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スクリーン当たりの興収減少 転機迎えたシネコン【東京新聞】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2008030102091694.html
2008年3月1日 朝刊
映画館の一スクリーン当たりの興行収入が、ここ数年減り続けている。映画界全体の年間興収が二千億円前後で横ばいなのに対し、複数のスクリーンを持つシネコン(複合型映画館)の新規開業が相次いでいるためだ。競合で閉館するシネコンも出始める中、映画以外のコンテンツで集客アップを図る動きも活発化している。シネコン最前線の動きを追った。 (近藤晶)
「これまでよかった興行が、これから苦しくなっていくのではないか。最近は、すでにシネコンがある商圏に競合するシネコンを造るわけだから、新しい観客を掘り起こすことは難しい」
一月末に行われた日本映画製作者連盟(映連)の会見で、松岡功会長(東宝会長)は厳しい表情で語った。
映連によると、二〇〇七年の入場人員は一億六千三百十九万三千人、興行収入は千九百八十四億四千三百万円と横ばい。一方、スクリーン数は三千二百二十一(うちシネコンが二千四百五十四)と十年前に比べ、ほぼ倍増している。〇八年も百以上のスクリーンが増える見通しという。
興収は毎年二千億円前後で伸び悩んでいるのに対し、スクリーン数が増えれば、おのずと一スクリーン当たりの興収は減る。戦後、スクリーン数が最も少なかった一九九三年は一スクリーン当たりの年間興収が九千四百四十万円あったが、〇七年は六千百六十万円まで落ち込んでいる。
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川崎市にある独立系シネコンの老舗「チネチッタ」。〇三−〇六年の四年連続で入場人員と興収の全国ナンバーワンを誇ってきたが、昨年はその座を明け渡した。広報宣伝担当者は、その理由について「同一商圏内に競合(する映画館)がオープンしたため」と説明する。「チネチッタ」がある川崎駅周辺では、〇三年九月に「TOHOシネマズ川崎」が開業。〇六年九月には「109シネマズ川崎」がオープンするなど競争が激しくなっている。
一方、大阪府内では先月三日、一九九三年開業の「ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田」が、老朽化などを理由に閉館した。周辺では、ユナイテッドシネマ、TOHOシネマズ、MOVIXと大手シネコンが次々参入。ワーナー・マイカル広報室は「競合が増えていく中で、影響がなかったとは言えない」と説明する。
国内では、九〇年代から郊外型ショッピングモールなどに併設される形で、急速に広まったシネコン。その流れは近年、都市部にも波及し、激しいパイの奪い合いが始まっている。
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淘汰(とうた)の時代に入ったといえるシネコン業界。各社とも、割引などのサービスは出尽くした感があり、コンテンツで差別化を図ろうとする動きが出ている。ワーナー・マイカル・シネマズは昨年十二月から立体映像の「デジタル3Dシネマ」を全国二十スクリーンに拡大した。
また、映画以外のコンテンツでも集客を狙うTOHOシネマズは、韓国ドラマや宝塚歌劇を上映、スポーツイベントのパブリックビューイング開催など工夫を凝らす。松竹も、傘下のシネコン「MOVIX」などで米ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラを上映している。
ただ、映画館の入場人員は、ここ数年、一億六千万人台と停滞。映画館に観客を呼び戻す原動力の一つとなったシネコンも今、転換点を迎えている。シネコン関係者からは「やはり、最後は映画の作品次第」という声も聞こえる。「お客さまの求める映画をいかに多く作ることができるかにかかっている」(松岡会長)。