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http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20071127dde012070027000c.html
北海道は「イダマシー」、茨城県は「アッタラモン」、岡山県は「モッテャーニャー」、長崎県は「モッタイナカ」−−土地土地に「無駄」をいさめる言葉がある。
標準語では「もったいない」。「勿体無い」は仏教用語の「物体」の否定で、「物の本来あるべき姿がなくなるのを惜しみ、嘆く気持ち」を表す。
ところが……立て続けに起こる「賞味期間切れ」騒動。関係者が「もったいないから」と“不正の動機”を有り体に話すと、メディアは「もったいない、という勝手な理由で賞味期限を改ざんしていました」と非難する。
言葉のマイナスイメージが広がる。もったいない=ケチ。甚だしくは「もったいない=不正の温床」という曲解まで起こる。いわれなき理由で「恐れ多い」という感謝・謙虚の心を残す日本語が傷つけられる。
しかし、「賞味期限」なんていう言葉は新参者だ。1976年、一部の加工食品に、この言葉が導入された。当時はまだ食品衛生法の「製造年月日」が主流。ところが、90年代に入って諸外国から「製造年月日の表示は自由貿易への障害である」とクレームが付いた。製造年月日の表示は輸入品に不利!と考えたのだろう。日本は外圧に負け、95年、品質保持期限と消費期限が導入され、「製造年月日」が消えた(03年雪印食品の不正で品質保持期限表記は廃止)
なぜ「製造年月日」を併用しなかったのか? 甚だ疑問である。
消費者自ら製造年月日を確かめ、自己責任で食べる習慣が崩壊した。「もったいない」かどうか、判断する知的基礎体力が失われた。
はっきり言わせてもらう。健康上の被害が予測されれば廃棄する。当然である。しかし、「賞味期限」が来たからと、すべてを廃棄すれば地球温暖化がさらに進む。
ケニア出身の環境保護活動家で、環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんは毎日新聞社の招きで来日した時、「もったいない」という言葉を知った。「もったいない」こそ環境問題の原点と考える彼女は「MOTTAINAI」を世界共通の言葉にしようと運動を始めた。
リデュース(消費削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)、リペア(修理)の概念を一語で表せるのが「もったいない」。我々は美しい日本語に誇りを持つべきではないだろうか。(専門編集委員)
毎日新聞 2007年11月27日 東京夕刊