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「雨宮処凛が語る、若者の難民化に歯止は?」―朝日ニュースター「ニュースの深層 Evolution」より
http://www.asyura2.com/07/social5/msg/312.html
投稿者 千早@オーストラリア 日時 2007 年 11 月 29 日 01:08:37: PzFaFdozock6I
 

恵さんからのメールを転載します。
ひとつの国の中で、同じ人間扱いをされない人たちがこんなにいるのですね。
日本に限らず、世界的に見られる現象だろうと思うけれども。

12月1日の「反戦と抵抗のフェスタ」、
http://www.labornetjp.org/news/2007/1192156821394staff01
参加できる方は是非、応援してあげてください!

超長文で申し訳ありません。
以下の文章を転送・転載なさる場合は、御自由にどうぞお願い致します。

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杉並区のマリネッリ恵です。
10月31日(水)、朝日ニュースターの「ニュースの深層Evolution」を見ました。出演者は次の方々でした。
雨宮処凛氏(アマミヤ・カリン) --- 作家
宮崎哲弥氏(ミヤザキ・テツヤ) --- 水曜担当メインキャスター(評論家)
堤未果氏(ツツミ・ミカ) --- 水金曜担当サブキャスター(ジャーナリスト)

ニート問題とは心の問題なのか、雇用問題なのか。バブル崩壊後の不況と非正規雇用問題、食品が大量に廃棄される一方で弱者は餓死する。そして就職氷河期世代の深刻な現状。非正規雇用者の悲惨な状況については多少知られているが、では正社員の生活はどうなのか。苦悩する若者に支援策が講じられないことに、上の世代からの若者バッシングがどう絡んでいるのか。
興味深い部分をお伝えいたします。御発言はなるべく正確にお伝えしますが、文中・文末のですます調などは省かせて頂く場合があります。尚、このメールの件名は筆者が勝手に考えたものです。

雨宮処凛(あまみやかりん)
作家。1975年生まれ。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。バンド活動やドキュメンタリー映画作成などを経て、『生き地獄天国』で作家デビュー。『生きさせろ難民化する若者たち』『自殺のコスト』など著作多数。

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宮崎氏:  若年者の労働問題というのが・・・、国会の論戦でも、労働委員会なんかで取り上げられてないことはないけど、メディアの取り上げるアジェンダとしてね、隠れたものになってる。
そこでその派遣労働の実態や若者の労働条件の現状、更にはそのワーキング・プアーやネットカフェ難民の問題をずっと取材されているこの方を今日はスタジオにお招きしました。

堤氏:   作家の雨宮処凛さんです。

雨宮氏:  よろしくお願いします。

堤氏:   雨宮さんは最近(書籍を見せながら)、「雨宮処凛のオールニートニッポン」。
(祥伝社新書、798円) http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31938549 

宮崎氏:  オールナイトニッポンからもじったものですね。でも一方でこれ、ニートって呼ぶなという話も出て来てるんだけど、どうなんですか。

雨宮氏:  あーあ、そうですねぇ。なんかニートが心の問題という風に言っている・・・、けっこう上の世代から言われてたんですけど・・・

宮崎氏:  要するに根性が足りないと。だからニートみたいなモノになってしまうんだと上の世代が言ってると。

雨宮氏:  はい。でも当事者としては、実は心の問題なのか、労働の問題なのかというところが問題意識として出て来て。ニートを労働問題・雇用問題として捉え返しつつ、心の問題にも踏み込んでいこうみたいな・・・。
あと、やっぱニートって、親が働けなくなったら餓死してしまうんじゃないかっていう、そういう危機的な状況にある人もいるので、そういうところから色んな、まあニートというよりも、けっこう若者の雇用状況の入門書みたいな感じで、色んな人とネットラジオで対談したものを収録したわけです。

宮崎氏:  なるほど。やっぱりニート問題というのは、明らかに心理的なものに換言できるような問題ではなくて、社会経済がつくりだした労働問題と、先ず捉えるべきということですよねぇ。

雨宮氏:  そうですね、結局。とらえ返し方としては心の問題に小さくせずに、もう世界の経済の問題、グローバリズムの問題、ネオリベラリズムの問題、産業構造の変化の問題みたいに捉え返していくことによって、何故、ニートでなくてもフリーターの時給がなぜ上がらないのか、そういう事まで考えて・・・。けっこうニート問題を考えていくと、資本主義の根底の部分まで行かざるを得ないみたいなところもあるので、そういう事をしゃべっているのを収録したものです。

堤氏:   じゃあ、上の世代に読んでほしいですね、特に。

雨宮氏:  そうですね。

宮崎氏:  基本的にニート問題・フリーター問題、或いは派遣労働の問題、更にはネットカフェ難民の問題も、共通した基盤があるということですか。

雨宮氏:  そうですね。まず非正規雇用の問題とバブル崩壊後の不況の問題ですね。その失われた10年とかっていう問題が、そこで先ず正社員になれない人たちがたくさん出て来たという問題と、正社員層も長時間労働の問題で、仕事量がすごく増えたっていうことも関係があると。

宮崎氏:  それはやっぱり1990年代から2000年代に入って出て来たネオリベラリズムの社会経済政策の所産だと。

=== 中略 ===

雨宮氏:  ちょっと気になってるのは、ミスタードーナツの賞味期限切れのシロップの問題って、まあけしからん事なんだけど、企業倫理としてはあるまじき事なんだけど、健康被害に実際あった人っていないわけですよねぇ。これってどうなんだろ。

堤氏:   ちょっと厳しすぎる気もしますよねぇ。さっき雨宮さんが若者の餓死について話してましたけど、こういう物って、例えばコンビニのお弁当とか、どんどん捨てちゃうんですよねぇ。一方で・・・

宮崎氏:  そうですね。一定期間を過ぎると廃棄されることになってますよね。

堤氏:   日本って1年に食べる食品の4割捨ててるって言われてますよね。で、一方で九州で餓死する人が出る。

宮崎氏:  生活保護が受けられなくて、日記におにぎりが食べたいと書き残して、亡くなってしまう方がいらっしゃるわけですよね。こんな文明国で、こんな富が集中して蓄積されてる国で、餓死者が出ると。異様な事態だと思うんだけど。

雨宮氏:  私がこのまえ取材した、いまホームレスやってる30代の男の人は、ホームレスになりたての頃って、炊き出しとか行く場所がわからなくて、2週間なにも食べられなかったんですね。
7日目に胃がひっついて、すごい痛くなる。でも7日を過ぎると楽になるっていうんですよ。胃がちっちゃくなって、食べられなくなって。で、彼はコンビニとかで万引きして、お巡りさんに捕まったりするんですけど。
だから先ず21世紀の日本で、ある種の若い人が、2週間食べられなかったのもビックリしますし、彼、盗んだりしなければ、たぶん餓死者として発見されるか、或いは原因不明で死んでる行き倒れの人みたいに処理されて、表にも出て来ない可能性もあるわけですね。

宮崎氏:  コンビニの万引きなんか非常に件数が増えてるんだけど。一方でね、外の世界にいても食べられない。で、刑務所の中だったら三度三度ご飯を食べされてくれるっていう風に、まあ半ばこの世のシャバに対して絶望してる若い人って、けっこういますよねぇ。

雨宮氏:  そうですね。それでも、そんな状況になっても、なんかこう・・・盗むのはいけない事だとか、すごい遠慮していて、ある種・・・

宮崎氏:  まあ、盗むのはいけない事ですけどね。

堤氏:   盗まざるを得ないところに追い詰めてる何かがあるということですねぇ。

宮崎氏:  で、そういう一方で、メディアの表層においては・・・これ、企業倫理としては勿論いけないことなんだけど、こんなに問題になるっていうのはね、何かね、根本のところで不条理を感じなくはないですけどね。

=== CM ===

宮崎氏:  作家という肩書きだけど、活動家でもあると。アクティビスト!

雨宮氏:  はい。行動・・・してます。

宮崎氏:  ということだよねぇ。私の記憶だと、雨宮さんってもともとはパンク右翼だったような気がするんだけど(^^;)、そーれが今では非常に労働問題の専門家、オーソリティーのようになってるけど、ど・・ど・・・どうしてぇ?

雨宮氏:  はい、はい (^^;)。うーん、まあ自分自身が、そのー、就職氷河期世代で、まあ所謂lost generationで、32歳なんですけど、19歳から24歳まで自分がフリーターをしていて、その時になんか、将来ホームレスになるんじゃないかと思ったんですね。
そしたら本当に10年後に自分と同世代のフリーターの人がどんどんホームレス化しだして、それはここ1〜2年のことですけど・・・

堤氏:   えっ、どうしてホームレスになるって、そのとき思ったんですか?

雨宮氏:  その時は・・・、この生活から脱出はまず出来ない。同世代の良い大学を出た人たちも、正社員として就職できなくてみんなフリーターになっていて・・・。で、フリーターの時給は八百、九百、千円くらいですよね。で、当時不況だったので、どんどん時給も下がっていくなかで、すごく即日解雇とかをよく食らっていて、このまま働いててもフリーターなので給料あがらないし、ボーナスもないし何の保障もないしで、まあ三十、四十、五十になってもこういう働き方をしているんだろうなと思ったら、たぶん二十代がまだ一番体力もあるし稼げる時期なので・・・。
あと、親にずっと頼ってたんですね。一人暮らしだったので、フリーターの稼ぎで家賃・光熱費・生活費・保険料とかを、まかなえたことがほとんどないんですね。

宮崎氏:  うん、まあそれは無理ですねぇ。

雨宮氏:  で、親に頼っていたので、「あっ、これは親が働けなくなったら、親が死んだら私はホームレスになっちゃうな」と、もうほんとうに普通に思いました。
先ず家賃を滞納して頼る人がいないとなると、家を失ってしまうと。それがけっこうリアルなものとしてあったので、それは本当に10年後に現実になってしまったという・・・

宮崎氏:  個人の阻害された状況というものが先ずあって、周りを見渡してみると、同世代には同じような環境に立たされている人たちが多いということに気付いたことから始まったと。

雨宮氏:  そうですね。はい。

宮崎氏:  それとこう・・・、それ以前のまあ愛国というか憂国思想とは、どう繋がってるの?

雨宮氏:  うーん、でもこう・・・、不安定雇用の人が右傾化したみたいな風に言われてたじゃないですか。

宮崎氏:  うん。貴女ほら、右翼と左翼の本も出していらっしゃいますよね。

雨宮氏:  はい。

宮崎氏:  こう、政治思想的に、どうなのかなという・・・

雨宮氏:  えー、いや、いまは全然右じゃないですね。(^^;)

宮崎氏:  右じゃない! じゃあ、もう転向しちゃったという・・・

雨宮氏:  いや、でも転向とも思っていなくって、当時から今に至るまで変わってないところもあって、それはやっぱり経済至上主義というか、まあ市場原理主義というか、とにかくすごく人が使い捨てられていて、お金のほうが大切みたいな・・・、自分もそうだったので。それは右も左も、すごく共通する部分で、そこは全く・・・、で、そこが一番大きなことだったですね。

宮崎氏:  経済至上主義によって個人が押し潰される、阻害されるような状況ということ自体に対する異議申し立てという点では、変わらないということですか。

雨宮氏:  そうですねぇ。

宮崎氏:  なるほど。じゃあちょっとね、今いろいろな形で取材されたり論評されたりしてると思うんで、若者の雇用状況というのは、現状はどうなんですか。
例えばね、これは要するに体制側の、資本主義側のインフォメーションかもしれないけど、アルバイトとかそういう部分では人手不足になってきていて、時給もそれなりに高くなって来ているじゃないかと。色んなこのファーストフードとかコンビニとか、そういう所の時給は高くなって来ているじゃないかという話も出て来てますが、如何ですか。

雨宮氏:  まあ、仕事がある、求人があるっていう話なんですけど、あるにはあるんですけど、まあ3ヶ月後には失業していることが前提の仕事ですね。

宮崎氏:  なるほど。

雨宮氏:  だからそういうサービス業とかの仕事あるんですけど、それでじゃあ将来設計が立てられるか、結婚できるか、最低限自立生活できるかといったら、まず出来ない仕事はいっぱいありますね。

宮崎氏:  状況は変わってないということですね。

雨宮氏:  そうですね。本当にフリーターとか非正規だと、ある種ホームレス前提、ネットカフェ難民前提みたいなところあるんですけど、じゃあ正社員は良いかっていうと、本当に過労死前提じゃないかっていうぐらいに、すごい長時間労働とノルマと、そういうのに忙殺されてるっていうのもありますし。だから正社員をいま請負契約とかに変えたりして、なんかそうすると完全歩合制になってしまって、本当にお給料が1ヶ月まるまる働いてゼロ円だったとか、そういう人なんかとも実際に話したし、なんか正社員も使い捨て化してるなと思いますね。

宮崎氏:  結局その非正規雇用という企業側からすると都合のいいものが出て来たために、逆に正社員の状況が厳しくなって来たということですよね。だからそういう意味では利害っていうのは、本当は正社員と派遣社員なんていうのは相反していないはずなのに、現状では相反しているというね。
(フリップを取り出して)「労働者派遣事業数と平均派遣料金の推移」ということですが、これはどういうことを意味するんでしょうかね。

雨宮氏:  :派遣の事業所がどんどん増えていって、派遣の人の時給がどんどん下がってるということですね。

宮崎氏:  ここで考えられるのは、ある意味で派遣の事業者数によって全体の雇用状況が悪くなっているし、有り体にいうと派遣事業者が中抜きをしてると。中間搾取をやっている率が高くなっていると。

雨宮氏:  はい。派遣業界の売り上げって4兆円とかで、それは右肩上がりですね。

宮崎氏:  成長業者なんですね。

堤氏:   すごいマーケットですね。

宮崎氏:  で、これは制度的に作られたものとお考えですか。

雨宮氏:  はい。派遣法改正によって。

宮崎氏:  これは若い人たちにも、派遣会社に登録するっていうことは増えてるんですか。

雨宮氏:  はい。増えてますね。っていうか、逆に派遣会社に登録していない若い人って、私の周りにはいないですねぇ。

宮崎氏:  ふーん。やっぱりそれは生活は非常に難しいものはあるの?困難なとこがあるの?

雨宮氏:  うーん、困難というか、先ず正社員になれないじゃないですか。たまたま大学出た、高校出た時に不況だったために、新卒採用が全然なくて正社員になれなかったという人達が、やっぱりフリーターでやってたり派遣で働いてたりしても、正社員に行ける回路っていうのが全然ないんですよね。
企業もそういう人は取ってくれないですし、やっぱり新卒を欲しがりますし。経団連のアンケートでは、1回フリーターになった人を正社員として積極的に採用したい企業は、1.6%っていう数字だったので・・・

堤氏:   ほとんど無いですね。

雨宮氏:  ほぼ無いに等しいですよね。となると、やっぱり派遣とかで働くしかない、ですよねぇ。

宮崎氏:  これはじゃあ、一生その世代の人たちというのは、派遣労働をやっていかないと生活できないということですか。

雨宮氏:  そうですね。景気回復とかいわれて、今の新卒がいくら良くなっても、逆にこれまで10年以上フリーターをやって来た人たちっていうのが救われる方法っていうのが、ぜんぜん出されていないので。

宮崎氏:  同年齢で、正社員の平均年収と派遣労働者の平均年収って、そんなに違うんですか。

雨宮氏:  全然ちがうと思いますね。例えば製造業だと、派遣社員の年収は250万ですね。で、正社員だと500万ぐらい。で、その間に期間工がいて、期間工は400万くらいです。

宮崎氏:  期間工というのは、一定期間だけの、まあ契約社員みたいな雇用形態ですよねぇ。

雨宮氏:  はい。でも直接雇用なんですね。派遣は派遣会社から派遣されてるので。

宮崎氏:  で、期間工のほうが派遣社員よりも、

雨宮氏:  待遇がいいですね。寮費も只です、期間工は。で、慰労金も終わったあとに出るんですけど、派遣社員は寮費も取られて、光熱費も取られて、慰労金も出ないっていう感じなので。
だから昔は期間工が最底辺みたいな、・・・にされてたんですけど、その下に今度は派遣・請負みたいな人たちが出て来たというか、派遣会社がそういう人たちを入れるようになったので、期間工の下にもう一つの層が出来てしまったみたいな・・・。

堤氏:   派遣会社の広告って、けっこう派手に出てるじゃないですか。紹介予定派遣で、「正社員になれる可能性がある」とかね、わりと勧誘文句はすごく魅力的に書かれてるんですけど、あれは現状はどうなんですか。

雨宮氏:  いやー、ひとりもないのに「正社員になれる可能性がある」みたいなことを匂わせてる所もありますし、実際にほんとうに「正社員募集」って書いてるのに、働いてみたら派遣だったとか、そういう話はすごくいっぱいありますね。
あとあれ時給表示だから、月収表示も全然ちがって、例えば製造業なんかで、「30万以上稼げる」「20万以上稼げる」とか書いてあるんですけど、どう計算してもその時給だとそのお金に行かないっていうような、そういう嘘の広告もあるんですね。

堤氏:   蓋を開けてみたら違ってたと。

雨宮氏:  はい。だから22万稼げるって言われた場合って、大体12〜13万って考えていたほうがいいんですよね。

堤氏:   そういう時どうするんですか、派遣社員は。

雨宮氏:  いや、何もできないですよね。

堤氏:   派遣会社に言っても全く・・・

雨宮氏:  言っても、「じゃあ、止めれば」で終わるんじゃないですか。

宮崎氏:  これ、日本の会社っていうのはね、給与水準もそれなりにあるんだけど、それよりも、製造業なんか特にそうなんだけど、フリンジベネフィットっていうか色んな福利厚生とか各種手当てとか、手厚くというのが日本企業の雇用形態の特色だったわけですよ。派遣社員って、そういうの全然ないんでしょ?

雨宮氏:  全くないですね。

宮崎氏:  派遣会社はそういうことする義務ってないの?

雨宮氏:  ある・・・と思うんですけど、ただ2ヶ月毎の雇用とかにして、2ヶ月以内だと厚生年金だったかな、かけなくていいですよとか何とか、そこに法・・・

宮崎氏:  抜け穴がある。

雨宮氏:  はい。なので法的には実は合法だったりするんですよ。2ヶ月毎の契約で、一旦切ってまた始めますみたいなことをするので、色んな抜け道を使っていますね。

宮崎氏:  そういう労働環境は、どんな困窮した事態になっていくのか、ちょっと具体的にお聞きしたいんですが。

雨宮氏:  これは湯浅さんという方に聞いた話なんですけど、ネットカフェで最長7年住んでいたっていう人がいますね。

宮崎氏:  7年!

雨宮氏:  はい。ネットカフェに住んでると定職に就けないじゃないですか、住所もないので。その悪循環ですよね。
それで日雇い派遣で働くんですけど、日雇い派遣って毎日確実に入るとは限らないので、月収にして8万くらいだったんですね。で、8万だと毎晩ネットカフェには泊まれないので夜通しずーっと歩いてて、都会のなかを、冬だと凍死しちゃうので歩かざるを得ない。で、始発が動くのを待って始発に乗って、ずーっと電車で往復して仮眠をとるっていう生活を、彼は7年続けていたっていう・・・。

堤氏:   若い頃から、十代の頃からですか。

雨宮氏:  たぶん二十代ですね。

宮崎氏:  そういう生活を続けて、病気にならないのかしら。病気になっても健康保険・・・

雨宮氏:  病気になっても病院に行けないですよね。

宮崎氏:  ・・・に入ってないですよねぇ。

雨宮氏:  入ってないし、昨日もわたしホームレスの方の取材をしてたんですけど、やっぱりいちばん困るのは病気のときで、もうひたすら寝るしかない。最初から病院に行くという選択肢は彼らにはないので。だからまあホームレスまで行かなくても、ネットカフェだとかでそういう生活をしている人たちは本当にたくさんいる。
あと最近びっくりしたのはその、製造業で派遣で働きに行くんですけど、製造派遣って北海道・東北とか沖縄・九州に営業所をいっぱい持っているので、そういう所の若者をこう集めて、愛知とかの工場に入れてるわけですけど、半年ぐらい働けるって言われても、1ヶ月ぐらいしか働けなかったりするので。で、いきなり「じゃあこれでもう契約は更新しませんよ。あと3日で寮を出てって」と言われて、仕事と住む所を同時に失って、ネットカフェになっちゃうみたいな・・・。
で、その人たちが製造派遣を転々としている内に、1週間くらい空くんですよね、次の派遣の仕事までに、その間にみんな普通にホームレスしてるんですよね。それにすごくびっくりしましたよね。

宮崎氏:  はあ、その間にホームレスになってしまうと・・・

雨宮氏:  はい。お金がない。貯まらないですし、そんな12万くらいじゃ。交通費もあったりするので、仕事と仕事の間にネットカフェ難民になっちゃったり、ホームレスになっちゃったりっていうのが、本当に二十代前半の人とかで、けっこう色んな人に訊いても、みんなホームレス経験があったりして。ホントに普通の若者なんですよ。
でも、そういう事をしていて、これ、あるとき本格的なホームレスになっちゃうだろうなと思うんですよね。例えば怪我したり、風邪ひくだけでもホームレス化しちゃうだろうし。

堤氏:   こういう人たちの親っていうのは、どういう状態なんですか。

雨宮氏:  もちろん親がいる場合もありますし、ただ今まで取材してる中では、もう圧倒的に親はもう死んでるっていう人が多いですね。

堤氏:   二十代でも・・・

雨宮氏:  はい。親が亡くなって・・・。あと、もともと片親で、その親には頼れないだとか、親にお金がないだとか、親が入院してるだとか。親がお金持ちで親と仲がいいっていう人は、まだ生き延びていられるんですけど。
親と仲が悪かったり、絶対に頼りたくないっていうことだったり、あと施設育ちの方なんかも直ぐホームレス化してしまうというか、三十代で失業したとして、そしたらやっぱり親に頼れない立場の人は、本当にもう真っ逆さまにホームレスっていうことになってるんですねぇ。

宮崎氏:  こういう話を聞くとね、よく俗事に入り易いこの・・・批判としてはその当人の努力が足りないんだろうというような、なんとか自助努力というのをもっとやるべきなんじゃないかっていう意見が必ず返って来ると思うんだけど、これについてはどうですか。

雨宮氏:  えー、でも聞いてると、ほんと努力してるんですよね、彼らは。もし努力が足りないんだったら・・・、自分の努力と関係ないところで不利な目にあってるというか。
例えば親にお金がなくて、親がリストラされて大学やめましただとか、高校やめましたとか。けっこう親の資産っていうものが、かなり大きいですねぇ。

宮崎氏:  ああ、じゃあ親に資産があれば、そんな事にならない。

雨宮氏:  うーん、いやっ、親に資産があっても、仲良くなかったりすれば・・・。だからもちろん努力はしてるんですけど・・・

宮崎氏:  彼らは働こうという意思はきちんとある。で、将来設計をきちんとしたいっていう意思はあるわけですか。

雨宮氏:  ありますね。っていうか、逆にいうと、ホームレスでもネットカフェ難民でも、私が取材した人みんな働いてました、日雇い派遣で。

宮崎氏:  現実に働いてる。かなり過酷な労働の中にいるという・・・

雨宮氏:  そうですねぇ。アスベストが舞うところで、派遣派遣と呼ばれながら、番号で呼ばれながら働くようなこと・・・

宮崎氏:  あっ、派遣っていうのは番号で呼ばれるの?名前で呼ばれないの?

雨宮氏:  はい。名前呼ばれないですね。「おいっ、おまえ」とか、なんかスタンガンで脅されたとかそういう事も。本当にその・・・現場では・・・、派遣の人は物扱いしてる現場もあるらしくて・・・。派遣を物扱いしちゃう現場の正社員のほうも大変だから、そうなっちゃうんでしょうけれど。
ほんとに過酷な中で、すごく大変な仕事をしていて、だけどそういう仕事って、世の中の誰かが絶対にやらなきゃ回っていかないことなのに、なんかすごく蔑まれて差別的な扱いを受けながら、そういう事をずっとやっているという・・・。しかもすごい安いんですね、日給なんか。

宮崎氏:  ええ。しかも危険な労働をしているにも拘わらず、そういう危険負担というのは彼らに支払われていないということですね。

雨宮氏:  全くないですね。で、違法な派遣の現場に行ったりだとか、建築現場では、派遣の彼らだけ命綱がなく働かされたりだとか、

宮崎氏:  えっ、もし事故が起こった時には、どこが責任を取るんですか。

雨宮氏:  それは微妙なんですよね、派遣なので。

宮崎氏:  派遣会社なんですか。それとも間接的に雇用してる建設会社等なんですか。

雨宮氏:  派遣会社だと思いますよ、先ず第一には。

堤氏:   どういう形で責任とってくれるんですか、派遣会社が。

雨宮氏:  えー、でもけっこう揉み消されたりだとか、そういうことも多いですよね。だからあんまり、こっちから激しく言わない限りは、そんなに・・・よっぽど良い派遣会社でない限りやってくれない・・・

宮崎氏:  ちょっと待って。でもね、命綱をつけないっていうのは、これは・・・命綱をつけるなんていうのは、最低限のことであって、そんなにコストが掛かるとも思えないし、なんでそんな事やらないの!

雨宮氏:  えーとですね、彼が言っていたのは、「自分で用意してくれ」って言われたっていうんですね、派遣会社に。

宮崎氏:  はーあ。(声にならない声で)

雨宮氏:  で、自分で用意して、用意できないならそれは自己責任だから、無いならそのまま登って下さいっていう・・・。だから用意しなかった・・・

宮崎氏:  あなたが悪い。保険会社が悪いし、あなたが悪い。そういうこと。

雨宮氏:  で、元からそういうのは多分、すごいちっちゃい字で何処かに書いてあったのかもしれないですね、契約書とかに。

堤氏:   でもね、そんな風に・・・人間以下ですよね扱いとしては。で、数字で呼ばれて、個人名で呼ばれなくて。そういうのって経済的な影響以外に、精神的にもやっぱり影響でますよね。

雨宮氏:  ええ、ええ、ええ。だからやっぱりずっとそういう生活をしている人達なんかは、日雇いもそうですし、日雇いじゃなくけっこう普通のフリーターでもそうですけど、やっぱり精神的に持たなくなるって言うんですね。
それでけっこう大きなラインは30歳のラインで、30歳過ぎると一気にバイトも無くなるんですよね。なのでそこでもうガクッと来て、逆にいうと彼らは10年以上そういう危険な現場とかで必死で働いて来たのに、そのこと自体が評価されずに逆に批判の対象になってしまって。それでお金も無いし、もう求人も無いとなると・・・

宮崎氏:  ホームレスになるしかないですよね。

雨宮氏:  ホントそうですね。

宮崎氏:  ちょっとね、どうしてそういう派遣、非正規雇用、フリーターというような職業形態が、まあ全体にいえば非正規の職業形態が日本の経済に組み込まれて来たのか。制度的な側面をちょっと見ていきたいと思うんですが、この労働者派遣法というものが大きいんですか。

雨宮氏:  ああ、大きいですね。

宮崎氏:  これ、ちょっと一応フリップにまとめてみました。

派遣法快晴の主な流れ
85年労働者派遣法成立
派遣の対象は13の業務
99年労働者派遣法改正
対象業務・職種が原則自由化
04年製造業にも派遣が解禁
06年度派遣業者 51500ヶ所に急増
   (99年度 12700ヶ所)


宮崎氏:  1985年、労働者派遣法成立と。これは施行が86年でしたよね。

雨宮氏:  はい、そうです。

宮崎氏:  最初は限定されていた。比較的専門的なプロフェッショナルなものに限定されていたにもかかわらず、90年代に入り、とりわけ99年の労働者派遣法改正から対象領域というものが非常に広がっていった。
そして最初は禁止されていた製造業にも派遣が解禁されて、先程の・・・派遣業務を行う事業所というのがうなぎ上りに大きくなっていったと。既に2006年度、派遣業者は51500ヶ所に急増したということなんですがね。
これはまあ要するに、今の日本経済に派遣労働というものが組み込まれていったということですよねぇ。これ、なんで?その背景には何があるんですか。

雨宮氏:  うーーんん

宮崎氏:  先程ね、グローバル経済、或いはネオリベの経済政策趨勢的な勢いというものがこれを作り出したという風に、最もマクロ的にみれば、おっしゃいましたよね。もうちょっと説明して頂きますか。

雨宮氏:  ここまで解禁で非正規雇用が増えたっていうのは、95年の日経連が「新時代の日本的経営」という報告書を出して、それで働く人を3つに分類したっていう・・・。
その一つが長期的蓄積能力活用型、もう一つが高度専門能力活用型、もう一つが雇用柔軟型っていう・・・。その雇用柔軟型っていうは、フリーターとか派遣とかの人達なんですけど、これはもう生死柔軟型じゃないかって。生きるも・・・

宮崎氏:  生きるも死ぬも雇用者次第ということですわなぁ。

雨宮氏:  そうですね。ほんとに死なない程度の餌という低賃金で働かされる、使い捨ての激安労働力を作りましょうということを財界が言ってしまったので、それによってどんどんそういうやり方で不況を乗り切りましょうということで、結果的には若者が犠牲にされてしまったということが・・・

堤氏:   これ、出た頃は若者に多様な働き方を、選択肢を増やすっていう非常にきれいな言葉で・・・

宮崎氏:  その柔軟っていうのは、そういう意味合いですよ。

宮崎氏:  いまだにそういう風に働き方の、例えば派遣労働業界の代表するような方々というのは、多様な雇用形態を提供しているんだと。自由な・・・だからこの派遣労働者のような、仕事の満足度を計ると、意識調査なんかやると、仕事の満足度は正社員より高いなんておっしゃる方もいらっしゃるんですが。

雨宮氏:  いや、そんな話は、ほんと聞いたことがないので。だから今のコマーシャルとかそうですよね。「あなたに沿った、あなたのライフスタイルに合わせた働き方」みたいなのが言われてますけど、結果的には絶対にその、現場に入ってる人達なんかに訊くと、向こうの都合ですよね。
柔軟なのは、向こうにとって柔軟なのであって、フリーなのは向こうにとってフリーなのであって、こっちは逆にほんとうに生きるか死ぬかまで、向こうに委ねられてるっていうようなことですから。

宮崎氏:  うん、なるほどね。しかもこの法令がね、もともと法令自体が問題があるんだけど、法令自体が守られていないという現状もあって(フリップを取り出す)、4年で10倍に増えた法令違反と。
特にその派遣請負会社、或いは派遣先発注会社でも法令違反が増えてると。これは表に出て来た労働基準監督署が把握した限りにおける・・・、先程からお話を伺ってると、実は現場で揉み消された例というのが多くありそうなので、これの数倍、ひょっとすると数十倍、数百倍あるかもしれないという感じですよねぇ。
いずれにしても、同じ表で見てもこれだけ(4年で10倍)増えて来ているということで、非人間的な労働が横行してるということですよね。これ、どうすると改善すると思われますか。例えばね、登録派遣性を止めてしまうという考え方があると思うんだけど、どうです、これは有効ですか。

雨宮氏:  登録型派遣の禁止っていうのは、いま色んな組合の人たちが求めていて、それは有効だと思います。やっぱり毎日失業してるということになるんで、日雇い派遣というのは、究極の不安定雇用ですし、明日のこと今日のことを考えながら生きざるを得ないというのは、とんでもない事です。
よく派遣会社の人なんかが、「だけど自分たちは仕事を必要としている人達がいるから、やってるんだ」っていうことを言うんですけど、なんか放っておいたら餓死してしまう人を一日先延ばしにしていくやり方っていうのは、やっぱり有効じゃないと思うので、もっとこう安定した働き方を保障しないと意味がないと思う。
そのためにでもその日雇いの仕事を禁止したら、膨大な貧困の失業者が生まれるので、一日でも何万人と稼働していますので、そのために日雇い雇用保険というのを適用しろって、そういう人達に。そうしたらその人達は、いまネットカフェに住んでいる人が急にホームレスに・・・持ち堪えながら安定雇用に何とか行けるようになればいいんですけど。

堤氏:   そうすると登録制を禁止するだけでは駄目ということですね。

宮崎氏:  駄目で、日雇い雇用保険というのは・・・

雨宮氏:  それは派遣ユニオンなんかがずっと日雇い労働者に、そういう若い人たちに適用させろと厚生労働省に働きかけていて、適用されることになったので、一つのセーフティーネットはそこで出来たので、次の登録型派遣の禁止っていうところを、もっと訴えていけばいいのかなっていう・・・

宮崎氏:  他方でね、派遣会社のほうは派遣期間の制限っていうのがありますよね。一定期間を過ぎると直接雇用の義務っていうのが発生する。これを廃止しようっていう主張してるんですが、これはどうですか。

雨宮氏:  えーっ、それはとんでもないと思いますね。やっぱり3年経ったら正社員になりたいっていう人が圧倒的に多数なので、そこでそういうものを無くしてしまったら、派遣法のそもそもの考え方ってあれ、人件費削減のために使っちゃいけないんですよね。

宮崎氏:  そうですね。

雨宮氏:  で、一時的・臨時的雇用なら派遣でいいけれども、敢えてこう削減のために非正社員に置き換えるっていうことしちゃいけないのに、派遣会社の営業の人は「一人の正社員を雇うお金で二人の派遣社員を雇えますよ。どうですか」みたいな営業してるのは、これけっこう違法なセールストークなんじゃないかな・・・

宮崎氏:  完全に違法だよ!

堤氏:   なんか物の話をしてるみたいですよね。

宮崎氏:  だから要するにその期間制限を撤廃するということは、いまの「同一労働、同一賃金」という原則があるわけじゃない。それが今ある種の次元で壊れてるところがある。これを恒久化しようという話になりますよねぇ。

雨宮氏:  ええ。だからホント、身分制度みたいになっていくと・・・

宮崎氏:  なんで同じ働きをしてるのに、あの人と私はこんなに、少なくとも倍も賃金が違うのか。その関係というものを固定しようと。派遣会社だってさぁ、こんなこと主張していいのかなぁ。

雨宮氏:  だから本当にいま派遣とか非正規になってしまうとリアルに貧困で、非正規雇用の人の8割は月収20万円以下なんですね、厚生労働省が出してる数字で。
20万だったらまだ暮らしていけますけど、月収10万円のフルタイムの派遣社員なんてもう山ほどいますし、そうなると結婚もできないし、子供も産めない。

堤氏:   健康保険もないですよね。家もない。

雨宮氏:  ええ。そうなると、非正社員になっちゃった時点で、人生の大半を諦めなきゃいけない層が膨大に生まれていて、いまの30代なんか正にそうだと思うんですけど。
みんな諦めてますよね。要するに不況時に社会に出る歳になっちゃったというだけで、非正規雇用になっちゃって、大多数の人がもう結婚を諦めてるし、出産を諦めてるし。だからこれはちょっと一刻も早く解決というか、もう少し是正してもらわないと・・・

宮崎氏:  登録型派遣を規制する、或いは禁止するということを主張してる政党というのはあるんですか。

雨宮氏:  えーっ、どうなんでしょうねぇ。いや、よく判らないです。

宮崎氏:  非正規雇用がある種格差を助長してるということは、みんな認識としてはだいたい持ってる。じゃあどうやって解決するかっていうことは、きちんとした形で政党なんかによって主張されてるのは、わたしは見たことがないんだけど。

堤氏:   あのー、そもそも政治家の人たちとか法律つくってる人たちは、この現状をちゃんと認識してると思いますか。

雨宮氏:  まあ、してる人もいますけど、してない人が圧倒的多数で。でも、「努力が足りない」とか、「好きでネットカフェで暮らしてるんじゃないか」とか、「ホームレスの人も意外とお金もってる」とか、なんかそういうことを言う人が多くて。

宮崎氏:  だからそれは不完全情報でしょ。要するに個別的にそういう人もいるかもしれないという話で、マクロ的なデータに基づいたものじゃないですよね。

堤氏:   どうしてなんですかねぇ。しっかりと調査が行われてないっていうことですか。

宮崎氏:  でもさ、厚生労働省はさすがに多少は実態を把握しつつあると思うんだけど。ただ先程もおっしゃったように、闇に潜ってしまう部分っていうのは、かなり実態としてあるんじゃないかという気もするんだけど。

堤氏:   この間、ネットカフェ難民が5400人ですか、新聞に載ってましたけど、あれもその「もやい」(自立生活サポートセンター、NPO法人)の代表の方に訊くと、「あんなもんじゃない! ただ、まだ調査を始めただけマシだ」っていう言い方してたんですね。

雨宮氏:  ええ。で、また流動的ですし、ネットカフェ難民の人たちは。ずっと続けてる人もいれば、路上とネットカフェ転々としてる人もいますし、移動してるのまで把握しきれないと思うんですね。
だから取材してる範囲では、製造派遣から流れて来たネットカフェ難民の人たちが非常に多いので、寮と仕事と同時に失って、その失った所の近くのネットカフェに滞在して仕事探すけれども、住所がないので日雇い派遣しかできないみたいな。そういう人達のことを考えると、逆に製造業の派遣とか請負っていう働き方で全国を転々としているフリーターは百万人って言われてるんですね。なので百万人のネットカフェ予備軍がいるっていうことなんで、ちょっと楽観的過ぎるかなって思いますね。

宮崎氏:  雨宮さん、貴女もともと右翼だったわけですよね。

雨宮氏:  あははっ (^^;)

宮崎氏:  いや、それはいいんだけれど。で、保守というか、もっと露骨にいうと反共という考え方というのは、どういう風なものかというと、そういうその、マルクスが言うような、もはや鉄鎖しか失うものがない、そういうプロレタリアートをつくらない、つまり飼い殺し状況なのかもしれないけど、あるこの・・・展望が・・・、会社員になって家庭が持てて、そこそこの教育水準と経済水準のなかで、決して革命に走らないような国民をいっぱいつくることが、ある種の保守の政策目標みたいだったわけですよ。だから完全にぶっ壊れた。

雨宮氏:  ぶっ壊れましたねぇ。

宮崎氏:  保守の側としては、それでいいんだろうか。秩序・体制を維持しようとする側というのは、それでいいんだろうか。

雨宮氏:  それがホントに不思議なんですけど、そっち側からあんまり若者を助けようだとか、問題視する声が聞こえないのは、なんかその若者バッシングみたいなものとすごい結びついちゃって・・・

宮崎氏:  若者バッシング!

雨宮氏:  はい。俗了若者論で、なんか・・・

宮崎氏:  後藤くんが、ずっと主張してる・・・

雨宮氏:  なんかゲーム脳とか言ったり、そういう人達ですね。

宮崎氏:  要するに若者は柔弱で労働に向いてない奴がいっぱい出て来てるので、こんなフリーターやニートとかが出て来て正社員になれないんだと。そういうような議論が出て来ている。そういう先入観によって差別されてるということですよねぇ。

雨宮氏:  そうですね。だからやっぱり心の問題にしてること自体が、若者バッシングのことと地続きで、雇用の問題・労働の問題として見られて来なかったということが、しかも10年以上ですね、その10年以上隠されて来たのは、やっぱり若者バッシングがあったからだと思いますね。

宮崎氏:  それはイデオロギーじゃないですか。所謂その虚偽意識だよねぇ。つまり大きな、ひょっとすると経済社会の変性がもたらしたものかもしれない。そうすると、じゃあ根源的にはいったい何があるのかっていうと、グローバル経済、競争激化ということですよね、企業社会の。
つまり例えば労働賃金が安い所が、中国とか東南アジアとかあるわけでしょ。それと国内がどうやって競争していくかというと、国の中にある種の経済的な植民地をつくって、経済格差を人為的につくり出して、そこから搾取行動する以外に、そういう新興国と戦うことができないという問題意識が、先程おっしゃった経団連ですか日経連ですか、日経連の背景にあったと。まあそういう風な理解をされてるということですか。

雨宮氏:  そうですね。もう国内に、ある種「奴隷をつくりましょう」みたいな構想だと思うので、ホントに奴隷的な労働に甘んじさせられてるというか、押し付けられてるんですね、若者が。

宮崎氏:  なるほど。それを正当化して、かつては居たような真っ当な保守から目をくらまさせてしまったのが、さっき言った若者バッシングのようなイデオロギーだと。

雨宮氏:  そうですねぇ。

宮崎氏:  なるほど。こういう状況は、保守であれ、右であれ左であれ、突破しなきゃならないものだと思うんですけど、なんか運動かなんか、ないの?

雨宮氏:  はい、あります。こんど12月1日に「反戦と抵抗のフェスタ」っていう、これはデモと集会ですね。もうテーマはただ一つ、「生きのびる」っていうテーマで・・・

宮崎氏:  サバイバルだね。

雨宮氏:  サバイバル! しかも、ひとりが生き残るために人を蹴落としながら生き残るんじゃなくて、みんなで生きのびる方法を模索しようみたいな。とにかく生きのびよう。
もう貧困で不安定でなかなか生きられないような状況ですけど、それでも生きのびようということでデモと集会をして、1時から千駄ヶ谷区民会館で集会がはじまって、4時から渋谷・原宿をデモして、夜デモが終わって帰って来たら、「31歳フリーター。希望は、戦争。」という論文を書いた赤木智弘さんを呼んで、「戦争は貧者を求める。貧者は戦争を求めるか」というテーマで、みんなで討論しようということなんですけど。
とにかく2007年の日本で、若者が生きのびるためにデモをしなくちゃいけないっていうこと自体が、非常に最悪なことだなぁと思って。今までデモって、「戦争反対」とかいろいろテーマがあったと思うんですけど・・・

宮崎氏:  もっと余裕があった。

雨宮氏:  もっと余裕が。「盗聴法反対」だとか。でも今のは本当に、生きるためにデモをするっていうことなんで。

宮崎氏:  問題意識を同じくする人たちは、是非ご参集ください。老若男女を問わずですよね。

雨宮氏:  はい。是非是非いろんな方に。

宮崎氏:  「反戦と抵抗のフェスタ、生きのびる」ということですので。

堤氏:   いま雨宮さん色んな所に呼ばれて、こういう現状ですっていう話はしてると思うんですけど、この番組はわりと政治家の先生、大学の先生、役人の人たちとか、上の層の人たちたくさん見てるんですね。その人たちに向かってメッセージというか、どこから手をつけたらいいんでしょうか。

雨宮氏:  先ずいちばん私たちが主張してるのは派遣法ですね。その登録型派遣の禁止と、99年以前に戻してほしい。その全面解禁というのを元に戻して、専門性の高いものだけに絞ってほしいというのが、先ず現実的なお願いとしてあるんですけど。
この労働問題の解決策として、正社員になりたい人で正社員になる資格のある派遣の人とかいっぱいいますよね、3年以上働いているとか。なりたいんであれば、正社員化をしてほしい。
でも、昔のように望めばみんなが正社員で働けたっていう時代はもう来ないと思うので、そうなると正社員と非正社員のこのメチャクチャな、同じことやってても倍ちがうっていう格差をなんとかしてくれ、これを是正してくれというのを同時に・・・

宮崎氏:  それは例えば最低賃金法とか・・・、最低賃金を8百円とか千円とかにするということを・・・

雨宮氏:  はい。先ず最低賃金千円は要求したいですし、本当に最低賃金の決められ方自体が、あれ、生存賃金じゃないので、やっぱり扶養家族であるパートの主婦の人と、自立生活してるフリーターが全く同じ時給で全く同じ条件で働いているので、これは食えなくて当然だと思うんですよねぇ。

堤氏:   そうですねぇ。

雨宮氏:  最近読んでビックリしたのは、企業の賃金支払能力をある種基準に支払賃金を決めているのは、先進国では日本だけだっていうのを新聞か何かで読んで、「ああ、だから生存できないんだ」と思って。
やっぱり「生存できる賃金をよこせ」っていうのが、最低限求めることなので、政治家の方にいつもお願いしてるのは、ぜひ最低賃金で1ヶ月間くらしてみて下さいっていうことなんです。まあ、なかなかやってくれた人はいないですね。

堤氏:   そうすると、例えばもうネットカフェ難民になってる若者たちなんかには、法律が出来ることって他にありますか。

雨宮氏:  今でいうと、ネットカフェ難民、働いてはいるけど家がなくって貯金ももちろん無いですよねぇ。そうなるともう法的には生活保護でしか救えないんですけど、若ければ若いほど生活保護は絶対とれないようになってるので。もちろん法的にはとれるんですけど、なかなか難しい。
で、あと日雇いで仕事をしている日払いの人達って、もし定職についても最初の月給もらえるまで、もう貯金がないので、その間に餓死してしまうんですよね、放っておくと。なのでネットカフェ難民の人をほんとうに普通のフリーターなり社会に戻そうと思うなら、家の敷金礼金と最初の月給まで暮らしていけるお金・・・

宮崎氏:  それ、貸し付けてほしいよね。

雨宮氏:  はい。30万円くらいで全然、立て直せるんですよ、人生すべてを。でもその30万がないために、ずっとネットカフェにいたり、で、ネットカフェに居ると、風邪ひいたりして働けなくなったら、もう直ぐホームレスになっちゃうんですね。で、ホームレスになったら、たぶん数年以内に餓死したり凍死したりするんですよね。

宮崎氏:  そこらへんをね、まあちょっと銀行とか無理なんで、公的金融でなんとか手当てするようなことを政策的に、「生きのびる」っていうデモやるんだから、やっぱり政策綱領っていうのを作って、ちゃんと民主党なり社民党なり或いは連合なりに要求すべきですよ。

雨宮氏:  そうですね。いま作ってます。

堤氏:   社民党なんかは来ますか、こういうデモには。

雨宮氏:  来ますね。

宮崎氏:  連合、どう? 反応よくなってきた?

雨宮氏:  いやー、どうなんでしょう。私はよく・・・そのへんは・・・

宮崎氏:  私は十数年前から「朝まで生テレビ」で非正規雇用の労働問題、労働者の団結問題をやらなきゃ連合はダメだと、ずーっと言ってきてるんですよ。

雨宮氏:  ああ、じゃあやっと非正規労働センターが出来たので・・・

宮崎氏:  出来たみたいですねぇ。遅い! でも遅いけど、やらないよりはマシです。アクティビストとしても作家としても、これからも頑張って下さい。ありがとうございました。

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以上です。(文責: マリネッリ恵)


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