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http://www.news.janjan.jp/government/0712/0712046665/1.php
2007/12/05
西山太吉国家賠償訴訟の控訴審第3回口頭弁論が12月3日東京高裁で開かれました。出廷したのは裁判官3(大坪丘裁判長、宇田川基、新堀亮一裁判官)、控訴人側2(西山太吉さん、藤森克美弁護士)、被控訴人側(国)4人。傍聴人は22でした。
説明会で発言する西山太吉さん
沖縄密約
1972年の沖縄返還で、日米両政府間の密約の存在をスクープした元毎日新聞記者の西山さんは国家機密を漏洩させたとして逮捕され、有罪判決を受けました。00年と02年、密約の存在を裏付ける米公文書が発掘されたことを踏まえ、西山さんは05年4月、国に対し謝罪や損害賠償を求め、裁判を起こしました。07年3月、東京地裁は密約には一切触れず、裁判を起こせる20年間の除斥期間が過ぎたことを理由に棄却し、原告敗訴の判決を言渡しました。
07年4月に西山さんは控訴し、これまでに2回口頭弁論が開かれました。控訴審で控訴人側は、密約の存在を認める発言をした外務省元アメリカ局長の吉野文六氏と、吉野氏に口止めをしたとされる河野洋平元外務大臣の証人尋問を申請しましたが、大坪裁判長は却下しました。今回の弁論で控訴審の審理は終え、次回に判決が出ることとなりました。
控訴人側の意見陳述
この日の口頭弁論で最終弁論が行われ、控訴人側の藤森弁護士が意見陳述をしました
藤森弁護士は、(西山さんを有罪とした)刑事裁判は1、2審、最高裁とも事実誤認があるとして、確定判決の脆弱さを主張しました。吉野元局長証言の嘘を見破れず、秘密書簡について違法性がないとしたのは誤判だったことが、その後に発掘された米公文書や(法廷で嘘をついたことを明らかにし、密約はあったと発言した)吉野氏自身の発言で明らかだとし、刑事判決の事実認定の誤りを指摘しました。
さらに、日米両政府が結んだ密約は「違法秘密」で法の保護に値するものではなく、佐藤政権の権力犯罪だとし、それは、有事の際の核の持込の密約があったことなどが関係者の証言や米国の公文書により明らかになっていることからも明確だ、と主張しました。
米国の公文書で密約の中身が次々に明らかになっているが、今後は日本でも、政権交代によって外務省から沖縄返還での両政府の交換文書が出てくる可能性や、検察や外務省の中から真実を語る者が出てくる可能性もある、とした上で、東京高裁は刑事裁判の誤判を正し、公正な判決をお願いしたい、と強く訴えました。
弁論終結
控訴人の意見陳述のあと、大坪裁判長が、「被控訴人の方は(反論は)?」と尋ねると、被控訴人代理人が「ありません」と答え、大坪裁判長が「これをもって弁論を終結します。判決は2月8日午後4時」と告げ、審理が終わりました。
裁判のあとの説明会
裁判のあと、説明会がありました。判決まで2カ月ちょっとしかないことに対し、参加者から「早いのではないか」との感想がありました。次に、藤森弁護士が今日の意見陳述について説明しました。
「刑事裁判の判決は誤った認識によるものであり、まともな事実認定をしてほしいということや、米公文書などで密約の存在を裏付ける事実が次から次へと出てきているので、ちゃんと見直してほしいということを主張した。また、公務員は退職した後も守秘義務があるのに、吉野氏に対してなんのお咎めもない。それが正しいからであり、裁判所は真実を出発点にして判断をしてほしいと主張した」
藤森弁護士は、民事裁判の1審判決が密約に触れていないのは判断の遺漏であると主張したことが陳述扱いとなっているので、1審のように除斥期間で判断するということにはならないのではないか、との認識を示しました。
民事でなく刑事裁判の再審請求は?
藤森弁護士のお話のあと、参加者から「民事裁判ではなく、最高裁に再審請求する刑事裁判として考えられないのか」という質問がありました。それに対し、西山さんは年齢的(76歳)なこともあるので「難しい」と答えた上で、裁判をすることの意義や、「この裁判は国家の組織犯罪であるだけでなく、現内閣が閣議決定をしているので、判決によっては政権がひっくり返るようなことになりかねない。そのようなパワーのある裁判官が現在の司法にいるかどうかが問われている」と語りました。
また、刑事裁判で嘘の証言をしたのが吉野氏であり、密約イコール吉野氏であることから、吉野氏が密約を認めたことは決定的で、それ以上の証拠は出てこない、との認識を示しました。「400万ドルとか1,600万ドルといった金額の問題ではなく、『核抜き本土並み』のスローガンの下、まるで沖縄が平和裏にタダで戻ってくるかのようなイメージを植えつけて国民をだまし、裏で密約を結んだのにそれが議論されずに隠し通され、今も続いているようなやり方そのものを問題にしなければならない」と述べました。
問題を矮小化し、本質を隠蔽するやり方
事実が隠蔽され続けているために、嘘をつき続けなければならなくなり、それが現在のひどい状況を招いていると西山さんは述べ、裁判を通して本質的な問題を問い質していかなければならない、と強調しました。現在も(米軍への給油量が)20万ガロンか80万ガロンかといったことが問題になっているが、昔と一つも変わっていない、と述べ、問題を矮小化することで本質的な問題を隠蔽するやり方を厳しく批判しました。
政府や外務省は、沖縄返還は法益によって守られるので密約も守られるという考えを持っているのではないか、という参加者の問いかけに対し、西山さんは「法益ではない。国益だ」としながら、国会の承認案件である条約に虚偽の記載をすることは違法であり、できるわけがない、と反論しました。沖縄返還によって日本がどう変わるのか、国民生活がどう変わるのか、そのことを国民はまったく知らされていないことが問題なのだと指摘しました。
それまでの政権は沖縄の施政権返還によって国民に嘘をつかなければならないことを理解していた、と述べ、佐藤政権が隠してやったことで、嘘をつき続けなければならなくなり、それが体質化し、現在も国民に嘘をつき続けていることは、思いやり予算や米軍再編によって示されている、と語りました。
同盟関係のあり方について
西山さんはまた、小沢民主党代表の論文について、日米同盟のあり方について本質論が初めて出てきたとして高く評価しました。日米同盟にどっぷりつかり、情報操作や嘘をついてもそのことに対する議論もディスカッションもないため、「事実がカモフラージュされている」と述べ、現在の状況は問題があるとの認識を示しました。
筆者の感想
3月27日に1審の判決があり、7月に控訴審の第1回口頭弁論が開かれ、この日を含めて3回の口頭弁論がありました。来年2月8日に判決が出ます。吉野文六氏と河野洋平氏への証人尋問が行われれば、1審判決で触れられなかった「密約」についての審理が深まると期待されたのに、裁判所が却下したことは大変残念だと思います。
西山さんが語っていたように、1審の裁判官が国の主張通り除斥期間をもってきて原告の訴えを斥けても、米国の公文書や吉野発言で密約の存在は国民衆知の事実となっています。嘘をつき続ける政府に対し、その違法性を正すべき裁判所が自らの責務を果たさなかったことに対しても、国民は厳しい視線を注いでいます。司法は失われた信頼を取り戻すためにも、控訴審で公正な判断をしてほしいと思います。
(ひらのゆきこ)
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