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銭湯でデイサービス、利用者に人気
高齢者の生き生きとした暮らしを支えるデイサービスセンター(通所介護事業所)として活躍し、注目を集める銭湯が東京都品川区にある。名前は「新生湯」といい、営業が始まるまでの間、地域の高齢者に施設を提供している。銭湯業界が業績不振で低迷する中、レクリエーションや体操に適した脱衣所、また快適な入浴を提供する広い浴槽は、まるでセンターとして活用するためにあるようだ。デイサービスと銭湯の組み合わせについて「一番いい」と利用者たちも口を揃える。“本物の地域密着”を目指す新しい形の介護現場を訪ねた。(金子俊介)
「やった!入った!」―。押すとすぐにへこむスポンジ製のサッカーボールが、かごを横に寝かせて作ったゴールに入ると、お年寄りは一斉に喜びをあらわにした。左右6人ずつに分かれて膝を突き合わせて並んで座り、その間でボールを蹴って運ぶ“サッカー”は、レクであるとともに機能訓練の一環だ。
このほか、曲に合わせたラジオ体操や、片足を上げたままで10秒間保つ転倒防止予防トレーニングなども実施。そして食事を済ませたあと、広々とした風呂に入浴する。週5回、午前9時〜午後3時まで「デイサービスセンター湯〜亀(ゆ〜き)」になるここ新生湯から笑い声が絶えることはない。
新生湯は1952年創業。地域に密着した銭湯として長く人々の暮らしを支えてきた。そんな歴史ある銭湯がなぜデイサービスを行うようになったのか。
「母が倒れて病院を行き来するようになり、なかなかお風呂に入ることができない高齢者が多いことに気づいたのがきっかけ」。そう話すのは、有限会社新井湯の中の介護事業部として「湯〜亀グループ」を立ち上げた新井重雄さん。
新井さんはトレーニング機器メーカーで勤務していたが、母親が倒れたこともあり、家業に就いた。それとともに、介護保険制度が始まる少し前の99年、「これからは福祉だ」と感じ、妻とともにホームヘルパーの資格を取得する。
ヘルパーの資格を生かし、入浴が困難だという近所のお年寄りを銭湯に連れてきて3年間ほど入浴介助を実施。風呂はもちろん、広い脱衣所もあり改修の必要もなかった。「これだ!」と新井さんは思ったという。そして2003年7月。デイサービスセンターの立ち上げに至る。会社勤務時代から考え続けて来た、銭湯を最大限に生かす方法が具現化した瞬間だった。
「とにかく楽しくて楽しくて仕方がない」。週2回新生湯に通う渡部ナカさん(93)は満面の笑みを浮かべる。ここに来ると体が痛いことすら忘れてしまうという。
同じく週2回にわたって通っている岡野フクさん(90)は、銭湯とデイサービスの組み合わせについて「一番いい」と評価。他の施設に通っていたが、合わずに新生湯に移ってきた。「のんびりとした雰囲気は老年者が休む場所として最適」と笑う。
新井さんは「設備改修費はかからないし、利用者は喜んでくれる。銭湯という社会資源にとって、デイサービスは“天職”。低迷する銭湯業界のスタンダードになる」と胸を張る。デイサービスを皮切りに、これまで、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、訪問看護事業所の順で介護の輪を広げている。新井さんが直接関わるのはデイサービスのみで、これからも送迎や入浴をこなし続けるという。
「本当の地域密着とはこの地域に住んでいるということ。ずっとここで銭湯をやって来たらこそ互いに熟知し合っている。たとえお金にならなくても夜に何かあれば駆けつける。そういうものこそ、介護のあるべき姿なんだと私は思う」
更新:2007/11/05 キャリアブレイン