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第164回国会 教育基本法に関する特別委員会 第5号
平成十八年五月三十日(火曜日)
午後一時開議
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/164/0158/16405300158005c.html
○門川参考人 皆さん、こんにちは。京都市の教育長の門川でございます。いつもお世話になっております。
私は学者でも教師でもございません。ひたすら京都において教育行政に携わってまいりました。そして、今、桝本頼兼京都市長のもとで、一人一人の子供を徹底的に大切にする、そんな信念のもとに市民ぐるみの教育改革を進めております。そうした京都での実践、具体的な取り組みを通じまして、今回の教育基本法改正案につきまして感じておりますところを率直に申し述べたい、そのように思います。
まず、かまど金の精神。学校、地域、家庭、三者の連携協力であります。
京都は悠久の歴史を誇っております。日本人の心のふるさと、日本の精神文化の拠点都市であります。日本に京都があってよかった、そんなことを皆さんに実感していただけるように、今、国家戦略としての京都創生、そんなこともお願いして、京都も努力しております。
その京都にとりまして、明治維新は最大の危機でございました。町が半分焼けておりました。都の地位を失った町衆は本当に嘆き悲しみました。しかし、先人たちは決して嘆いてばかりではおられませんでした。町づくりは人づくりからである、子供さえしっかりと育てれば京都の未来は明るい、そういうことで、明治元年から、学校づくりに番組という、応仁の乱から続く自治の精神を生かした、新たにつくられた自治組織でもって、長老、リーダーたちが集まって学校づくりを始められます。
明治二年に六十四の地域制の小学校ができました。日本で最初の小学校であります。そのときにかまど金の精神というのが伝わっております。子供のおられるところもおられないところも、かまどのある家はみんなお金を出そう、あるいはかまどの数ごとに出し合った、そんなことも伝えられております。自分の子供だけいい学校に入れよう、そんなんじゃないんですね。地域の子供は地域で育てる、そのためにお金も出し、汗もかき、知恵も出し合おう、そして学校をつくろう、そんな精神であります。
今、教育改革が進められて、この精神を最も大事にしていきたい、そのように思っております。新しい教育基本法改正案に、学校と家庭、地域の連携協力ということがきっちりと明確にされました。本当に心強く思っております。
明治五年に明治政府が学制発布しております。そして、その年に全国津々浦々に小学校ができております。これは私はお上の力だけでできたのではないと思います。京都と同じように、それぞれ全国の方々が、あの明治維新という改革期に、子供の教育にと、お金も出し、汗もかき、ともどもに地域の子供は地域で育てよう、そんな高い志と御努力があって今の日本がある、これが最も大事にしなければならない精神じゃないかな。
私どもは、その精神をより生かそうと、すべての学校で学校評議員制度を発足させ、平成十五年度にはすべての学校で外部評価を含めた学校評価システムを導入し、その結果を公開しております。さらに、地域が、保護者が学校運営に参画する学校運営協議会を設置し、コミュニティ・スクールにする学校が昨年度までに十七校、今年度中に五十校にも迫る勢いで広がっております。
学校が家庭、地域の教育力を高めていく、家庭、地域が学校の教育力を高める。双方が足りないところを批判し合うんじゃなしに、子供を真ん中に、足りないところを足し合おう、高め合おう、そんな取り組みが、率直に申しましていろいろな困難な課題もあります、しかし、着実に進んでおります。そうした取り組みを進めているときに、今回の教育基本法の改正案にそうしたことが取り入れられていること、力強く思っております。
次に、教師がその職責を自覚し、研修と修養に努め、一人一人が指導力、専門性を高めていく、これがまず大事であります。同時に、学校が組織としての教育力を高めていく、大事であります。それと同時に、今教育困難なときに、多くの喫緊の教育課題がございます。二十を超える市民参加のプロジェクトをつくって取り組んでまいりました。例えば、道徳、公共心を培うボランティア、親子でトイレ清掃なども行っております。読書、理科、情報化教育、幼児教育、障害のある子供の教育、伝統、文化、職業教育、キャリア教育、高校教育の改革、不登校問題、アントレプレナー等々、教育関係者だけじゃなしに経済界、学者、PTAの代表、公募の市民の代表等々も含めた取り組みを力強く進めてまいりました。
こうした取り組みにつきまして、その根底となる理念、それらが今回の改正案に、個人の尊厳、人格の形成、平和的な国家社会の形成者の育成など、憲法の精神にのっとった、現行の教育基本法の崇高な理念を生かしつつ、教育の目的、目標や、具体的に新たに設けられた条文にその多くが盛り込まれており、力強く感じております。
次に、九年前に、大人として子供たちのために今何をなすべきか、ともに考え、できることから行動しよう、こういうことを合い言葉に、人づくり二十一世紀委員会が、これも多くの市民団体の参画のもとに結成されました。九十六団体が参画し、活動しております。今、子供の命にかかわる緊急の課題、家庭、地域の教育力を行政とのパートナーシップのもとに高めていこう、その取り組みが進められております。今年度、子供をはぐくむための市民憲章を制定していこう、議会も含めて御理解賜り、運動が進んでおります。
次に、道徳教育の取り組みであります。これも人づくり二十一世紀委員会の心の教育部会の議論の中から生まれました。五年前であります。道徳教育について市民ぐるみで取り組んでいこう。河合隼雄先生に座長になっていただきました。幅広い市民の方々と三年間にわたる論議を踏まえました。
価値観が多様化しているということが言われます。しかし、共有できる価値観があるんではないか、市民に率直に聞いてみよう、そういうことで、やっていいこと、悪いこと、みんなで考えてみませんか、そんなポスターを京都市内隅々に張りまして、一万人アンケートをしよう。何と二万二千三百人の方がお答えいただきました。
そのアンケートをするに当たって、予備調査として四百人を超える方に、生きていく上で、あなたは何が一番大事と考えられますか、十項目まで書いてください、そんな事前調査もしました。大人は八十八項目、子供は六十六項目、タイトなアンケートであります。三十分から小一時間かかる、こんなアンケートでございましたけれども、その中に、自分の国を愛する、このことについて問いかけもありました。これについては七割の方が肯定されました。あるいは先祖のお墓参りに行く、こんな項目もありました。九割の方が肯定されました。ただし、歩きながら物を食べてはいけない、この項目について、そう思うと答えた子供は三割でした。確かに意識が多様化している、こんなこともありました。しかし、命の大切さ、環境、伝統、国を愛する、そうした項目では意識が共有されているということを実感いたしました。
今そうした市民の声をもとに、皆さんのお手元に配らせていただいておりますけれども、「しなやかな道徳教育」、河合隼雄先生の命名であります。かたくはないが決して折れない、そういう道徳教育を市民ぐるみで進めているところであります。
また、家庭の教育であります。子供には夏休みに宿題が出るけれども、親に、家庭に宿題を出そうやないかと、PTAの発想であります。それで、家庭でできることはしっかりしよう。家族の宿題。いや、家庭でしなければならないこと、PTAもおやじの会も含めて、しっかりと取り組もうと、そんな取り組みがなされました。それをさらに発展させまして、PTAやおやじの会も参画して、家庭を学びの環境に、進んで学ぶ子を家庭でつくっていこう、そんな取り組みが進んでおります。「早寝早起き朝ごはん」、これもしっかりと位置づけられております。
次に、生涯学習でございます。京都の文化力、地域力、人間力を最大限生かした生涯学習を進めていこう。そして、その成果を、子供の学びを支えるものに、子供の学びにつなげていこう、そんな取り組みをしております。
学校五日制がよい悪いの論議がありますが、土曜日、日曜日に、大人が子供たちのためにいろいろな取り組みをしよう。町全体を子供の学びと育ちの場に、大人はみんな先生に、そんな取り組みをしまして、一年半で四千の企画、十万人の親子がこうした取り組みに参画しております。
それをさらに発展させまして、「歴史都市・京都から学ぶジュニア日本文化検定」、ジュニア京都検定と言っています。京都の子供たちにしっかりと日本の文化、伝統を知識として学ばせたい。同時に、体験もさせたい。お茶、お花、伝統芸能、それらを、今京都検定が非常に好評でございますけれども、子供版の日本文化検定、そうしたものを進めていきたい。こうした取り組みが、郷土を愛し、日本を愛する子供たちの育成につながっていく、そのように確信しておるところであります。
環境教育、京都は京都議定書発祥の地であります。すべての学校で環境宣言をし、環境に取り組もう。あるいは、障害のある子供の教育では、全国に先駆けて、障害の枠を超えた地域制、総合制の養護学校を一昨年新設、再編し、今その養護学校もコミュニティ・スクールにしております。
さらに、各種の取り組みをしておりますが、割愛させていただきます。
これら道徳、家庭教育、伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する態度の育成、生涯学習の振興、障害を持つ子供たちの教育など、改正案に盛り込まれておりますこれらのことが、国権の最高機関であります国会において幅広く論議され、国民の教育に対する目標、理念を共有するものとして改正されることは、私ども京都で取り組んでいる者にとりましても大きな励みになる、心強いことだというふうに考えております。
日本は、子供たちの教育を非常に大事にしてきた国であります。しかし、戦後の日本の教育の最大の不幸は、イデオロギー対立が学校に持ち込まれたことではなかったか。京都も非常に厳しい時代を過ごしてきました。学力テスト、勤務評定、あるいは国旗・国歌の問題。しかし、良識ある先人たちの命がけとも言える懸命の取り組みで、今の京都の教育があります。先人たちに感謝の気持ちでいっぱいであります。
二十年前、京都では、国歌斉唱が全国最低でございました。徹底した論議をし、信念を持って取り組んだ結果、今すべての学校で国歌君が代が立派に斉唱され、不起立の教職員は一人もいません。そうした取り組みを通じまして、確かにイデオロギーの対立は厳しかった、しかし、保護者、市民、教師が、一人一人の子供の学び、育ちに焦点を当てて、本音で話し合い、行動したときに、必ずそうした皮相的なイデオロギーの対立は超えていける、そのように確信いたしております。
戦後六十年、今日の教育の大きな変革期であります。社会が激動しています。教育は、多くの困難な問題に直面しております。そうした中で、国民が教育の理念、目標を共有でき、そして教育関係者も含めて、共同の行動につながっていくようなことを望んでおります。
今述べましたように、京都の教育改革の取り組みは、今回提案されております改正案の内容と軌を一にするものであります。しかし、現場では、不登校の問題あるいは学力の二極化など、多くの深刻な課題に悩んでおります。課題が山積しております。その克服のために、教師が努力すること、当然であります。学校が全力投球すること、当然であります。同時に、教育環境の整備充実、教職員の定数改善、教育予算の改善、これが大事であります。
京都では、独自予算で、小学校一、二年生に三十五人学級、あるいは特区制度を活用して不登校の子供の中学校創設など努力しておりますが、国家政策として、教育に心をかけると同時に予算もかけていく、お金もかけていくということが非常に大事であります。このたびの教育基本法改正案に盛り込まれている教育振興基本計画に多くの期待をしております。
教育者がたっとばれるような世の中にしていかなければ、教育の未来はございません。そのためには、教師の定数を改善する、頑張っている教師の処遇を改善していく、そのことは非常に大事だと思います。児童生徒数の自然減以上に教師を減らすということは、私は大変なことだと思っています。教師の給料を下げるということも大変なことであります。
どうぞ、この教育の困難なときに、教育基本法改正の論議とともに、教育条件の整備充実につきましても、国においても、また地方においても頑張らなければならぬと思いますし、先生方の御理解を切にお願い申し上げまして、私の意見陳述にさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
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