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続・日本の「右傾化」の本質
交流がもたらしたガイアツと、これから私たちがすべきこと岡田 浩太郎(2007-06-04 07:00)
2007年1月に掲載され、多くの方たちに閲覧していただいた記事「日本の右傾化の本質」において、私は現在しばしば話題になる、日本の「右傾化」とは、愛国主義や純粋なエスノセントリズムというよりは、むしろ、一部のアジアの国々の反日に対する反発心、すなわち鬱陶しさである、と書きました。
しかし、必ずしも書ききれていなかった点があり、また、ある種の誤解を与えた部分もあるかもしれません。ということで、新たに稿を起こし、同じテーマについて考えてみたいと思います。
アンチを「発見」してしまった私たち
現在の日本のナショナリズムの高揚は、自発的に発生したものではなく、一部のアジアの国々(具体的には中国や韓国)に、非難・攻撃されてはじめて喚起されたものです。
中国や韓国は今も昔も反日でしたが、かつてはどういうわけか、我々は、彼らの反日に反応しませんでした。その最大の理由は、当時の日本と中韓の国力には圧倒的に差があったため、彼らが我々を意識しても、我々が彼らを気にすることはなかったからです。
そのころの日本人は、中国や韓国を歯牙にもかけない存在だと考え、興味がまったくなかったので、反日も気にならなかったのです。
しかし、1990年代から中国は著しい経済発展を遂げ、今や経済大国にならんと、日本をはじめとした先進国に猛追していますし、軍事的にも脅威になる存在になりました。
そして、脅威であると同時に経済的には、重要なパートナーとしても我々の興味を引いています。日本企業、いや各国の企業が中国の労働力や市場に注目して久しいです。
韓国については、我々日本人は2002年のサッカー・ワールドカップ共催のとき、改めてこの国を「発見」しました。当時、共催相手国のことをよく知ろうという機運が両国の間に盛り上がりました。
とりわけ、日本人は、韓国のことを極端に知りませんでした。韓国といえば「キムチ」が出てくるだけで、次の語が出てこないというありさまでした。日本が、かつて朝鮮半島を植民地統治していた事実も若い人の4分の1が知らなかった、と聞いたことがあります。
ワールドカップをきっかけに、韓国の歴史や文化が取り上げられるようになり、それと同時に、反日感情を持つ国であるということが日本人に知れ渡りました。ネット上で「嫌韓」がちらほら出てくるようになるのもこのころからです。
いろいろな意味で、韓国に興味をもつ日本人は増加していきましたが、記憶に新しいところでは、韓国のテレビドラマや映画の人気が高まって2005年ごろから発生した「韓流ブーム」は、決定的に韓国の存在を我々に知らしめました。
さまざまなメディアが韓国を紹介し、この年の日本人の韓国に対する好感度はかつてなく高まりました。同時に、好感度が高まるのに合わせて、「嫌韓流」という韓国を非難する漫画もベストセラーになりました。韓国の情報が日本により多く流入するようになって、「反日国」としての攻撃的な態度に辟易とする人が増えたからでしょう。
このように、日本のいわゆる「右傾化」はある種のガイアツがもたらしたものです。上記の経緯、すなわち一部のアジアの国々が我々の興味を引くようになるにつれ、我々日本人は彼らの反日感情に気がつき、辟易とする人が出てきたわけです。
原因は「格差」でも、劣等感でもない
ところが、これとは別の考え方をする人もいます。どういうことかというと、ガイアツではなく、日本のなかで経済的な「格差」問題が広まり、それと相前後して中国や韓国の国力が高まったことで、「日本人の劣等感」が浮上し、それが日本の右傾化をもたらした、という論理展開です。こうした議論をする人をしばしば見かけます。
しかし、こうした議論は、私には、的を射ていないように思えます。
なぜなら、経済的な「格差」問題で生じた、いわゆる「下流」の人々が「生活安定」欲しさに、「右傾化」すると仮定しますと、終戦後や、90年代の平成不況の時など、日本全体が「負け組」だったころにもっと右傾化したってよかったはずです。ところが、そうはならなかった。国内に経済的な問題がある場合に、外に「敵」を作って排外的な感情をあおり、論点をすりかえる手法は他国ではしばしば見かけますが、日本はそうはならなかった。
終戦後しばらくは、過去の日本を否定する教育やマスメディアが圧倒的でした。平成不況の際も、世論は「右」に寄ってはいません。むしろ左系の主張が目立つほどでした。
また、国力が高まったから脅威を感じているならば、対象は、中国や韓国でなくても、インドやロシア、ブラジルであっていいはずです。しかし、インドやロシア、ブラジルのことを警戒しません。距離的に、遠いからですか。それなら、台湾やシンガポールを脅威に感じてもいいはずですが、やはり、そうはなりません。
右傾化をもたらしたと彼らが主張する「日本人の劣等感」についても意味不明です。上述したように、劣等感どころか、日本人はつい最近までこれらの国々に(少々反省すべきほど)興味をもっていなかったわけです。
いずれも急速に成長しているとはいえ、未だ大部分は日本を追い抜いているわけではないので、今の段階で劣等感を持つ日本人は、稀有なのではないでしょうか。ただし、中国の場合は、日本に猛追しているので、その事実を、彼らの反日的行動と併せて、脅威と感じている人は多いでしょう。これは劣等感とは違う感情になります。
3層の同心円構造を理解し、ひとつひとつ解決しよう
以上のように、直近の日本の右傾化の最たる原因のひとつは、一部のアジアの国々の反日」に我々が気づいたからです。そうではありますが、単に原因を特定して、相手が悪いと言っているだけでは、意味がありません。
彼らの「反日」に気づき、私たちが「嫌韓・嫌中」になり、それを知った彼らの「反日」がさらに強まり、それを私たちが一層嫌悪し……と、こうした敵対的な感情は負のスパイラルを描いて、上昇しがちです。
そうならないために、私たちはどうしたらいいのか。
一部アジアの国々の反日を同心円に例えると、行為・感情・事実の3層構造になっています。
一番外側は表象的なもの、すなわち、実際の「反日行為」です。続く内側の円は発展している日本へのコンプレックスや、支配されていたという屈辱感(そして羨望)などの感情です。そして、最も内側は「日本の方が実際には国力がある、先進的である」「実際にかつて侵略や植民地支配をうけた」という事実です。
日本における「極端な右傾化」した行為(それこそ、今の中国や韓国で生じているレベル)や、一部のアジアの国々の反日行為を沈静化し、理性的に行動してもらうためには、礼儀やマナー違反どころか、法さえも平気で破ってしまう排外的行為の不適当さを指摘し、改善を求めることです。
それと同時に、感情論では何も解決しないことを訴えるべきです。非難するより、お互い相手のよい点を学び、対抗心や屈辱感は、経済やスポーツなどに限定した方が、友好関係は肯定的、生産的になるでしょう。
ここまでが行為と感情の同心円への対応です。最後に最も内側の核心部分、「事実」の部分での議論に行き当たります。
ところが、相手側は「日本は我々を侵略したんだから、反日行為を見逃し、そのベースになっている感情を理解するべきだ」とくるわけです。
日本が彼らを「侵略」したことについては、私たちの側も客観的な範囲で理解し、共感を示さなくてはいけませんが、反日行為や大仰で誇張された感情論が適切でないとわからせる必要性があるのと同様に、その「侵略」の事実の客観化を求めるべきです。
たとえば、モンゴル、欧米列強などさまざまな民族が中国を侵略し、搾取や奴隷化、虐殺など、むごいことが行い、そのたびに歴代の中国人は抵抗し続けてきました。ある一国による「侵略」だけは特別視され、未来永劫、政治的に利用され続けるのでしょうか。
理と感情のバランス
「侵略の謝罪とおわび」と公式に記されている日本からの資金援助・技術援助が、中国や韓国の発展には多大に関わっています。侵略や植民地支配が「悪」であることは否定できませんが、その過程でもたらされたインフラや教育制度の肯定的な部分は、客観的事実として存在します。それまで消去しようと感情的に躍起になる必要があるのか。
結局はバランスです。感情論に走らず、客観的に彼我をながめ、元となる部分から考える。特殊化せず、バランスよく互いの適切・不適切さを判断し、認めていく。こうしたことができれば、時間はかかるでしょうが、反日とそれに対する嫌悪感情に基づいた「右傾化」も解消され、真の友好が成しえるのではないでしょうか。
オーマイニュース
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070523/11411