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なぜ本物の対中外交ができないのか(天木直人のブログ)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2007 年 12 月 02 日 20:14:48: twUjz/PjYItws
 

http://www.amakiblog.com/archives/2007/12/02/#000610

2007年12月02日
なぜ本物の対中外交ができないのか

  2日の朝刊各紙はいずれも日中経済閣僚会議を大きく取り上げている。対中強硬姿勢の小泉政権や、あいまい姿勢の安倍政権とは一線を画し(2日毎日)、福田政権はアジア重視の外交であるという。
  本当だろうか。福田政権がどこまで本物の対中外交を実現する事が出来るだろうか。今回会議の内容の無さを見るにつけても極めて疑わしいと思わざるを得ない。
  6閣僚が雁首をそろえて行われた閣僚会議は、小泉元首相の対中敵視外交で冷え切った日中関係以来はじめての閣僚会議であるという。名前も「戦略的互恵関係」を目指す経済ハイレベル会議と仰々しい。しかしそこで合意された内容は極めて不十分だ。環境や省エネ分野での技術協力、知的財産権保護に関する情報共有の進化、日本の米150トンの追加輸出、これだけだ。しかも環境問題にしても知的財産権保護の問題にしても日中の立場の違いは平行線だ。米の輸出に至っては余剰米を中国に買ってもらったに過ぎない。東シナ海ガス油田開発という最も重要なエネルギー開発については来年の福田首相の訪中まで先送りである。果たして福田首相は東シナ海油田開発問題について「戦略的互恵」の解決ができるだろうか。しっかりと見届ける必要がある。
 同じ2日の日経新聞に、小さな囲み記事で、インドネシアのバリ島で3日から始まる国連気候変動枠組み条約締約国会議に米国が送る閣僚はシュワブ通商代表部代表一人になる見通しであるという事が報じられていた。その最大の理由は北京で開かれる米中戦略経済対話と重なるからだという。そのシュワブ代表も国連会議を途中から退席し米中戦略経済対話に向かうと言う。米国がいかに中国との経済会議を重視しているかである。
 米中戦略経済対話は、今回始まった日本と中国の経済閣僚会議とは、その成り立ちの経緯も、対話の内容も、決定的に違う。中国の金融開放に寄与しつつ巨万の利益をゴールドマンサックスにもたらしたポールソン前CEO(経営最高責任者)は、昨年7月に財務長官に就任し、直ちにその年の12月に多数の閣僚を引き連れて北京で米中戦略経済対話を始めた。以来米中の間では、年に二回米国と中国の交互で戦略対話を繰り返し、貿易、金融面で世界経済を動かすが如き関係が着実に進んでいる。12月12日から北京で始まる米中戦略経済対話は第三回目になる。
  米中戦略経済会議と日中経済閣僚会議の違いはあまりにも大きい。何故か。日本の閣僚のように知見もコネもない日替わり閣僚が雁首をそろえて形式的に参加する日中経済閣僚会議と違って、米中戦略経済対話を率いるポールソンは米国屈指の対中金融マフィアの親分である。そのポールソンは昨年7月に財務長官を引き受けるに際し、「財務長官を、国防長官や国務長官と同等の地位に引き上げてくれるなら、受けましょう」と注文をつけ、ブッシュ大統領は二つ返事でこれを飲んだという(板垣英憲著 ロックフラーに翻弄される日本 サンガ新書16頁)。米中間には、たとえば米空母キティホークの香港寄港を中国政府が拒否し、これに米国が反発するなど、常に政治的な緊張関係をはらんでいる。しかしそのような潜在的政治的、軍事的緊張関係にもかかわらず、米中は世界経済の運営を分かち合う利益共有者の関係になっている。そして米中双方の指導者は、この米中の経済的相互依存関係を、米中の政治的・軍事的関係に優先させ、政治的、軍事的緊張をコントロールさえしているのである。
  ひるがえって日中関係はどうか。米国以上に緊密な経済関係を有していながら、小泉対中敵視政策は経済関係までも後退させた。驚くべき稚拙な外交である。国民経済の多大な損失である。
  中国との経済関係重視は欧州も米国に負けてはいない。サルコジ仏大統領は11月26日に訪中し3兆円規模の旅客機や原子炉の売り込みに成功した。ECもすでにエアバスの売込みをはじめとして様々な分野での対中経済外交を進めてきた。
  歴史的にも地理的にも近い日本が、なぜ欧米に遅れを取る醜態を演じているのか。それは一重に日本人の中にある歴史認識についての分裂、対立の故であり、一部の日本人の心に頑迷に潜む対中蔑視の感情の故である。
  米国が良くて中国が悪いという事が誤りであるように、米国が悪くて中国が良いという事では決してない。米国も中国も国益最優先の国である。国益を実現する為に軍事力を誇示する軍事的覇権国家である。
  日本はそのいずれでもない。憲法9条を持つ日本はその技術力、経済力で国益を実現する国である。米国に従属する外交が誤りであるように、戦争責任を追及されて黙ってしまう対中譲歩外交もまた誤りである。
   国の総意として過去の侵略の事実を認め謝罪する。そうした上で自主、自立した毅然とした対中外交を進める。戦後62年も経つと言うのになぜこのような当たり前の外交が出来ないのであろうか。
本物の対中外交ができる指導者は福田首相でも、重要問題山積の国会会期中にもかかわらず50人もの国会議員を引き連れてパフォーマンス訪中を行う小沢民主党代表でもない。未だ日本の政治家に本物の対中外交が出来る人物は現れない。それが日本国民の不幸である。
 


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