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今日という日は、私たちがシッカリと記憶しておかなければならない日となるであろう。いうまでもなく新テロ特措法案が参議院本会議と衆議院本会議で議題となるからである。政府提案の同法案は、参議院本会議では野党の反対で否決される。しかし、同法案は衆議院本会議で自公“合体”政権が持っている化け物のような議席で再可決され成立する。わずか1日の出来事である。自公“合体”政権は事務的に処理しようとしているようである。だが、事務的に終わらせてはならない。世界中の多くの人たちの命が懸かった法案だからである。
新テロ特措法案は、インド洋の無料ガソリンスタンド法案などと呼ばれている。一方で自公“合体”政権は、中東からインド洋を通って入ってくる石油の安定的供給にも資する法案であるという。しかし、いずれも違う。アフガン戦争を始めたアメリカ軍を支援するために作られた法律なのである。アフガン戦争は9.11同時多発テロに対してアメリカが行った報復戦争である。9.11同時多発テロは、アフガニスタンを実効支配していた国際的にも認知されていたタリバン政権が国家として行ったテロではない。アフガニスタンに根拠地をおいたアルカイダが行ったとされるテロである。このこと自体はアメリカも否定していない。
タリバン政権とアルカイダとの関係はいまもって必ずしも明らかにされていない。しかし、タリバン政権とアルカイダが同一組織でないことは明らかであろう。タリバン政権がアルカイダの摘発に積極的でなかったとしても、それを理由としてタリバン政権=アフガニスタンという国に報復戦争をすることが軍事概念としてあり得るのか、という疑問を当時から私はずっーと持っていた。そもそもアフガン戦争は国際法や戦時法規に照らして正当性があるのだろうか、という疑問である。私は弁護士だが、こうした法規は詳しく知らない。アフガン戦争が始まったとき、戦争なんてのはいとも簡単に始まるものなのだなぁー、というのが私の率直な感想であった。
アメリカ軍は短期間にタリバン政権を軍事的に崩壊させた。要するに戦争に勝ったのである。タリバン政権に変わってアフガニスタンを軍事的に支配することになったアメリカも、アルカイダを摘発することはできなかった。ウサマ・ビンラディンを逮捕することもできなかった。アルカイダに関係あるとみなされた地域や建造物が徹底的に破壊されただけである。あれだけ攻撃・破壊したのだから、ウサマ・ビンラディンは死亡したのかもしれない。しかし、それを証明する証拠もないほどの徹底的破壊であった。
アルカイダという国際的テロ組織が壊滅させることができたのかどうかは、もっと定かではない。大規模な自爆テロが起こる度に、アルカイダの関与がいわれている。テロ組織などというものは、そもそも軍隊が取締ったり破壊することができるものなのだろうか。情報機関の国際的協力などしかないのではないか。テロとの戦いといわれるが、こうしたことがはかばかしく進んだという報道にはあまり接しない。わが国がやったことといえば、わが国に入国する外国人すべてから指紋と顔写真をとることにしたくらいである。それがわが国をテロから守るために有効であるかはきわめて疑問である。ブッシュ政権と自公“合体”政権の考えることは、私にいわせれば大分いかがわしい。
現在アフガニスタンとイラクを現実に支配しているのは、アメリカ軍である。戦争に勝ったアメリカ軍が、軍事的に占領している状態なのである。これは戦争の最終形態である。戦争に勝利した軍の軍事占領を支援することは、戦争に加担することではないかのか。少なくとも戦争に深く関連することは否定できない。戦争に勝利し相手国を軍事的に占領している軍は、その国の統治を行う必要があるからである。イラク特措法に基づいてわが国が行った人道復興支援もその一環と看做されても仕方がない。これは国連が行うPKOやPKFとは明らかに異なる。
イラクやアフガニスタンでは、自爆テロが後を絶たない。これらのテロのターゲットはアメリカ軍とその庇護の下にあるその国の統治機関である。だからアフガン戦争とイラク戦争が原因であるといって差し支えない。9.11同時多発テロが行われたアメリカ国内では確かにテロは起きていないが、アフガン戦争とイラク戦争が功を奏しているからなのだろうか。私は多分違う理由だと思う。アメリカ国内におけるテロは確かに抑えられているが、その代わりアメリカ軍の多数の死傷者と多額の軍事費負担をもたらしている。
“テロとの戦い”というと誰も反対できないが、このように考えると新テロ特措法案が本当にテロを撲滅することに繋がるかははなはだ疑問である。あまり小難しいことをいうなという人もいるだろう。しかし、インド洋で給油・給水を受ける各国の軍隊は、アフガニスタンで多くの国民の命を奪ったのである。またそのために自爆テロが起こり、駐留する多くの軍人や国民の命が奪われているのである。冒頭に私が「だが、事務的に終わらせてはならない。世界中の多くの人たちの命が懸かった法案だからである」と書いたのは、以上のような理由によるものである。政党や政治家の今日の行動の仕方(正しい意味におけるパフォーマンス)を注視し、瞼に焼き付けておきたいと私は思っている。
それでは、また。
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