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http://www.amakiblog.com/archives/2007/11/22/#000597
2007年11月22日
普天間基地移設問題の本質は一体何なのか
11月22日の読売新聞に政治部の山田真也という若い記者が普天間移設問題の協議再開について書いていた。その記事の最後を山田記者はつぎのような言葉で結んでいる。
「・・・政府も沖縄県も、普天間移設実現の「大目標」を失わないために、一致点を見出す努力が必要だ・・・」
私はこの結論の是非をここで問題にしているのではない。勿論私は、「日本にとって在日米軍はもはや完全に不要かつ有害となった」という立場を取るものであるから、この結論には反対である。
しかしこの記者のように、「普天間基地移設を早期に実現し日米軍事同盟をさらに進めていくべし」という、政府やその支持者の考えに賛同する国民が存在する事を知っている。同時にまたどちらが正しいか分からないままにこの問題を眺めている大多数の国民がいることも知っている。
より重要な事は、どちらの考えが正しいのか、論点を一つ一つ明確にした上で正面から国民的議論を行ない、国民が納得する答が出される事である。メディアの役割は、特定の意見を押し付けるのではなく、正確な情報を提供して国民に自主的な意見を持たせる事である。
残念ながら、この記事もそうであるが、およそこれまでの在日米軍基地問題をめぐるメディアが流す記事は、いずれも本質論を避けている。政府や外務・防衛官僚が、自らの政策実現の為に意図的な情報操作をしたり、真実を隠蔽したりする事はわかる。しかし少なくともメディアの報道は、事実を正確に伝え、国民が自主的な意見を持てるよう、啓蒙的な役割を果たさなければならない。いやしくも御用メディアでなければ。
果たして国民は普天間基地移設問題の本質をどこまで正しく理解しているのか。その報道の多さにもかかわらず、誰も本当の事を知らされていないのではないか。
どんなに普天間移転問題の解決が困難であっても、政府はいつかは強硬手段に訴えてそれを解決するであろう。なぜならそれが米国の命令であるからだ。そしてその時が近づきつつあるような気がする。だから私は、警鐘を鳴らす意味でも、22日の読売の記事がこの問題を提起した機会に、読者に問題提起をしてみたい。それが今日のブログの趣旨である。
1. まずこの記事でも書かれているように、普天間基地移設を含めた在日米軍再編に対する協力の必要性を強調する政府は、「抑止力の維持と地元負担の軽減の両立」という言葉を決まって繰返す。小泉元首相が、国民への説明も了解もないままにブッシュ大統領と約束を交わした時も、彼はこの言葉ばかり繰り返していた。そして今後もこの言葉が繰り返されるに違いない。
しかし少しでも冷静に考えれば、この言葉そのものが壮大な矛盾である事が分かる。米国が求める「テロとの戦い」に対する攻撃力の強化は、日本の住民の負担などお構いなしに進めなければならないものである。攻撃力を抑止力という言葉でごまかす事には目をつぶろう。しかし抑止力(攻撃力)の維持は、必然的に住民の負担を増やす事である。戦争に勝つためにはあらゆる事が優先されるのだ。そして米国は今後永久にテロとの戦争を続けていかなければならないと自ら公言しているのだ。
日本の住民の負担を減らそうとするなら、抑止力(攻撃力)に制約が加えられることになる。「テロとの戦争」に負ける訳にはいかない米国がそれを認めるわけがない。要するに普天間移転と住民負担の軽減は両立しないのである。日本政府はまずその事を国民にはっきりと明言して、それでも米国に協力するしかないのだ、と言わなければならない。メディアはそれを書かなければならない。
2 次に普天間基地移設に限って言えば、政府と沖縄の協議の対立点がどこにあるか、これが明確にされなければ、議論は進まないということだ。
これについては次のような雑多な、そして時として矛盾する事が繰り返し語られてきた。
すなわち沖縄側は 、日米が合意した滑走路2本のV字型滑走路は、「騒音や墜落事故の危険性軽減」のため、あるいは「海ガメ、ジュゴンなどの生態保護、環境保護」の観点から、沖合いに移動させたいと主張する。その一方で。「建設業界により多くの工事費が落ちるために」沖合いに移転させたい、それが本音であるという見方がある。また、「返還跡地を利用して沖縄県を発展させたいから最後は譲歩する腹積もりだ。取引を有利に進める為に交渉を引き延ばしているだけだ」などという指摘もされる。
他方において、政府側が沖縄との交渉に譲歩できない理由として「米国と合意してしまった以上一歩も譲るわけにはいかない」という事が言われ、その一方で「計画を1センチでも動かしてはいけないという訳ではない」と微調整なら応じるべきだという意見も報じられる。さらにまた、反対理由の中には「沖合いに滑走路をずらすと、埋め立て面積が拡大して海洋環境への影響が大きくなる」というものや、「滑走路が陸地から離れれば人が立ち入れない水域での工事が多くなり、反対派に工事を妨害される」と言った考えも報道されたりす。
一体どれが本当の理由なのか。どの理由が政府側や沖縄側で最も大きな理由なのか、どの理由が一番が双方にとって譲れない理由なのか、そこがはっきりしないといつまで経っても議論は進まない。
結論から言うと、今の沖縄の知事側が要求しているのは日米軍事同盟に反対するという原則論ではなく、あくまでも条件闘争である。そうであるならば、後は最後はカネをばら撒いて黙らせる事で決着することになる。そのカネを米国はビタ一文負担しない。すべては日本国民の税金だ。だから米国は攻撃力が損なわれない限り、あとは日本の問題だと高みの見物である。
こうして、主として環境問題の観点から反対している人たちは、環境問題で政府を譲歩させる事が出来ればそれで満足するかもしれない。
住民の被害とその補償を重視する立場から反対する人たちは、負担の軽減や補償の充実を勝ち取る事が出来れば、譲歩するかもしれない。
しかしその一方で、普天間基地移転問題に限らず、日米軍事同盟の強化とその結果余儀なくされる全国に存在する在日米軍の継続、再編は、日本の将来を危うくするという、根本的な問題から反対する人たちもいる。私もその意見を唱える一人である。おそらく沖縄の住民の中にも、仲井真知事の考えに反対の住民jだって多く存在するはずだ。要するに誰が敵で誰が味方かわからないままに普天間基地移設問題が論じられてきたのだ。
この問題はそろそろ正面から議論しなければならない時期にきている。さもなければいつまで経っても在日米軍基地にまつわる問題はなくならない。ある時は普天間基地移転問題、ある時は騒音・安全問題、そしてある時は原子力事故の危険性の問題などと言った個別問題にすりかえられて処理されてしまっては最後は政府側がその方針を押し通す事になる。
普天間移設問題は、米軍再編問題に対する協力の是非、さらには日米安保体制の今日的意義といった本質的な問題との観点で論じられるべき時に来ている。国民的議論を尽くした上で解決されなければならない時期に来ている。メディアはこの点を国民に提起しなければならない。
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