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【新防人考 変ぼうする自衛隊】
第五部 国防と海外活動のはざまで <5>装備巨額化増す負担
2007年12月25日
美しい曲線をみせる次期輸送機=7月、川崎重工業岐阜工場で(半田滋撮影)
巨大な格納庫の扉が開き、白い機体に赤のラインが入った次期輸送機(CX)が姿を見せた。七月四日、岐阜県各務原市の川崎重工業岐阜工場。次期哨戒機(PX)と二機種同時に初公開するロールアウト式が行われた。
PXが対潜水艦戦という目的に合わせて機体を設計し武骨な外観になったのに対し、CXは速く遠くへ飛ぶという飛行機本来の機能を追求した。柔らかな曲線は水中生物のよう。「美しさが性能を表している」。航空自衛隊幹部はうっとり機体を見つめた。
CXは国産のC1輸送機の後継機にあたる。C1は開発当時、自衛隊の海外進出を許さない国内世論を反映して燃料搭載量を制限するため、胴体を短くした。東京近郊の基地から沖縄へ行くのがやっとの短距離専用の輸送機だ。
CXはC1と比べ、航続距離は四倍の六千五百キロ、輸送量も四倍の十二トンあり、イラクに派遣されているC130輸送機の能力も上回る。来年には愛知県の小牧基地に空中給油・輸送機も配備されるから空自の海外展開能力は格段に向上する。
だが、幹部は「輸送機は輸送機。脇役でしかない」。空自の主任務は、他国の戦闘機や攻撃機の侵略に対抗する防空にある。迎え撃つ主役は戦闘機だ。輸送機の役割は、戦時にミサイルを運搬したり、武装した陸上自衛隊部隊を空輸する後方支援。C130はイラク派遣などの海外活動では主役になるが、国防という本来任務からみれば脇役なのだ。
航空自衛隊は来年度防衛費でCX四機を調達する予定だった。開発中に不具合が発生し、調達を延期。その分、F15J主力戦闘機の近代化改修に千百二十三億円の巨費を投じることにした(政府予算案では六百九億円に減額)。
空自幹部は「戦闘機の能力はレーダー、搭載ミサイル、データリンクの三点で決まる。どの項目でみても航空自衛隊は、米国、韓国、サウジアラビアなどのF15の保有六カ国中、一番弱い」と驚くべき話をする。
空自は米空軍に次ぐ二百三機のF15を持つが、調達開始が一九八〇年度と早かった分だけ旧式化し、後から配備した国々に性能面で追い越された。レーダーなどを換える近代化改修にかかる費用は一機約四十億円。しかも改修可能なタイプは半分以下の約九十機にとどまる。
「最強」の地位を転落したF15の穴埋めになる、と空自が熱いまなざしを注ぐのが、老朽化したF4EJ戦闘機の後継機だ。機種選定は始まっている。
「のどから手が出るほどほしい」(田母神俊雄航空幕僚長)のは、レーダーに映りにくいステルス性を持つ米国製のF22戦闘機。仮に日本が購入できた場合の価格は一機十七億円だったF4の価格を十五倍以上も上回る二百五十億円以上になるとみられている。
海外活動にも使うCXの調達、国防のためのF15の近代化改修と新戦闘機購入。航空自衛隊は大きな買い物ばかりが続く。防衛省全体でみると、米国から一兆円かけて購入するミサイル防衛(MD)システム、総額三兆円とされる米軍再編経費といった米国関連の支出が重くのしかかる。
空幕防衛部長の平田英俊将補(52)は「例えば今年はCX、翌年は新戦闘機とメリハリをつける以外にない」。武器の高価格化と支出先の多様化。欲しい武器が買えた時代はもはや夢物語だ。自衛隊が掲げる「精強」の看板はかすみ始めている。
(この連載は編集委員・半田滋が担当しました。「新防人考−変ぼうする自衛隊」はこれで終わります)
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