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『戦争愚人のたわごと』 『原爆の記』38年ぶり復刊【東京新聞】
2007年7月4日 夕刊
東京都旧田無市(現・西東京市)初代市長の故指田(さしだ)吾一氏が広島での被爆体験をつづった手記「原爆の記」を三十八年ぶりに復刊しようと、市民らが立ち上がった。久間章生前防衛相が米国の原爆投下を「しょうがない」と発言したような被爆体験の風化にあらがうように、元市長の遺志を継ぐ市民らは「今こそ、核の怖さを知ってほしい」と訴える。復刻版は広島への原爆投下から六十三年目の八月六日に発刊される。 (中沢誠)
「原爆の記」は、指田元市長が被爆体験を若い世代に伝えたいと公務の合間に書きため、還暦に合わせての出版を考えていたが、五十九歳で死去した一九六九年、知人らの手で出版された。
戦時中、軍医だった指田元市長は、家族で広島に赴任時に被爆。自身もやけどを負いながら、被爆者の治療に奔走した。手記では、原爆の惨状を「言語に絶する地獄絵そのもの」と表現し、「もし戦争を起こしてでも国を守りたい人があったなら見せてやりたい」「戦争こそ愚人のたわごと」と強烈な反戦メッセージを残した。
出版から四十年近くたち、手記の存在は忘れられかけていたが、昨年末、市内の主婦藤川利子さん(69)が偶然、図書館で見つけた。原爆の惨状を生々しくつづった描写に胸を締め付けられた藤川さんは「この本を埋もれさせてはいけない」と、遺族や出版元などに掛け合って、復刊の了承を取り付けた。藤川さんの呼び掛けに二十人ほどの市民が手弁当で集まり、パソコンで原稿を打ち直し、校正までこなして、半年がかりの作業は佳境を迎えている。
指田元市長の長男で、自身も被爆した勢郎(せいろう)さん(75)は「平和を願うおやじの思いが復刊によって多くの人に伝わればありがたいこと」と語る。
自衛隊のイラク派遣や憲法九条改正の動き。「広島、長崎の体験が忘れ去られようとしている」と懸念する藤川さんは、久間前防衛相の発言に「日本人として恥ずかしい」と語る。「時代がおかしな方向に行っているからこそ、核の怖さをこの本を通して訴えたい」と復刊の意義を強調した。
戦後、口癖のように核の怖さ、平和の大切さを説いてきた指田元市長は手記の中で指摘する。「平和を叫び、戦争反対を叫ぶ、実践する、行動することが生残者に課せられた任務」と。
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復刊本はA5判、約百七十ページ。一冊五百円で三千部発行。寄付も募っており、賛同者には一冊贈呈する。問い合わせは藤川さん=電042(461)0188=へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007070402029556.html