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福田首相の薬害肝炎“政治決断”で厚労省の闇は暴けるか(週刊 上杉隆)
2008年01月09日 上杉隆(ジャーナリスト)
薬害肝炎救済法案が今週中に成立する。
「全員一律救済によってこの肝炎問題の全面解決を図りたいとの切なる思いに応えるためには司法と行政の枠組みを超えた立法措置による解決しかない」
福田首相が、原告団代表と首相官邸で面会した際に、こう語って「政治決断」を伝えたのが12月25日のこと。直後、自民党内にプロジェクトチームを設置し、救済法案の策定作業を指示した。
それからわずか2週間での法制化は、「政治」が本気になって取り組めば、事態は必ず展開するのだということを認識させた。
だが、それならば、なぜもっと早く決断しなかったのか。ここで抱かざるを得ない疑問はその一点に尽きる。
過去の国家賠償被告すべてに「厚生省」が含まれていた
日本政府は、これまでにも繰り返しこの種の「政治決断」を遅らせることによって、問題の解決を先延ばしにしてきた。その結果、国民の中に、多くの「被害者」を作り、取り返しのつかない状況を作ってしまったのだ。
薬害エイズ訴訟、ハンセン病集団訴訟、ドミニカ移民訴訟、中国残留孤児訴訟……。
こうした国家賠償請求の歴史にはある共通点がある。それは、「被告」にはすべて「厚生省」(現・厚生労働省)が含まれているという点だ。どの問題でも、該当した厚生省の役人は自らの関与を否定し、国家公務員法の厚い壁に守られて、決して罪を認めようとしなかった。今回の薬害肝炎の問題でも同様だ。
思えば、年金記録紛失問題や靖国神社問題などでもそうだった。同じように「厚生省」の管轄であるが、その不作為と怠慢が、現在の歪んだ事態を生み出したといってもいい。
筆者は、「靖国」や「ドミニカ」の取材を通じて、何度も厚生官僚と接したことがある。彼らの「責任回避能力」と「自己防衛本能」の見事さは、ある意味で感動的ですらあった。もしかして、今回の「決断」の遅れも、またしても、厚生官僚の「抵抗」に遭った結果なのかもしれない。
追加救済にはあくまで抵抗をもくろむ厚労省
ただ、遅きに失した感はあるが、福田首相の「政治決断」の結果、薬害肝炎の被害者に、光明が差し込んだのもまた事実である。
法律が成立した直後、福田首相は「首相談話」を発表し、国の「責任」と「謝罪」を明確にする予定だ。閣議決定される「首相談話」は政治的にも決して軽くない。その点では確かに「政治決断」といえるだろう。
「責任」と「謝罪」は法律の前文にも明記される。また、法律では200億円規模の基金を創設し、「フィブリノゲン製剤」と「第9因子製剤」による薬害感染の原告207人を含む約1000人には、1200万円から4000万円の給付金が支給されることになった。
だが、投与証明が可能な彼らの他にも、血友病患者などを含めれば、全国には約1万人の薬害肝炎被害者がいる。さらに、感染経路の不明な患者数を合わせれば、日本には約350万人の肝炎感染者が存在している。
もちろん今回の法律で彼ら全員が救われるわけではない。とくに約1万人の薬害被害者は追加救済を待ち望んでいる。
だが、被害対象者数の増大による補償額の支出増を恐れて、厚生労働省はさらなる首相の「決断」を回避させようともくろんでいる。12月25日の「決断」の前にも同じような「抵抗」があった。10倍以上の賠償額となる次の救済はなおさらだ。
昨年末、そうした官僚たちの「抵抗」をひとまず打破したのは、与謝野馨や野田毅などの政治家だった。彼らが、解決を諦めかけていた福田首相に「議員立法」での救済を働きかけたのだ。おかげで、今回の救済法案が陽の目を見た。
首相の「政治決断」ではなく「議員立法」
それにしても、これが福田首相の「政治決断」とされるのはおかしな話だ。筆者も敢えて「政治決断」と括弧書きにしたのは釈然としないものが残るからだ。
あくまで今回の薬害肝炎救済法は「議員立法」による解決であり、福田首相が内閣総理大臣として「決断」したものではない。与謝野らに教えられて、自民党総裁として指示を出したに過ぎない。
よく考えてみれば、政府提案とならなかった時点で、政府(行政)はその責任を立法(国会)に丸投げしたといえる。それはある意味で責任逃れに他ならない。そのあたりを巧妙に混合させて、首相の「政治決断」を演出するのは姑息ではないか。
しかも、福田首相は、司法判断が下される前に原告団と首相官邸で会っている。さらにその首相官邸で、記者団に自らの「政治決断」を発表している。
本来は、そのどちらも、自民党本部で、自民党の「総裁」としてなされるべきだったのではないか。
おそらく福田首相はわかってそうしたのだろう。せめてそう信じたい。そうでなければ、あまりに緊張感の欠如した無責任な「政治決断」になってしまう。それでは本当の意味で被害者が救われない。
これまで裁判で闘ってきた薬害肝炎の患者たちは、自ら立証責任を負わされてきた。訴訟では自らの「病」以外に、厚い官僚機構の壁とも戦い続けてきたのだ。国は、その苦しい戦いにも「謝罪」を行なったのだろうか。
福田首相が「政治決断」を誇示するのはいいだろう。だが、本当の「政治決断」はこれからだ。薬事行政の闇を暴き、再発防止策を講じること、それこそが福田首相に求められている真の「政治決断」ではないだろうか。
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