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「ジュニア日本文化検定」を子どもたちに押しつける京都市教委の暴走に歯止めを(ねっとわーく京都)
http://www.asyura2.com/07/senkyo44/msg/513.html
投稿者 熊野孤道 日時 2007 年 11 月 22 日 20:44:33: Lif1sDmyA6Ww.
 

*事業の問題点と概要
http://sugakita.hp.infoseek.co.jp/newpage66.htm
に以下のファイルへのリンクがあります。


「事業の概要と問題点」(「ねっとわーく京都」 9月号)
http://sugakita.hp.infoseek.co.jp/Network%20kyoto.pdf

『ねっとわーく京都』2006年9月号 p.27〜32

特集◆現地発――旬レポ五連発A

「ジュニア日本文化検定」を
子どもたちに押しつける
京都市教委の暴走に歯止めを

●「ジュニア検定」はまるで京都版「つくる会」教科書

「心の教育」はいらない!
市民会議
北上田 毅

『ねっとわーく京都』2006年9月号

 「京セラの創業者・稲盛和夫さんは、『世のため人のために役に立つことをすることが、人間にとって一番大切なことである』という自分の考えを実現させるため、稲盛財団を設立しました」(注1)
 「堀場製作所の堀場雅夫最高顧問や京セラの稲盛和夫名誉会長などのように、思い切ってビジネスに挑戦してみようというあふれるような力と情熱を持って会社をつくろうとする人たち」
 「オムロンは、得意の技術で、電子部品から健康機器まで、特色あるたくさんの製品とサービスを提供しています」
 「すぐれた品質の女性下着製造・販売のワコール」

 これは、企業のカタログや商工会議所のパンフレットではありません。この五月末、京都市教委が、市内の小学校四〜六年生の子どもたち全員に配布した『歴史都市・京都から学ぶジュニア日本文化検定』(以下『ジュニア検定』)のテキストの内容ですから驚きます。他にも一〇社ほどの会社を実名であげて誉め称え、さらに本文中や末尾、裏表紙にも、企業広告が満載です。
 すでに学校では、このテキストを使った授業が始まっています。そして、一一月には五〜六年生全員が、授業時間中に検定試験(基礎コース)を受けさせられます。さらに、来年には、発展コース・名人コースの試験も予定されています(中学校でも「希望校」で実施)。
 これは京都市が『京都観光文化検定』(以下『京都検定』)を実施している京都商工会議所からの要請と支援を受け、そのジュニア版として始めた事業です。『京都検定』は、民間団体が希望者を募って実施しているものですが、『ジュニア検定』は、市教委が学校で子どもたちに強制的に受けさせるものですから、問題がいっぱいです。
 事業の中止を求める市民運動も始まりました。また、こんな事業のための経費支出は違法・不当だとして、桝本市長や門川教育長らに損害賠償を求める住民監査請求も提起されています。

 偏った歴史記述――京都市の小・中学校で
 現在使われている教科書とも多くの相違

 このテキストは、歴史に最も多くのページをさいていますが、その内容は、現在、京都市の小・中学校で使われている社会・歴史教科書と相違する点が多く、子どもたちの混乱が危惧されます。
 まず、各時代にわたって京都と天皇の結びつきが特に強調されています。平安時代は「天皇中心の国づくり」、鎌倉時代は「京都は天皇のいる重要な都市」、江戸時代は「天皇のおひざもと・京都」、そして明治は「明治天皇は、新しい国づくりの基本方針を定め、近代国家の基礎を築いた」などと説明していますが、教科書にはこのような記述はありません。
 テキストでは、多くの史跡が紹介されていますが、たとえば「秀吉の天下統一」(教科書では「全国統一」)の項では、大茶会や豪華な花見の宴などの記述がほとんどで、朝鮮侵略や、その「負」の史跡である「耳塚」などには触れていません。『京都検定』のテキストは、伏見の陸軍第16師団本部のような戦争史跡も取りあげていますが、このテキストには、近代の記述はほとんどなく、第二次世界大戦もでてきません。人権・平和に関する記述はいっさい避けているのです。
 また、歴史や文化を天皇・貴族・武士らの視点からだけで見ており、一揆などの民衆の動きや反乱・下克上等の説明はありません。その一方で、清水寺の「忠僕茶屋」や「舌切り茶屋」など、「忠義」の逸話をわざわざ紹介しています。
 また、このテキストは、部落問題には全く触れていません。それどころか、「天皇・皇族や将軍など身分の高い人」や「身分の低い山水河原者」といった表現は問題です。
 そして、このテキストには女性がほとんど出てきません。「着物を着ると女の子はしぐさがやさしくなり」などの記述には、「女性の自立と男女の平等をめざして」(現行中学校歴史教科書)といった視点はまるでありません。
 このように、このテキストは、あの『新しい歴史教科書』(扶桑社)との類似点が目立ちます。

 他にもテキストには多くの問題――企業との
 不可解な関係、京都は中心部だけ?

 このテキストには、特定の企業の「よいしょ」記事や広告が満載だということは先に説明しました。
 この点について公文書公開請求をしたところ、なんと、市教委が本文中にあげる企業名を事前に示し、執筆者に指示していたことが判明しました。さらに、門川教育長は、企業・団体に、テキストへの「協賛広告のお願い」の文書まで出しています。
 また、テキストの末尾には、寄付などの「支援をいただいた企業」として、七社の社名が、ひときわ大きな活字で掲載されています。
 「主たる教材」である教科書の場合、「図書の内容に、特定の営利企業、商品などの宣伝や非難になるおそれのあるところはないこと」(文部省告示「義務教育諸学校教科用図書検定基準)とされていますが、それは「副教材」の場合でも許されないことは当然です。
 なお、『京都検定』は商工会議所の主催ですが、そのテキストには、こんな企業名など出てきません。
 このテキストには、他にも多くの問題があります。
 まず、折り込まれた市内地図は、南は中書島で切れており、向島や淀は入っていません。また、東も山科の東半分はなく、左京区や右京区の北部地域も除外されています。
 市教委は、このようなテキストを市内全小学校の子どもたちに配布したのですが、除外された地域の子どもたちがどう思うのかも考えなかったのでしょうか?
 さらに、巻頭の桝本市長や門川教育長の顔写真や挨拶文も、子どもたちに配布する教材としては疑問です。『京都検定』の「巻頭の辞」は、「京都商工会議所」とだけ書かれており、会頭の名や写真などありません。

 事業の真の目的は「日本を愛する子どもたちの
 育成」――「つくる会」理事が委員長

 門川教育長は、五月三〇日の衆議院教育基本法特別委員会に教育基本法「改正」の立場の参考人として出席しました。そこで、わざわざこの『ジュニア検定』を持ち出し、「(この事業は)郷土を愛し、日本を愛する子どもたちの育成につながっていく」と明言したのです。また、市の資料には、「日本人であることの誇りを取り戻すことが検定の目的」というような記述もあります。これが事業の真の目的でしょう。
 さらに教育長は、国会で、「京都の教育改革の取り組みは、今回提案されております改正案の内容と軌を一にするものです」とも述べました。これは、最近の市教委の施策が、現行の教育基本法に抵触していることを認めた暴言です。また、与党の改正案に賛同する発言は、京都市教育長という肩書きで行われました。憲法・教育基本法の遵守義務のある公務員として問題です。
 事業の実施主体である「推進プロジェクト」の構成も、こうした事業の真の目的を反映しています。委員長には、「新しい歴史教科書をつくる会」理事(当時)の市田ひろみ氏が就任。京都でも、昨年、多くの市民らの抗議で、「つくる会」教科書を採択させなかったのですが、京都市は、その直後に、「つくる会」理事を委員長に据えて、「つくる会」の歴史教科書のような本を子どもたちに配布したのです。
 また、「日本人であることの誇りを取り戻す」というとき、市内の公立学校で学ぶ大勢の外国籍の子どもたちの存在は完全に無視されています。以前、評価された市教委の「京都市立学校外国人教育方針」の精神はいったいどうなったのでしょうか?

 財界や市長、教育行政による教育への不当介
 入は教育基本法違反

 この事業は、京都市としての事業です。しかし、市長には教育の内容についてこんな指示を出す権限はありません。教育基本法は、戦前の教育が国家によって支配され、悲惨な戦争に突き進んだ原因となったという反省から生まれました。それが、教育の一般行政からの独立、教育への「不当な支配」の禁止となったのです。
 今回の『ジュニア検定』は、財界による教育への介入であるだけでなく、教育に関する市長の職務権限を定めた地教行法第二四条に違反するもので、京都市長による教育内容への不当な介入です。
 また、市教委には、今回のようなテキストを作成する職務権限はありません。教育行政の任務は、教育基本法第一〇条で、「諸条件の整備確立」に限られており、教育行政による教育の内的事項への介入も、同条が禁ずる「不当な支配」となるのです。
 教材に関する教育委員会の職務権限は、地教行法で、教材の「取扱」や「届け出、承認」とされており、教材の作成はできません。「主たる教材」である教科書の検定制度では、国家は申請された教科書を検定するのであって、教科書の執筆・作成者ではありません。教育行政が教材を作成できるというのなら、それは、教科書の国定化を認めることにつながるからです。

 出版社との関係も自治体の業務としては
 きわめて不適切!

 さらに、このテキストの編集・出版についても多くの疑問があります。
 出版にあたって市教委は、多くの出版社に公平に声をかけるのではなく、当初からK社とだけ話をすすめてきました。入札などの手続も行われていません。
 普通、本を出版する場合、著者と出版社との間で文書による契約をかわします。しかし、今回は、出版社と市教委の間には、出版の条件等について何の文書もかわされていないのです。
 また、テキストの原稿は、ほとんどが京都市小学校社会科教育研究会の教員らが執筆したのですが、その原稿をK社の関連会社が編修・校閲しました。しかし、執筆した教員からは、知らない間に原稿が大幅に変えられてしまったという苦情も寄せられています。
 市教委は、この会社に原稿を無償で提供、さらに教育長による企業への協賛広告依頼や、三万八〇〇〇部もの大量買い取りなど、同社はこのテキスト出版によって大きな利益がみこまれます。
 これは、市教委による特定の民間会社への過剰な便宜供与ではないでしょうか?

 「スチューデントシティ・ファイナンスパーク
 事業」――堀場雅夫氏が三〇〇〇万円も寄付

 この事業だけではありません。昨年一〇月に発表された、「スチューデントシティ・ファイナンスパーク事業」の市教委と企業の関係も同様の問題が指摘されます。
 これは、多くの企業の出店が入る施設を設置、そこで小・中学生が、「生きた経済の仕組みを学習する」というものです。来年一月から、各学年、年間一〇数時間の学習が予定されています。(企業は、出店以外に、商品やスタッフも提供します)
 すでに、市長と教育プログラムを提供するアメリカの経済教育団体「ジュニア・アチーブメント」との合意文書も交わされました。この団体は、斉藤貴男さんの『機会不平等』でも取り上げられていますが、IBMなどの多国籍企業のトップが理事に名前を連ねた団体で、主に企業から学校に講師を派遣する事業を展開しています。日本では、主に経済同友会系の財界人が日本支部を立ち上げました。
 そして、この事業のために、堀場雅夫氏が三〇〇〇万円もの大金を京都市に寄付をして、メインスポンサーとなっています。市としての予算措置はわずかで、この事業は、ほとんどが企業からの寄付で実施されるのです。
 市教委は、現在、各企業への協賛依頼に走り回っています。そこで京都市は、「協賛いただいた場合、次のような直接・間接の広告広報効果がご期待いただけます。毎年一万人を超える参加児童・生徒や保護者に御社の商品・サービスをアピールできます」と説明しているのです。
 『ジュニア検定』は京都商工会議所。そして、「スチューデントシティ・ファイナンスパーク事業」は堀場雅夫氏。京都市教委は、財界からクチもお金も出してもらって、もうまるで財界の下請機関・事業部門になってしまったかのようです。
 しかし、学校は企業の利潤追求の場ではなく、教育への権利を持った子どもたちのためのものです。私たちは、こうした新自由主義にもとづいた「教育改革」の流れには、あくまでも異議申し立てを続けていきます。

 ※注1 稲盛和夫氏については、斉藤貴男さんが「稲盛和夫のバックグランドは生長の家」「稲盛という人物の話は、結局は人間をいかに支配して安く効率的に使い、生産性を向上させるかという点に収斂していく」「新興宗教の呪術師のようなもの」(『カルト資本主義』等)と強く批判しているのは有名な話です。
 また、一九九六年の京都市長選挙では、当時京都商工会議所会頭だった稲盛氏が桝本候補の選挙母体の会長に就任し、大々的な「企業ぐるみ選挙」の旗振り役を務めました(同書)。稲盛氏は、僅差で勝利した桝本市長にとっては、まさに「命の恩人」ですから、このテキストぐらいの誉め言葉は当然なのかもしれません。



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