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昨日紹介した『朝日新聞』の世論調査の記事にもうひとつ注目すべきものがあった。ガソリンに対する暫定税率についての賛否である。暫定税率を「続けるべきだ」21%に対し、「やめるべきだ」が68%と大きく上回った。これを見逃すようでは、野党はその政治的センスを問われる。
ガソリンの暫定税率は、いわゆる道路特定財源を論じる場合の象徴的なテーマである。いわゆる道路特定財源とよばれる税は、揮発油税・石油ガス税・自動車重量税・軽油引取税・自動車取得税など各種あり、その根拠法が違うため本格的に論じるとなるとなかなか厄介である。ここでは、道路特定財源の中核ともいうべきガソリンに対する暫定税率を中心に論を進める。少し細かくなるが大切なことなので、ご辛抱願いたい。
ガソリン税とよくいうが、正式にはガソリン税という税目はない。ガソリン税とは、ガソリンに対して課せられる「揮発油税」と「地方道路税」を合わせた通称である。揮発油税の歴史は古く、揮発油税法が制定されたのは昭和12年に遡る。一方、地方道路税は、国が地方自治体に対し道路建設の財源を譲与することを目的として、昭和30年に制定された地方道路税法に基づき創設された税である。地方道路税という名称であるが、れっきとした国税である。国税として徴収された後、その全額が地方道路譲与税として地方公共団体に配分される。
揮発油税の根拠である揮発油税法に基づく本来の税率は、ガソリン1リットルあたり24.3円であった。また地方道路税の根拠である地方道路税法に基づく本来の税率は、ガソリン1リットルあたり4.4円 であった。合計すれば、1リットルあたり28.7円であった。ところが、昭和48〜52年度の道路整備五ヵ年計画の財源不足に対応するために、昭和49年度から2年間の「暫定措置」として租税特別措置法で揮発油税が1リットルあたり48.6円、地方道路税が1リットルあたり5.2円に引き上げられた。合計すると、1リットルあたり53.8円となった。これが現在のガソリンに対する暫定税率である。以来30年間あまり租税特別措置法の延長を繰り返し現在に至っている。
しかし、テロ対策特別措置法と同じで、租税特別措置法のガソリン税に関係する部分が2008年3月31日までに延長されなければ、ガソリンに対する税率は、根拠法で定められている本来の税率に自動的に戻ることになる。これを俗に本来税率もしくは本則税率という。端的にいうと、1リットルあたり25.1円もガソリンが安くなるのである。そのかわり、いわゆる道路特定財源は少なくなる。道路特定財源は平成19年度ベースで総額5兆6102億円であるが、ガソリン税はそのうちの3兆1467億円を占める。租税特別措置法でガソリン税の暫定税率の延長がなされなければ、ガソリン税の税収は1兆6552億円となる。実に1兆4915億円の減収(道路特定財源に占める割合は26%)である。
だから道路族は大騒ぎなのである。国土交通省も死活に関することと捉えている。道路建設は建設業者にとっていまでも大きな割合を占める仕事であろう。だから、この問題は国会や霞ヶ関では大騒動になるのである。しかし、ガソリンや自動車に絡む税金で国民も大変なのである。特に公共交通手段が不便な地方では自動車に絡む負担は死活問題なのである。こういう場合、何を中心において問題を解決することが大切なのかということである。いうまでもなく国民=納税者の利益である。道路特定財源とよばれている自動車に絡む税金を納税しなければならない自動車の利用者=国民は何を望んでいるかということである。
道路の整備は、自動車の利用者が望むところである。しかし、ガソリンをはじめとして自動車に関する負担ができるだけ少なくてすむことも自動車の利用者が望んでいることである。いまやただでさえいろいろなハンディがある地方において、自動車がなければ実際問題として生活し難くなっているのである。その地方の人々の願がどのようなものか、真剣に考えなければならない。道路は整備して欲しいが、ガソリンも安くして欲しいというものであろう。率直にいっていまや後者の方の比重が明らかに大きくなっている。地方の道路もかなり整備されてきたからである。道路特定財源はその役割を立派に果たしてきたのである。
こうなったら「カエサルのものは、カエサルに返せ」である。自動車の利用者が払う税金に関する問題は、自動車の利用者が望むことに従って決せられなければならない。自動車の利用者は、道路整備はもうほどほどでいいからガソリン税をはじめとする自動車に絡む税を少なくして欲しいと望んでいるのである。だからガソリン税の暫定税率はもうやめて、本来の税率に戻すべきなのである。そうしたところで、まだまだ自動車に絡む税金は相当にとっているのである。それらで必要な道路整備は十分に行うことができる筈である。
これがガソリンの暫定税率の問題である。きわめて簡単な問題なのである。これと道路特定財源の一般化の問題は、まったくの別次元の問題である。道路を整備するために徴収した税金を他の目的のために使っていいのかという問題である。これは、そもそも税金とは何か、目的税とは何かということを議論することである。そのことは、別に論じなければならないと思っている。この問題もそれほど難しい問題と私は思わない。少なくとも野党が「道路を整備するために徴収した税金を他の目的のために使ってもいい」と主張することが良いとは思わない。いまのところすべての野党が「道路特定財源の一般化に反対する」とはいっていない。むしろ賛成といっているのである。本当にそれで良いのか?
それでは、また。
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