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ニュース / 2007年12月28日
パキスタンのブット元首相が暗殺された。銃撃音のあとで、大きな爆発が起きて、自爆テロだと伝えられている。パキスタンでは、プット元首相の支持者らが激しく抗議行動を続けていて、1月8日に予定されている総選挙の実施は相当に難しくなった。ブット元首相に弔意を表明するとともに、昨日の暗殺事件が中東情勢に大きな影響を与えることの意味について考えてみたい。
朝日新聞がアフガニスタンで活動する医師、中村哲さんのコメントを紹介している。
[引用開始]
パキスタンで1984年から医療活動をしているペシャワール会現地代表の医師、中村哲さん(61)は、福岡県大牟田市の自宅でテロの一報を聞いた。「現場のラワルピンディは昨日、正月休みで帰国する際に通ったばかり。心配していたことが起きた」と話す。
中村さんによると、ラワルピンディはブット氏の熱心な支持者が多い土地で、帰国のため26日に通った際は選挙ムードのまっただ中だったという。「彼女が暗殺されれば大きな混乱が起きる。混乱で得をする者が起こした事件のように思う」
ペシャワール会はアフガニスタンでも活動している。「パキスタンではムシャラフ政権への非難の声が街に満ちている。何か起きるとしたらアフガンでなくパキスタンだ、との予感が現実になってしまった」
[引用終了]
中村さんの言う「混乱で得をする者」とは誰なのか。アメリカは、「アルカイダなどのテロリストの犯行」という見方を強めているが、すでに「軍関係者の関与」を伝えているニュースもある。来月8日の総選挙を前に、厳重な警備をくぐり抜けてブット元首相暗殺が行われたことで、軍事的手段で政権を掌握してきたフシャラフ大統領の足元である軍内部に、親米路線に反発するイスラム原理主義の影響力が浸透してきていることも推察出来る。
シャリフ元大統領は、総選挙をボイコットすることを決めた。産経ニュースによれば、
[引用開始]
野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派=PML(N)を率いるシャリフ元首相は27日夜、首都イスラマバードで記者会見し、来月8日の総選挙をボイコットすることを決めたと語った。予定通りの選挙実施は厳しい情勢となった。
シャリフ氏は暗殺を防げなかったムシャラフ大統領について「ムシャラフがすべての問題の元凶だ。彼がいる限り公正な選挙の実施は不可能だ」と激しく批判。「ブット氏との連帯感を示すため」選挙不参加を決めたと語った。
[引用終了]
「ブッシュの戦争」は、世界を「テロリスト」と「対テロ戦争同盟国」との対決の構図に単純化したことによって始まった。この過程で、パキスタンは「同盟国」となった。現実には、アフガニスタンを支配したタリバン政権は、パキスタンの神学校で育った若者たちが中心となっていて、表裏一体の関係にあった。ところが、ムシャラフ大統領が「ブッシュの戦争」の協力者となったことで、アメリカ・日本はパキスタンの核武装を承認してしまった。98年の核開発に対しての制裁措置を解除し、日本はパキスタンの最大の援助国となっている。
パキスタンは中距離弾道ミサイル『ハトフ5』を開発している。軍事的基盤で親米路線を貫いてきたムシャラフ大統領が軍への基盤が弱体化していけば、「イスラム原理主義政権の核武装」という最悪の事態さえ生じる危険がある。越年国会まで開いて無理に通そうとしている「洋上給油」の目的は、テロリストが海上から武器、麻薬などを運びこむことを監視・阻止する海上阻止活動だが、陸上での移動が容易であれば監視は実効性が乏しくなる。
(明日の朝、8時より「日本テレビ・読売テレビ」系の『ウェイク・アップ・プラス』に出て討論する予定です)
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