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2007/09/08
台風9号が6日夕から7日朝にかけて関東地方を直撃し大雨を降らせた。川岸で暮らすホームレスのテントが流されてはいまいかと気になり、風雨が止むと筆者はすぐに隅田川に出かけた。
底上げしたAさん宅(撮影:いずれも筆者)
向かったのはホームレスのメッカともいわれる隅田公園沿いの川岸だ。東京都第5建設事務所と墨田区の調べによると500〜600人のホームレスがここで暮らす。
川岸を管理する第5建設事務所によると、幸い濁流に流されたホームレスはいない(7日正午現在)。台風襲来の2日前から、建設事務所の職員が報せて歩くのだという。
テント小屋を構えるホームレスは大概“ベテラン”で、増水に対する備えを知っている。Aさんは、床の下に酒屋のプラスチックケースを敷き、50cmほど底上げした。それでも「ケースの真ん中位(25cm)まで水がきた」という。
Bさんは7日午前0時頃、川の水かさがぐんぐん増してきているのに気づいた。「こりゃ流されると思い、大急ぎでテント小屋を解体して堤防の上にあげた」と話す。筆者が訪れた7日昼頃は、小屋を建て直している最中だった。
「ここまで水が来た」と示すBさん。
Bさんの場合、質素で荷物が少ないから簡単に小屋を解体できた。ところが「物持ち」のホームレスは発電機を備えており、テレビなどの家電も持っている。こうなったら川が増水したからと言って、簡単に移動できない。多摩川で濁流に飲まれそうになり、間一髪ヘリコプターに救助されたホームレスがこのケースだ。
「梅雨はシトシト降るだけなので増水の心配はない。だけど台風は、一気に増水するからなあ。これからの季節は思いやられるよ」。“隅田川暮らし”の長いCさんは、恨めしげに川面を見ながらつぶやいた。
台風のたびに受難する川岸のホームレス。それでもテントを持たずダンボールで暮らす身から見れば羨ましい限りだ。テントだって好き勝手な所に建てられるわけではない。ホームレスの世界にも縄張りがあるからだ。台風のたびに「水」から追いたてられようとも、おいそれとは他の地に“引っ越せる”わけではない。
我が家を再建するBさん。
東京都による「3000円アパート事業」というのがある。ホームレス本人が毎月3000円を負担し、残りのアパート家賃は東京都が賄う制度だ。ただし2年間に限定されている。3年目からはすべて自分で負担しなければならない。
同じアパートに続けて住んでも敷金・礼金が必要になる。ホームレスの自立支援を続けるベテラン活動家によると、月20万円は稼がねばアパート暮らしは維持できない。
ホームレスの平均年齢は55.9歳(厚生労働省・2003年調査)。ブランクがあり、住所を持たない彼らにとって月20万円を得る定職に就くのは、至難の業だ。住宅制度がしっかりしていれば、就労政策が行き届いていれば、ホームレスは数限られてくるはずだ。
台風襲来で筆者は、日本の「住宅政策」「労働政策」に思いをめぐらしたのだった。
(田中龍作)