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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20071217/20071217_002.shtml
社説
市民感覚からずれている ビラ配り判決
住居は、個人が平穏に暮らすための空間だ。正当な理由がないのに入れば3年以下の懲役、または10万円以下の罰金が科される。刑法第130条に定める住居侵入罪である。
2004年12月に共産党の「区議団だより」などを配るために東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして、僧侶の男性がこの罪に問われた事件の控訴審判決が東京高裁であり、無罪とした昨年の1審判決を破棄した上で罰金5万円を言い渡した。
このマンションは常駐の管理人を置かず、玄関はオートロック式ではなかった。だが、集合ポストは設けており、管理組合が玄関の掲示板に、ビラやチラシなどを配るためのマンション内立ち入りを禁じる張り紙をしていた。
1、2審とも、被告が立ち入ったマンションの共用部分は「住居」だと認めている。無罪と有罪を分けたのは、ビラを集合ポストではなく各戸のドアポストに入れた男性の行動が「住居侵入」に当たるか否かの判断だ。
1審は「プライバシーや防犯意識の高まりを考慮しても、廊下など共用部分への立ち入りを処罰の対象とする社会通念は確立していない」とし、立ち入り拒否の掲示も商業ビラが対象で「立ち入りに正当な理由がないとはいえない」として、住居侵入罪を認めなかった。
一方、控訴審は「マンション管理組合の理事会は、住民の平穏を守るため住民の総意に沿って部外者の立ち入りを禁止した。その意思に反して立ち入れない」とし、住居侵入罪を認めたのである。
どうしても疑問がぬぐえないのは、捜査当局が男性を現行犯逮捕し、23日間も拘置して取り調べ、是が非でも起訴しなくてはならないほどのことだったのか、ということだ。
現実的には、マンションの共用部分には多様な人々が出入りしている。広告チラシなどがドアポストに入っていることも、よくあることだ。
そのような状況の中で、政党ビラを配った行為に対してだけことさら厳しく警察権力を行使したことが、憲法が21条で保障する「表現の自由」と照らして「看過できない言論弾圧」と被告・弁護側に映るのは当然だろう。
1、2審はいずれも、この事件の起訴が公権力の乱用に当たるとは認めていない。それにしても、捜査の段階で「可罰的違法性」の有無、つまり「罰を科すべき悪質性を持った事件」かどうかを見極め、逮捕や起訴を見送ってもよかったケースなのではないか。
市民感覚として違和感が残る強制捜査のあり方や判決は、国民と司法の距離を広げることにしかならない。それは、「国民に身近な司法」を目指して進められている一連の改革にも好ましくない影響をもたらすのでないか。最高裁の判断に注目したい。
=2007/12/17付 西日本新聞朝刊=
2007年12月17日00時08分
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