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役人の「天下り」だけが批判される不公平(IT-PLUS)
http://www.asyura2.com/07/social4/msg/340.html
投稿者 あっくん 日時 2007 年 4 月 20 日 20:41:07: hhGgKkD30Q.3.
 

http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITzv000006042007

 中央省庁による天下りあっせんを禁止しようという案が出ています。あっせんを禁止する一方、再就職を支援する人材バンクに一元化しようというものです。案自体はいいとして、なぜ民間企業では当たり前のようになっている天下りを役所がやってはいけないのでしょうか。

 退職年齢に近くなると大手企業の幹部と役員は当たり前のように子会社や孫会社に「天下り」します。公平のために言いますと、こうした民間の天下りは減る方向にあるものの、今でもごく普通に行われている企業慣習です。

 役人の天下りが退職金などの純粋な経済的理由によるものとすれば、大手企業の幹部の天下りは経済的理由のほか、権力の掌握も兼ねています。そのお陰で子会社や孫会社のプロパーの社員は、現場と顧客をよく知っているにも関わらず、マネジメント力を発揮して出世する機会を奪われています。

 天下りの役人が自分がいた官庁に影響力を行使し、不正を働かせることはいうまでもなく許されないことです。しかし、それならば不正を制限するような仕組みと罰則を用意することによって問題はかなり減るはずです。天下りそのものがいけないというならば、民間企業が当たり前のようにやっていいものなのでしょうか。

 不正を根絶させるためにどんなルールと罰則を導入しても安心できないから役人の天下りを禁止するというならば、それは役人への差別と偏見ではないでしょうか。

 役人も普通の人間です。我々が会社に雇われているように彼らも役所に雇われています。「税金を使っているくせに・・・」と多くの人が言いますが、普通の会社員で「顧客と株主のお金を使っているくせに・・・」と自覚している人はどれほどいるでしょうか。

 役人が「公僕であり、滅私奉公すべき」というから、おかしくなります。役人も会社員も他人に雇われ、ルールと自分の道徳心に従って仕事を通じて自己実現と社会貢献を果たすのみです。役人の天下りを批判するならば、同じ視線を自分たちにも向けないとアンフェアだと思います。

 良くも悪くも日本は人材の流動性が極めて低い社会です。役所を定年近くまで務めないで40代で民間に転職し、普通のビジネス感覚を持てば口利きに頼る天下りも要らなくなります。逆に民間企業に勤める人がその経験を活かして役所に転職すれば、間違いなく役所の効率化と活性化に繋がります。

 しかし、これはできないのです。なぜならば、転職そのものが奨励されない社会風土があるからです。

 実は、この原稿は北京の自宅で書いています。昨日、日本の味噌と米を買うために近くの日本人居住区に行き、顔見知りの日本人の奥さんと雑談したところ、中国の新興企業家層である「ニューリッチ」たちに刺激されて、35歳のご主人も起業したいということでした。

 私は「今のうちに会社を辞めて独立すれば間に合いますよ」と勧めました。でも奥さんは「生活が不安定になるから怖い」とおっしゃいました。

 私はさらにこうアドバイスして、その場を離れました。「会社を辞めることで少し影響を受けるのは確かです。ただ、食べていけないことはありません。一つの会社にずっと勤めるとご主人は今の志を無くしますよ」

 「現状を変えたくない。大きなものにしがみ付きたい」という保守志向が社会に蔓延したとき、人材の流れが止まります。以前のコラムでも述べましたが、流れない水は腐りやすいのです。

 役人の天下り自体に問題がある訳ではありません。退職後に仕方がなく民間企業にいくから天下りと言います。もっと若いうちに自ら民間企業に転職し、新しい人生を切り開くことは決して天下りとは言わないはずです。

 大手企業の幹部役員も若いうちに他社に転職したり、偉くないうちに子会社に転籍したりすれば民間の天下りもなくなります。結局役人も大手企業の幹部も定年まで流動しないから定年時に組織の力を利用して下部組織に自分を押し付けます。

 その自分の天下りを正当化・制度化するためにも普段から天下り先を作り、先輩たちをあっせんするのです。こうした計算づくの行為を「情けがある」とか「面倒見がいい」という日本的美徳にすり代えるからなかなか根絶できないのです。

 今日のコラムは決して役人の天下りを弁護するものではなく、民間を批判するものでもなく、天下り問題の社会的背景を探ったものです。定年の前から個人による活発な人材流動があれば、役所も民間も天下りがなくなるでしょう。


[2007年4月9日]

http://it.nikkei.co.jp/business/column/sou_tanto.aspx?n=MMITzv000006102006

流れない水は腐る――「良い人」が引き起こす汚職の構図

 「権力が腐敗を招く。絶対的な権力が絶対的な腐敗を招く」。この言葉を聞いた覚えのある人は多いと思います。トップの権力の絶対化は任期の長さと共に形成されていきます。福島県知事は実弟の不正容疑に絡み辞任に追い込まれました。工事を取りたい土建業者が彼の実弟に陳情するのは常識となり、これに伴う利益供与が当然のように行われたといわれています。

 福島県では30年前にも知事が汚職で逮捕されました。逮捕された時点で当時の知事は4期目でした。清新なイメージを売り物に当選した佐藤知事は18年にわたってトップを務め、今は5期目です。両者とも県民の支持を集め期待を背負っていましたが、長く続けて見事に同じところに帰着してしまいました。

 中国語には「流水不腐」という言葉があります。流れる水は腐らないという意味です。その裏返しで同じ人物が長くトップを務めると、必ずといってよいほど、水が淀み、腐っていきます。

 中国・上海では案の定、流れない水が腐ったのです。上海市の陳良宇書記が不正融資に関与した疑惑でトップの座を追われました。上海の機械工場の工員から出発した陳氏は政治的な背景もなく自分の努力で上海のトップに上り詰めました。イギリスの大学で公共関係を学んだこともある改革派でした。

 彼は情熱的で分かりやすい言葉を市民に語り人気を得ていました。皮肉なことに彼は腐敗撲滅のスピーチもよくしました。そんな彼は副書記に着任してから14年間を経て見事に自ら腐敗しました。

 不正行為については、世の中ではよく「良い人」と「悪い人」という単純な構図で説明されます。しかし、歴史的には酷い不正行為ほど、「良い人」によって引き起こされるケースが多いのです。その「良い人」はなぜ悪いことをやってしまうか。それは「長期間の権力が人を腐敗させる」という、我々人間が内面に抱える「負の原理」があるからです。

 企業の不祥事もほとんど似たアルゴリズムによって引き起こされます。あるドンが居てその人の実力がその組織を長く支配し、その周辺に利益構造が形成され、そこから利益を享受する利益集団がそのドンの支持基盤となります。

 長く経営のトップをやっている人を見ていると、残念ながらこの「負の理論」が働いているケースが多いのです。女性秘書との曖昧な関係、身内の登用、車や住宅の公私混同などの不正は日常茶飯事です。そもそもこのくらいは不正だと思わないトップも多いでしょう。

 イトマン、三菱自動車、コクド、武富士、ライブドア……。次々と繰り返される企業の不祥事と不正は、皆一つの点で共通しています。それはトップの絶対権力の存在です。長い間、良識のある人、場合によってカリスマと呼ばれた人がその会社の権力を独占していたのです。彼らは福島と上海のトップと同じく、発覚されるまでは「良い人」でした。

 同じ人間がずっと権力を握ると人材の流動もなくなります。それによってトップの好みに合わない多くの人材が活躍のチャンスを掴めないままになります。最も重要である人材が浪費されることになるのです。

 私もそうでしたが、トップになるのは偶然の場合が多いです。トップの真価はやってみないと分かりません。一度トップになるとずっと続けたくなる、あるいはいつまでもトップのつもりで同じ組織にいたくなりますが、それだけで他の人材をだめにし、組織の将来に大きなリスクを残します。「俺じゃないとダメ」という気持ちは「ここじゃないとダメ」に置き換えて考えると、もっと分かりやすいかもしれません。

 トップが長くトップの座に留まる理由は実のところ、本人の意思だけではありません。トップとの繋がりで自分の立場と利権を保持する周囲の人達も同一人物による長期権力を望むのです。また変化を受け入れたくない人もトップの変化を望まないのです。そうした面でも水を流すのを妨げる力が働き、淀んだ組織になってしまいます。流れない水が淀んで腐るように。


[2006年10月10日]

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