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(回答先: 飄々と始まった増税論議 森永卓郎氏(日経BP社) 投稿者 そのまんま西 日時 2007 年 12 月 22 日 20:39:12)
都市から地方へ 〜 税移転の裏にあるシナリオ 森永卓郎氏(日経BP社)
経済アナリスト 森永 卓郎氏 2007年12月21日
12月11日に自民、公明両党のそれぞれの税制調査会が、平成20年度の税制改正大綱の概要をまとめた。その内容はいろいろあるのだが、重要なのは次の2点だろう。
1.揮発油税の暫定税率を10年間継続すること
2.法人事業税の半分を地方法人特別税とし、人口や従業者数に応じて自治体に配分すること
1の揮発油税は、地方道路税と合わせて「ガソリン税」と呼ばれる税金である。原油価格の高騰によって、暫定的に税金を上乗せして徴収しているのだが、それを今後も継続しようというわけだ。
2の法人事業税は、法人所得にかかるので、もともと大都市への偏在度が高い。その半額を、名目を変えて人口、従業者数比で配分すると、地方の取り分が多くなる。それによって、経済的に疲弊している地方を、少しでもうるおしてやろうというのである。
この税制の導入により、従来とくらべて東京都は3000億円、愛知県は400億円、大阪府は200億円、税収が減少することになる。
東京都の石原慎太郎知事は、当初から「地方自治の根幹が崩れる」として、この案に猛反対してきたが、それは立場からして当然のことだろう。
しかし、11日に行われた福田総理との会談で、やけにあっさりと変更を了承した。「泣く子と地頭と政府には勝てない」と苦汁の選択であることを強調したが、受け入れた理由の一つには、都知事選挙のときにお世話になったお礼という意味合いもあるのだろう。
だが、転んでもただでは起きない石原知事のことである。今後の東京都の政策について、いろいろと政府の言質をとったようである。
政府はなぜ暫定措置としたのか
そもそも税制の決定権は国にある。だから、いくら石原知事が反対しても国がその気になれば、なんでもできるわけだ。それならと、福田総理との会談のなかで、外郭環状道路の整備、羽田空港の国際化、都の環境対策など、東京都が進める政策を国がバックアップするという言質を取り、国との協議を始めることで合意したわけだ。
バックアップするということは、国が金を出すことである。税制に関しては国家権力の前に無力であっても、新しい税制と引き換えに、3000億円分すべてとは言えないまでも、取れるものは取っておこうというのが、石原知事の戦略だったのだろう。政治的取引としては、うまく行動したといえよう。
わたしが注目したいのは、石原知事が福田総理との会談でもう一つ獲得したことにある。それは、新しい税制を暫定措置としたことだ。これは、東京都にすれば当然だろう。税収が減ってしまうような措置は、暫定的なものにして欲しいからだ。
だが問題は、政府がなぜそれをいとも簡単に受け入れたのかということだ。政府にとって、恒久措置ではなく暫定措置としたことに、どういうメリットあるいはデメリットがあるのだろうか。細かいことだと言われるかもしれないが、わたしはそこが気になったのだ。
そこで考えてほしいのは、揮発油税の税率を上乗せしていることで困っているのは、都市住民ではなく地方の人たちであるということだ。
いま、日本の自動車の普及率は、かつてないほど高くなっている。年収200万円後半の世帯でも過半の世帯が自動車を保有している。なぜかといえは、地方と郊外は車がないと生きていけない社会になったためだ。
都心部に住んでいる人にはピンとこないかもしれないが、市役所に行くにも、スーパーや病院に行くにも車がないとどうしようもないのだ。だから、現在のガソリン価格高騰で苦しんでいるのは、地方の人なのである。
それならば、揮発油税の暫定税率を撤廃したほうが、地方にとって効果が高いはずである。事実、民主党はそうした提案をしている。だが、政府・与党はそうはしなかった。地方のためといって、地方法人特別税を実施していながら、揮発油税の暫定税率は継続することとしたのである。
どうも、ここにからくりがあるように思えてならないのだ。
税源移転、目的は消費税率アップの地ならし
わたしの腑に落ちない点は二つである。
一つは、揮発油税の暫定税率を継続しておきながら、地方法人特別税という新しい制度を導入するという面倒なことをしている点。地方経済のことを思うなら、まず揮発油税の暫定税率を撤廃することが先決ではないか。
そしてもう一つは、地方法人特別税を暫定措置とした点である。
そうして考えていくと、妙な点に思い当たる。
地方法人特別税に回される金額というのは2兆6000億円になるのだが、これはぴったり消費税1%分に該当するのだ。
消費税率が現在5%なのはご承知の通りだが、そのうちの1%分が地方に配分されている。これに対して知事会などでは、地方への配分を2%にして欲しいと以前から政府に要望を続けている。というのも、地方分権によって税源移転をする際に、なるべく都道府県間で格差の少ない税金を譲与してほしいというのがその理由である。そうすれば、各自治体で財政が組みやすいというわけだ。
それが今回、地方法人特別税によって、形を変えて実現する方向になったのだ。これは、どう見ても偶然の一致とは思えない。
もし、与党の税制改正大綱のままに改正が実現され、地方法人特別税が配分されるようになればどうなるか。
自治体は当然のことながら、それを当て込んだ予算編成をするようになるだろう。しかし、地方法人特別税は暫定税制ということになったので、下手をすると1年限りということもあり得る。
しかし人間というのは、一度いい思いをすると、もとに戻るのは難しい。収入が減っても、なかなか生活レベルは落とせないものなのだ。
それと同様に、いったん確保した税源がなくなってしまうというのは、地方財政にとって非常に厳しいことになる。それが当然あるものとして、すべてが進められてしまうからだ。
そこで国はどう出るか。暫定税源の廃止をちらつかせながら、こう言うのではないだろうか。「消費税引き上げに賛成してくれたら、増税分のなかから1%分を配分しますよ」。
これならば、地方法人特別税と金額がほぼ同じであるし、なにしろ恒久的な制度である。その誘惑には耐え切れないだろう。自治体が首を横に振るのは難しいと思う。
こうして、地方は消費税増税に賛成せざるを得なくなるのだ。これが、政府の考えている裏のシナリオではないか。うがった見方と言われるかもしれないが、どうしてもそう考えざるを得ないのだ。
なぜ景気拡大で税収見通し横ばいなのか
実はもう一つ、消費税増税の地ならしとみられることを政府はしている。それは、来年の税収見通しの金額である。
12月20日に内示された来年度予算の財務省原案によれば、来年度の税収は53兆5540億円と見積もられた。今年度の当初予算における税収見通しは53兆4700億円だったので、プラス0.2%というほぼ横ばいの数字である。だが、こんなことがあるのだろうか。
政府や日銀は、「景気は着実に拡大を続けている」としているではないか。政府経済見通しによれば、来年度の名目成長率を2.1%とすることで最終調整されているとのことだ。それだけの成長率を見込んでいながら、なぜ税収の見積もりを低く抑えているのか。
当初予算での税収見通しは経済指標の一つとして重要視されているが、これが2004年度以降、数兆円ずつ回復してきたのである。あまりにも不自然ではないか。
もっとも財務省は、今年度の税収見通しを下げることで辻褄を合わせようとしているようだ。同時に編成された2007年度補正予算案によれば、今年度の税収は当初予算から9160億円減額している。減額修正は5年ぶりのことだ。確かに、今年度は当初の見積もりから欠けただろうが、財務省が示したように1兆円規模で減るものだろうか。
そうしたことすべても、政府・財務省が意図的に数字を操作していると考えれば納得がいく。そもそも、税収見積もりは、かなり恣意的なものなのだ。
もし、高い税収見通しを示したらどうなるか。既に歳出はかなり絞り込んでいるので、予算上でのプライマリーバランスはかなり向上するだろう。そして、来年度予算の収支があまりにもよくなってしまっては、消費税率アップの根拠を失ってしまう。
消費税増税のためには、財政は厳しいということを示さなくてはならない。その苦肉の策が、「税収見通し横ばい」の背景にあるのではないかというのが、わたしの見方である。
政府はなにがなんでも消費税を上げたがっている。それは確かである。わたしたちは、それを頭に入れた上で、政府や財務省の発表をうのみにせず、きちんとした傍証を得た上で判断したいものである。
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