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【コラム】筆洗【東京新聞】
2007年6月10日
観光案内風にいえば森と湖、オーロラ、ムーミンで知られる国、フィンランドは日本から遠いようだが、ロシアを挟んで「隣国」になる。面積は日本よりやや小さく人口は約五百二十万人。専門家の間では自殺予防に成功した国として知られる▼人口十万人当たりの自殺者数を表す自殺率が一九九〇年には三〇を超えていたが、総合的な予防対策を十年以上続けることで、30%減に成功した。世界保健機関は「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」と定義づけているが、それを証明している▼日本では昨年の自殺者の数が警察庁の調べで三万二千百五十五人に上り、九年連続で三万人を超えた。その十倍から二十倍は自殺未遂者がいると推定される。自殺や自殺未遂が一件起きると、少なくとも強い絆(きずな)のあった人のうち五人は深刻な心理的影響を受けるという見方もある▼事態の深刻さからすると遅まきの対応になるが、政府が先日の閣議で自殺総合対策大綱を決定した。自殺率を二〇一六年までに20%以上減らすのが数値上の目標になる▼秋田県で自殺予防に取り組む秋田大学の本橋豊教授は『自殺が減ったまち』(岩波書店)で、自治体が特色を生かして切磋(せっさ)琢磨(たくま)すれば、自殺者数の減少ははるかに現実味を帯びると報告している。都道府県レベルの対策ならフィンランドの成功事例も適用できる▼本橋さんは「安心して悩むことができる社会を」とも訴えている。自殺者をみんなで減らしていこうとする過程は、幸福な社会とは何かを考える過程と重なる気がする。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2007061002023071.html