですよね。
ウサギ先生 学期は始まっても雑務が忙しすぎて、休み時間に校庭で生徒と遊ぶなんてことができなくなってきた。小学生にとって、大事な時間だと思うのに。
カエル先生 夏休みだって今はほとんど休めない。毎年、年休が空しく消えていくばかりですよ。それなのに、世間の親たちは「先生は休みがいっぱいあっていいわね」なんて言う。なにより、教師を舐めきった親が増えているのが切ないですね。
●次のページは、「モンスター・ペアレンツに遭遇したことは?」
モンスター・ペアレンツに遭遇したことは?
ウサギ先生 私はまさに去年すごく苦しんだばかりなの。今年度は異動になって、その学校から離れられてホッとしているところなんだけど。学校側も、異動の予定がある教師に問題のある子どもやクラスを担当させたりするのよね。
Charger うひゃ、露骨ですね。去年、何があったんですか?
ウサギ先生 女のコに消しゴムをぶつけられて、暴力を振るった男の子に「人をぶっちゃいけません」って指導したの。そうしたらその子の父親が「やられたらやり返せっていうのが俺の指導方針だ」って怒鳴り込んできた。いろいろと話し合ったけど解決なんてしないわよね、そういう父親なんだもの。結局「あなたは今年だけの付き合いだから」と説得されて、私が謝罪させられちゃった。
カエル先生 ああ、子どものウソを真に受けて怒鳴り込んでくる親はいますね。以前、子どもが500円を盗む事件があったんです。親は子どもに「盗ってないわよね」と確認して、子どもがうなずくと自信満々で「そもそも500円ぽっちで泥棒扱いするなんてひどすぎる」と怒ってくる。その後、結局その子が盗んだことを白状しても、盗んだ相手にも私たちにもちゃんとした謝罪はありませんでした。お金は返したようですけど。
ウサギ先生 そういう親に育てられる子は、不幸としか言いようがないわよね。困った親って、自分の子どもが得すればそれでいいって思ってる。小学校でいろんな経験を積んで大人になる準備をしなくちゃいけない時期なのに、親が何でも先回りして解決しちゃおうとするから、子どもはどんどん指示待ち人間になっていくんだわ。
カエル先生 子どもに嫌われたくないと、親が怯えているようにさえ感じます。褒めて伸ばす指導法があることもわかるけど、褒められるだけじゃ子どもは勘違いしてしまう。最近の学校はバカ親にまで事なかれ主義でペコペコしちゃうから、状況はますます悪くなっていますよね。何か問題が起きた時、本当は子ども自身に「なぜいけないのか」を考えさせるのが一番大切なはずなんです。でも、最近の学校でそういう指導はほとんどできなくなっているんです。
●次のページは、「体罰ってどう思います?」
体罰ってどう思います?
カエル先生 たとえば、教室で騒いでいる時の小学生、とくに低学年のうちはほとんどサルと同じです。いくら冷静に言い聞かせようとしても、言葉が脳まで届かない。体罰は必要だと思いますね。かといって怒鳴っただけでも「言葉の暴力だ」とクレームをつけてくる親がいる。もう八方塞がりです。
ウサギ先生 実際、私は体罰でもめたことがあるのよね。掃除の時間にほうきで友達をぶった子に注意してたんだけど、「ボクがぶちましたぁ」とか、へらへら笑っててまったく反省しようとしない。叩かれた痛さは叩かれてみなきゃわからないでしょ。平手でその子のお尻を叩いたのよね。案の定、その子の親が怒鳴り込んできて大問題になったわよ。まったく、私に文句を言いに来る前に、掃除もせずに暴力を振るった自分の子をちゃんとしつけなさいって感じよね。
カエル先生 まったくねえ。言い聞かせて理解できる子どもには体罰なんて必要ないんです。言葉が通じない子どもにちょっと手を上げただけで「体罰だ」って騒がれても辛いんですよ。じゃあどうやって指導すればいいのかは、誰も教えてくれないし。
ウサギ先生 廊下に立たせるなんて言語道断。たとえば、授業中に質問して答えられなくて、しばらく立たせたままで他の子に答えさせるだけでも「体罰だ」なんて言われるし。
カエル先生 教師自身がどうしていいかわからないから、ひたすら“教育技術法則化運動(TOSS)”を実践しようとする教師も現れる。あ、教育技術法則化運動というのは、最近注目されている指導法のひとつ。より良い教育技術や指導マニュアルを全国の教師たちが開発し合って、発展させようという運動のことです。もちろん教師自身が勉強するのはいいことですが、クラスの実態を省みないで、ひたすらマニュアル通りの指導を続ける人もいる。生徒の気持ちを無視して進むから、クラスは荒れてしまいます。本当に大切なのは、目の前の生徒のことを真剣に考えることですよね。そのためにも、私は体罰が必要だと思うんです。
●次のページは、「小学校はますます窮屈になっている?」
小学校はますます窮屈になっている?
Charger 二人のお話を聞いていると、切なくなってきますね。困った親や事なかれ主義の学校や教育委員会。小学校って、なんだか窮屈な職場なんですね。
ウサギ先生 ほんとに、年々ひどくなってるわ。最近はね、通知表の成績を前学期よりも下げちゃいけないって言われてるのよ。成績が下がるのは、お前の教え方が悪いからだってクレームを付けてくる親がいるからね。生徒の能力がわかるような授業参観はしちゃいけないとか。もうアホらしって感じでしょ。
カエル先生 通知表には、その生徒の悪いところを書くのも禁止されてますね。まったく、何のための通知表だかわからない。やたらと怒鳴り込んでくる親がどうかしてるし、問題を起こさないように、無理な要求をしてくる親の顔色をうかがうばかりの学校は間違ってると思います。
ウサギ先生 家庭のせいにするわけじゃないけど、いい子の親はちゃんとした人が多いわね。問題のある子は、ほとんど間違いなく親にも問題がある。がんじがらめの今の小学校で、そういう子どもをちゃんと指導するのは不可能に近いから、その子は将来、さらに問題のある親になっていくのよ。すべての武器を奪われて、仕事ばかりが増えてくし。最近、鬱になる先生が多いってのも当然よね。
カエル先生 実際、都市部では教員採用試験の倍率も下がってますしね。このままじゃ先生になりたいなんて思う人は、どんどん少なくなってしまうでしょうね。
●次のページは、「先生自身の目標って?」
先生自身の目標って?
ウサギ先生 正直に言って、もう教師って仕事に夢はもってないなあ。最近、教師になりたいって相談されると「やめといたほうがいいよ」って、アドバイスしちゃうもん。
カエル先生 自分自身がどうこうというよりも、教え子が人を幸せに出来る大人に育ってほしいと願ってます。子どもたちにも日頃から「人のせいにしない。ウソをつかない。逃げない」という3つのことを守って欲しいと教えています。最近は、そんな当たり前のことをできない大人が増えてますけどね。
ウサギ先生 私が担任した去年のクラスは「人の話をちゃんと聞こう」って目標さえも達成できないで終わっちゃった。親批判ばかりになっちゃうけど、楽しいこととふざけることの区別をできない子がほんとに増えているのよね。
カエル先生 教師といってもただの人ですからね。新任教師が担任をもつことになると、週に約10時間、計300時間ほどの研修をやらされる。担任をもちながら研修をさせられるので忙しさのあまり、何から手をつけていいのか分からなくなってしまう。研修がすべてダメとは言わないけど、現状の研修では新任教師を育てるような制度になっていないと思う。指導のノウハウが乏しい先生になっちゃうことだってあるのは当然なんですよ。
ウサギ先生 ああ、でも今日はいろいろ話せてスッキリしたわ。新学期が始まったら、新しい学校で新しい子どもたちを迎えることになるんだし、心機一転、私もがんばらなきゃな。この記事が世の中に届いて、困った親が少しでも減ってくれたらいいんだけどね。
カエル先生 そうですね。少なくとも、自分の子どもに「学校では先生の言うことをちゃんと聞きなさい」ということくらいは、家庭でちゃんとしつけて欲しいものです。
●2008年4月初旬 首都圏の喫茶店&公園にて
編集/チャージャー編集部
取材・文・撮影/寄本好則