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2007年11月24日
アフガン給油、中東和平国際会議、レバノンの混迷
アフガン給油に従事していた自衛隊の補給艦が日本に戻ってきた。それを防衛大臣や官房長官など政府要人がこぞって仰々しく出迎えた。テレビが一斉に放映し、国民の視覚に訴えた。24日の朝刊各紙もこれを取り上げた。おりしも国内政治はアフガン給油活動の継続をめぐって自民と民主が政権をかけて争っている。政府・自民党側からしてみれば、自衛艦を「誇らしく出迎える」ことにより、「熱波の中東で自衛隊は命を賭けて立派に国益を果たした」と、国民の感情に訴えたいのだろう。そうして給油継続への支持率を高めたいに違いない。
しかし同じ24日の朝刊各紙は、世界の注目が27日に米国で行われる中東和平国際会議に集まっている事を報じた。同時に、任期が切れた大統領の後任者が決まらないレバノンの政治的空白が中東の混乱を招きかねないと危惧している。
アフガン給油、中東和平会議、レバノンの混迷、この三つの報道を関連付けて解説する事が今日のブログの趣旨である。
アフガン給油問題は、中東問題の中の実に瑣末な問題である。米国の、いや世界の最大の関心事は、危機に瀕した中東和平をいかに復元するかである。この事を私は繰り返して書いてきた。
ブッシュ大統領の中東政策は、これまでのどの米国大統領以上にイスラエルに傾斜してしまった。そしてイスラエルのパレスチナ弾圧を放置してきた。その結果これまでに築き上げられた中東和平のかすかな希望まで粉砕してしまった。アラブの反米感情が高まり、アルカイダの9・11テロに繋がった。
本来ならば、ここで米国は中東和平の実現に本腰を入れるべきであった。しかしイスラエル・ロビーに影響されたブッシュ大統領は、テロとの最終戦争を選んだ。アルカイダをかくまったアフガニスタンを攻撃し、反イスラエルの急先鋒であるサダム・フセインを排除し、レバノンの反米・イスラエル勢力であるヒズボラを攻撃した。いずれも失敗し、中東情勢は混迷した。その中で、米国は核武装を行おうとするイランの攻撃さえも視野に入れている。
何故レバノンの大統領選挙が大問題なのか。レバノンは中東のクロスロードである。その地政学的重要性のゆえにレバノンと言う国は有史以来大国に征服され続けてきた。ギリシャ、ローマの支配から始まって長い間オスマントルコの支配下に置かれた。近代においてはフランスの植民地となり、そして戦後フランスから独立した後は、イスラエルとパレスチナの紛争の舞台となり続けた。イスラエルの北に国境を接するレバノンが、親米・イスラエルの国になるか、親イラン・シリアの国になるかは、中東和平の帰趨にとって極めて重要なのである。
米国はシリアのレバノン支配を長らく許してきた。それはシリアが反米テロを押さえつける役割を果たしてきたからである。しかし9・11を契機に米国は中東全体を民主化しなければ真の安全は得られないと考え方を改めた。中東を親米政権に染め上げ、イスラエル・米国の安全保障を一気に高めようとした。
それに危機感を感じたのがシリアだった。レバノンと言う経済的に魅力のある国を手放せばシリアはただの貧しい国となる。ましてや米国・イスラエルから攻撃されればシリアはひとたまりもない。危機感を抱いたシリアは、反米の雄であるイランと結びつき、レバノンを反米・イスラエルのテロの拠点として生き残りを図ろうとした。
そのような中で、レバノンの新しい大統領が米国・イスラエルの言いなりになる大統領となるのか、それともイラン・シリアの傀儡大統領となるかは、もはや中東紛争の帰趨に直結する大問題となった。だからいつまでたっても大統領が決まらない。暗殺が続き、国民が分断された。残念ながらレバノンの混乱は当面は悪化の一途をたどるだろう。情勢如何ではイスラエル・米国の軍事介入もありえよう。
そして中東和平である。任期が迫ったブッシュ政権にとって、もはやアフガンもイラクも安定化は望めない。せめて見せ掛けの中東和平を実現し、外交実績を残そうと思い始めたとしてもおかしくない。それが27日に行われる中東和平会議である。
しかし、パレスチナの暴力放棄しか念頭になく、パレスチナ国家の成立を決して認めようとしないイスラエルと、それを容認するブッシュ大統領が主催する和平会議が成功する見通しはまったくない。
ブッシュ大統領が中東和平実現を焦ってパレスチナに強硬姿勢をとるならば、中東和平は更に遠のく事になる。そうなれば、アフガンもイラクも混乱が放置され、レバノンが内戦になり、パレスチナではハマスが最後の抵抗を示す事になる。加えて、核開発に固執するイランを、イスラエルや米国が攻撃する事にでもなれば、まさに中東全体が燃え上がる。米国にとってもはやアフガン情勢どころではなくなる。そのアフガンに給油活動を行う日本は、完全にはしごを外されることになる。
政府・自民党は中東情勢を真剣に考えたほうが良い。日米同盟への悪影響をおそれる、ただその一点でアフガン給油に固執する事が、中東情勢や国際政治から見て如何にぴんと外れであるかを、外務官僚の浅はかな入れ智恵に踊らされるのではなく、胸に手を当ててよく考えるべき時だ。何が本当の国益か。今こそ政治家は真剣に考えるべきである。
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